日本語
①沖縄は台風が多くて、大変です。
②図書館は本だらけです。
③古城の中は木が生い茂って大変です。
④野菜が多いのなら、分けておくれ。
⑤草が多くても、刈ろうとしない。
⑥草が多いということだから、刈るのである。

うちなあぐち

①沖縄（うちなあ）や、台風（ううかじ）ぬまんでぃ、でえじやいびいん。
②図書館（とぅしゅくぁん）や書物（しゅむち）ぬまんでぃ、ぐぁさぐぁさやいびいん。
③城（ぐしく）ぬ中（なあか）あ、木（きい）ぬ生（み）いまんでぃ、ふしがりやびらん。
④野菜（やせえ）ぬまんどおてぃから、分（わ）きてぃ呉（くぃ）みそおり。
⑤草（くさ）ぬまんどおてぃん、刈（か）らんでぃんさん。
⑥草ぬ生いまんどおてぃから、刈いるする。

【解説】
　「たくさんある、多い」という意味を表わす「まんどおん」という動詞は、進行形（持続態、第６７、６８、７０講等参考）と接続態のみがあります。『沖縄語辞典』には「持続態のみを用いる」とあります。さらに同書には接続態として、「＝ti」としていますが、実際には例文①～③のような接続態もあります。例文④～⑥は前掲書のいう「接続態」を用いる例です。二つの接続態があるともいえますが、後者の場合は接続助詞であるとの解釈も成立します。
動詞ながら、日本語には、「多く有る」と動詞的に訳すより単に「多い」と形容詞的に訳される事が多いです。否定形はありませんので、「いきらさん（すくない）」という別の形容詞で表現したり、「まんでえねえん、まんでえねえらん（多くない）」と表現したりします。「多くあん」という別語でも代用は可能ですが、普通は、この「まんどおん」を使います。

例文②「まんでぃ、ぐぁさぐぁさ」の「そこら辺一帯に多くあるさま」の事を表わす言い回し（慣用句）です。「ぐぁさぐぁさ」の次に来るべき「あん（ある）」や「やん（である）」等が略された副詞です。
例文③「生いまんでぃ」の他例:「とぅ採いまんでぃ（多く採って）」、「ふ降いまんでぃ（多く降って）」等。
例文④「刈らんでぃんさん」という言い回しの他例:「取らんでぃんさん（取ろうともしない）」、「飲まんでぃんさん（飲もうともしない）」、「立ったんでぃんさん」（立とうともしない）等。
例文⑤「まんどおてぃから、刈いるする」の日本語への訳は実は微妙です。「草が多いのであれば、刈る方が良い」、「草が多いという事であれば、刈らねばなるまい」とも意訳できます。「刈いる」の「る」は強調助詞「どぅ」の清音で「刈いるどぅする」でも良いです。これを受ける用言は連体形で結びます。

●マンドオン動詞例:「まんどおん」のみです。
【応用問題】
　次の沖縄語文を日本文に直しなさい。
①沖縄（うちなあ）んかいや今（なま）ん不発弾（ふはちだん）ぬまんでぃ、大事（でえじ）やいびいん。
②雨（あみ）ぬ降（ふ）いまんでぃ、にりとおいびいん。
③白髪（しらぎ）ぬまんでぃ、年寄（とぅす）いぬ如（ぐと）おん。
④うちゃく客（うちゃく）ぬ来（ち）いまんでぃ、いそうさいびいん。
答え：
①沖縄にはいまだに、不発弾が多くて大変です。
②雨が多くて、嫌になっています。
③白髪が多くて、年寄りのようだ。
④お客さんが大勢来て、嬉しいです。