日本語
@もうすぐ、冬になると父は言った。父はおっしゃった。
A孫はありがとうと叫んだ。
Bおじいさんは、デイゴの花は美しいと褒めた。
褒められた。
Cこれが僕の新車だと自慢した。
D病気が治ったと、母は笑った。
母は笑いました。
うちなあぐち
@なあやがてぃ、冬んかいなゆんでぃ、父(すう)や、言(い)ちゃん。父やみそおちゃん。
A孫(んまが)あ、にふぇえでえびるんでぃ、叫(あ)びたん。
B御主前(うすめえ、うしゅめえ)やディグぬ花(はな)あ、ちゅらさんでぃ、褒(ふ)みたん。
褒みみそうちゃん。目上
Cくりがる我(わあ)新車(みいぐるま)やんでぃ、自慢(じまん)さん。
D病(やんめえ)ぬ治(のお)たんでぃ、あんまあや、笑(わら)たん。
笑いみそうちゃん。目上
【解説】
日本語の引用を表わす助詞「と」には沖縄語では「んでぃ」が対応します。但し、前語の語尾が「ん」である場合は、例文@BCDのように、「んでぃ」「ん」と連続するので略されます。「ん」が略された「でぃ」を用いても「んでぃ」の意味で用いられます。組踊りでは「むで」または「んで」と表記されます。発音は現代と同じく「ンディ」です。例:「大川の按司の国々の按司部討たんで、あらざらん事は―」(大川敵討)。「取付けて降参しめらむで、おの思ん子養てあん」。
註 組踊は日本語音(ほぼ開音=完全に日本語音と一致するわけではない)で表記されていますが、演じられる場合は、琉球語音で発音されている事は組踊を鑑賞して分かる通りです。本書の書き言葉については「はじめに」をご参照ください。なお、「んでぃ」とほぼ同じ意味を表わす「んでぃち」は第22講で扱います。
例文@「おっしゃる」は「みせえん」ですが、「言みせえん」でも良いです。「みせえん」は「食べる」「言う」等の目上語です。
例文A 「あ叫びゆん」は「叫ぶ」の意味ですが、「言う」の意味にも使われます。
例文C 「じまん自慢」の他に「どぅううやめえ(自敬めえ)」という語がありますが、この文の場合は「自慢」(沖縄語化している)が適切かと思われます。自慢癖のある人の事を「じまなあ(自慢なあ)」と言います。
例文D 「病気」は「やんめえ」ですが、「びょうち病気」も沖縄語化(但し、上品な言葉)しています。
【応用問題】
次の日本語を沖縄語文に直しなさい。
@太郎は三味線を習っていると、話しています。
A太陽は今、落ちようと、しています。
Bビールを買って来いと、叔父が言い付けた。
C君は誰だと、僕は叫んだ。
Dすると、君は僕の従弟だと、答えた。
答え:
@太郎(たるう)や、三(さ)味(ん)線(しん)、習(なら)とおんでぃ、話(はなし)そおん。
A太陽(でぃだ)あ、今(なま)、落(う)てぃらんでぃ、そおん。
Bビール買(こ)うてぃ来(く)わんでぃ、叔父(をぅざ)さあぬ言(い)い付(ち)きたん。
C汝(いゃあ)や、誰(たあ)やがんでぃ、我(わん)ねえ叫(あ)びたん。
Dあんされえ、汝(いゃあ)や、我従弟(わあいちく)やんでぃ、応(いれえ)えたん。
次の日本語を沖縄語文に直しなさい。
@太郎は三味線を習っていると、話しています。
A太陽は今、落ちようと、しています。
Bビールを買って来いと、叔父が言い付けた。
C君は誰だと、僕は叫んだ。
Dすると、君は僕の従弟だと、答えた。
答え:
@太郎(たるう)や、三(さ)味(ん)線(しん)、習(なら)とおんでぃ、話(はなし)そおん。
A太陽(でぃだ)あ、今(なま)、落(う)てぃらんでぃ、そおん。
Bビール買(こ)うてぃ来(く)わんでぃ、叔父(をぅざ)さあぬ言(い)い付(ち)きたん。
C汝(いゃあ)や、誰(たあ)やがんでぃ、我(わん)ねえ叫(あ)びたん。
Dあんされえ、汝(いゃあ)や、我従弟(わあいちく)やんでぃ、応(いれえ)えたん。