2017年08月30日

第194講「頭(ちぶる)」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 新行会(あらいちぇえ)ぬ人(ちゅ)んかいや、頭(ちぶる)下(さ)ぎてぃ、挨拶(いぇえさち)しわりやる。
A 今(なま)ぬ童(わら)ん達(ちゃあ)やいいり物(むん)とぅる遊(あし)ぶる、頭(ちぶる)触(さ)あ合(ええ)やさん。
B 昔(んかし)え、先島(さちしま)あ(((頭割(ちぶるわい)'''し、上納(じょうのう)しみらっとおたん。
C 今(なま)あ色(いる)んな考(かんげ)え様(よう)ぬまんでぃ、がん頭(ちぶら)あやいきらさん。
D 前(めえ)やじかじん聞(ち)かん童(わらん)ん達(ちゃあ)や大概(てえげえ)、頭(ちぶる)拝(をぅがま)さりいたん
E がっぱい頭(ちぶる)ぬ意(ちむ)味(ええ)やシマにゆてぃ小(くう)てんなあ変(か)わゆん。
F 頭病(ちぶるやん)や頭傷寒(ちぶるしょうかん)やるばすんあくとぅ医者(いしゃ)んかい診(み)しり。
G 戦(いくさ)ぬばすお諸(むる)、家人数(やあにんず)ん失(うしな)てぃ、頭(ちぶる)破(やん)とおたん

日本語

@ 初対面の人には、お辞儀をして挨拶をすべきである。
A 今の子供達は玩具とばかり遊び、頭触り遊びはしない。
B 昔は、先島は人数割で納税させられていた。
C 現代は多様な考え方があり、頑固者は少ない。
D 以前は聞き分けのない子供は大抵、頭を殴られた
E 「がっぱい頭」は地方によって意味が少しづつ異なる。
F 頭痛は脳膜炎である場合もあるから、医者に診せよ。
G 戦争の時は皆、家族を失い、悲しみで頭を痛めていた

【解説】
 「頭」に関する語句に限らず、地方によって意味が少しづつ異なる語句もありますが、忍耐強く、慣れるようにしたいものです。一部の地方には「頭ぬ切りゆん」がありますが、日本語と同じ意味です。

例文@「頭下ぎゆん」は「頭を下げる」、「お辞儀をする」の意味です。
例文A「頭触あ合」は「二組等に分かれて相手の頭を触る子供の遊び」で触られず多く残った組が勝ちです。
例文B「頭割」は「あたまわい」とも言い、「人数割」の意味です。
例文C「固頭」は「石頭」、「頑固者」、「男の頭」等の意味。「大(うふ)頭(ちぶら)あ」は単に「頭でっかち」。「がん頭(ちぶら)あ」には「頭でっかち」と「頑固者」の二つの意味があります。
例文D「頭拝ますん」は「頭を殴る」の意味のです。元々はやんわり表現する語句だったと思われます。
例文E「がっぱい頭」には地方によって、「ごつごつ頭」、「額が出っ張っている頭(おでこ頭)」、「後頭部が出っ張っている頭」等と意味が異なります。単に「がっぱい」または「がっぱやあ」とも言います。
例文F「頭傷寒」は「脳膜炎」。
例文G「頭破じゅん」は「悲しみのあまり頭が痛くなる」の意味です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(がん頭あ、頭割い、頭破てぃ、頭ん下ぎりわる、頭拝まさったん)。

@ にふぇえ言(ゆ)るばあや、御礼(ぐりい)んしわるやんどお。
A 大頭(うふちぶら)あやまた、いいくる面(ちら)わあんやん。
B がんまりそおたれえ、父(すう)なかい前(めえ)ごおさあ喰(くぁ)あさったん
C 今日(ちゅう)ぬ参会(さんくぇえ)ぬくぁっちい代(でえ)や、ぬちゃあしいさびら。
D 母(あんまあ)や物思(むぬうみ)いし、けえ寝(に)んとおん。
答え:
@ 頭ん下ぎりわる。
A がん頭あ。
B 頭拝まさったん。
C 頭割い。
D 頭破てぃ。

日本語意訳
@お礼を言う場合はお辞儀もするべきだよ。
A頭でっかちは又、多くはまた顔も大きい。
B悪戯していたら、父に頭を殴られた。
C今日の宴会の食事代は割り勘しましょう。
D母は悲嘆に暮れて、寝込んでしまっている。

2017年08月19日

第193講「頭(ちぶる)」に関する慣用句・言い回しT

うちなぐち

@ 生頭(なまちぶる)病(や)んすくとぅ、頭貫(ぬ)ち取(とぅ)らさに。
A 正月(しょうぐぁち)市(まち)え、頭割(ちぶるわ)あ合(ええ)そおくとぅ、人(ちゅ)おとぅめえららん。
B 敵(かたち)とぅ頭がっぱいし、ちゃっさ、どぅまんぎたくとぅ。
C 文学頭(ぶんがくちぶる)や、頭懲(く)るする事(くとぅ)ぬまんどおいぎさん。
D 社長(しゃちょう)や、今度(くんどぅ)ぬふぎぬ事(くとぅ)なかい、頭(ちぶる)覆(う)すとおる風儀(ふうじ)やん。
E 車(くるま)突(ち)ち当(あ)てぃてぃ、頭(ちぶる)割(わ)いねえ、直(し)ぐ病院(びょうい)ぬんかい行(い)き。
F 今日(ちゅう)や、頭(ちぶる)重(んぶ)うそおくとう、仕口(しくち)え憩(ゆく)とおか。
G あぬ固頭(くふぁちぶら)あんかいや、ちゃっさ、言(い)ちん分(わ)からん筈(はじ)。

日本語

@ 軽い頭痛がするので、こめかみを指圧してくれないか。
A 正月市場は、ごったがえしているので、人は捜せない。
B ライバルと鉢合わせして、どれほど、狼狽したことか。
C 文章書きが好きな人は、頭を酷使する事が多いみたい。
D 社長は今度の欠損の事で、悩みこんでいる様子だ。
E 車をぶつけて頭を打ったら、直ぐに病院に行け。
F 今日は頭が重く気分が優れないので仕事は休んでおく。
G あの頑固者には、いくら言っても分らないだろう。

【解説】
 「頭(ちぶる)」は日本語の「頭(つぶり、つむり)」に対応する語です。「頭ぐう」は「頭」の卑語。「あたま」と発音する場合、多くは「最初、初め」という意味です。「白髪頭(しらぎちぶる)」、「禿頭(はぎちぶる)」、「瓢箪頭(ひょうたんちぶる)(中央が窪んだ頭)の形」、「精霊頭(しょうろうちぶる)(盆の供え物の一つ)」、「鋳物頭(いむんちぶる)(禿頭)」、はあ頭(玩具の御面で卑称は「はあ頭(ちぶら)あ」)、「大頭雨(うふちぶるあみ)」等は略します。また、「ちぶる」は「瓢箪」、「蜂の一種」にも言います。

例文@「生頭病ん」は「軽い偏頭痛」。動詞は「生頭病むん」。類語に「頭病ん」(頭痛)、「片頭病ん」(偏頭痛)等。
例文A「頭割あ合」は「人々の頭が芋を洗うように蠢いている様」で「ごったがえしていること」の意味です。
例文B「頭がっぱい」は「頭をぶつける事」、転じて「鉢合わせする事」。
例文C「文学頭」は「文章を書く事が好きな人」、「文学好き」の意味。「頭懲るすん」は「頭を悩ませる」、「頭を酷使する」の意味です。
例文D「頭割ゆん」は「頭をぶつけたり、打ったりする」の意味。
例文E「頭割ゆん」は「頭をぶつける」の意味です。
例文F「頭重う」は「頭が重くて気分が優れない事」。
例文G「固頭あ」は「固頭(くふぁちぶる)」の卑称で、「頑固(者)」、「偏屈(者)」また「男」の別称でもあります。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(頭重うなてぃ、頭貫ち、固頭あ、頭覆すゆん、頭がっぱいしん、頭割あ合)。

@ がふぁさあんかい、はっちゃかてぃん、知(し)らん振(ふ)うなあさんけえ。
A 今日(ちゅう)や、あまくま痛(や)でぃ、あんまさぬならん。
B 片頭病(かたちぶるや)んすくとぅ、いふぇえ、頭(ちぶる)、みみじ取(とぅ)らし。
C 那覇祭(なふぁまちい)ぬ庭(なあ)や、くん転(くる)ばあせ合(ええ)どぅそおくとぅ、うたゆん。
D 何(ぬう)ぬ事(くとぅ)なかい、うんじゅお、あんし、思(うみ)い病(や)みいそおが
答え:
@ 固頭あ、頭がっぱいしいん。
A 頭重うなてぃ。
B 頭貫ち。
C 頭割あ合。
D 頭覆すとおが。

日本語意訳
@頑固者と鉢合わせしても知らん振りするな。
A今日はあちこち痛くて、気分が悪い。
B偏頭痛がするので少し頭を揉んでくれ。
C那覇祭会場は人で混み合っているので疲れる。
D何の事で、そんなに思い悩んでいるのか。

2017年08月04日

第192講「負き・負きゆん」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 冬(ふゆ)ないねえ、ちゅふぃちゃん、寒(ふぃい)さ負(ま)きする事(くとぅ)んあん。
A 魚(いゆ)ん冷(ふぃ)ずい負(ま)きしいねえ、陸(あぎ)んかい打(う)ち上(あ)ぎらりいん。
B 冬(ふゆ)お被布(ううどぅ)負(ま)きさんねえし、リップ、塗(な)しゆし(せ)えまし。
C さあ高(だか)さるっ人(ちゅ)お、さあ負(ま)きする事(くとぅ)んあん。
D かさぎん人(ちゅ)んかい、障(さあ)負(ま)きするっ人(ちゅ)ん居(をぅ)ん。
E どぅく、肥(くぇえ)入(い)りい強(づう)されえ、作(つく)い物(むん)ぬ肥負(くぇえま)きすんどお。
F 早(ふぇえ)くお岩負(しいま)きしいねえ、ユタ買(こ)ういが行(い)じゃん。
G 今度(くんどぅ)ぬ綱引(ちなふぃち)え、負(ま)きら如(ぐとぅ)、うみはまりわどぅやる。

日本語

@ 冬になったら、突如、寒さで体調を崩す事がある。
A 魚も凍えたら、陸に打ちあげられる。
B 冬は寝具で唇が爛れないようにリップを塗のが良い。
C 霊能力者は自身の霊力に負け、心身が弱る事がある。
D 妊娠した人に悪阻で弱る人もいる。
E あんまり肥料を入れ過ぎたら、作物が枯れるぞ。
F 以前は岩の精で心身異常を来たしたらユタに行った。
G 彼らに、負けないように、頑張らなければならない。

【解説】
例文@「寒さ負き」は「寒さで体調不良に陥る事」を意味します。
例文A「冷ずい負き」は「寒さで作物が枯れたり、魚が凍えて仮死したりする事」等を意味しますが、「寒さ負き」の意味と重なる部分もあります。
例文B「布団負き」は「被った布団の影響で唇が荒れる事」。
例文C「さあ負き」は「霊力のある者が自身の霊力に負けて心身が弱る(とされる)事」です。「さあ」は「霊力がある事」の意味で、「精、性、聖」等の字を当てる事があります。例文Fの「岩負き」との意味の違いに注意が必要です。
例文D「障負き」は「悪阻で弱る事」。発音は例文Cの「さあい負き」の同じです。悪阻は「障(さあ)い」。
例文E「肥負き」は「(過剰な)肥料で作物が枯れる事」等の意味です。
例文F「岩負き」は「自然の石、岩等の精に負けて心身に異常を来たす(とされる)事」。
例文G「負きら如」は「負けないように」、「負けじ」の意味です。「負きら」単独では「負けよう」の意味になりますが、「負きらん如」の「ん」が脱落した語句です。

【応用問題】
 前講含む例文・解説文を参考に箇条文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(弟負き、肥負きさんねえし、負きら如、障負き、尻垂帯風儀やん)。

@ 畑(はる)さあや、作(つく)い物(むん)ぬ肥(くぇえ)なかい負(ま)きらんねえし、考(かんげ)えりわるやる。
A 温世(ぬくゆう)なてぃからあ冷(ふぃ)ずい枯(が)りする作(つく)い物(む)のお、いいくる無(ね)えらん。
B 女(ゐなぐ)ぬ親(をぅや)ぬ障(さあ)いぬ為(たみ)なかい、乳飲(ちいぬ)みん子(ぐぁ)あ弟見(うっとぅみい)痩(よ)おがりそおん。
C 草刈(くさか)い勝負(しゅうぶ)やれえ、誰(たあ)にん、負(ま)きらんねえし、気張(ちば)り。
D 姉(あばあ)や障(さあ)いなかい、負(ま)きやあに、いいくる、物吐(むぬは)か吐(は)かあそる風儀(ふうじ)。
答え:
@ 肥負きさんねえし。
A 冷ずい負き。
B 弟負き。
C 負きら如。
D 障負きし。

日本語意訳
@農家は作物が肥枯れしないように、配慮すべきである。
A温暖化してからは、作物の冷え枯れはなくなった。
B母親の悪阻ゆえに、乳飲み子が弱っている。
C草刈り勝負なら、誰にも負けないように頑張れ。
D姉は悪阻の所為で、よく、嘔吐しそうであるようだ。



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