日本語
@ 叔父は強面そうで、怖ろしいそうだった。A だけどまた、彼の子供はとても可愛らしい。
B 歌もうまく、叔父の子らしくもない。
C 母親は笑い上戸で、冗談好きのようだ。
D あの家族の話は面白そうだけど、そうなのか。
E 本当のようですよ。
うちなあぐち
@ 叔父(をぅざ)さあやはちこうらあさぬ、あくとうらあさたん。A やしがまた、彼(あり)が子(くぁ)あでえじな、うじらあさん。
B 歌(うた)いうじらあさぬ、叔父(をぅざ)さあぬ子(くぁ)ぎさん無(ね)えん。
C 女(ゐなぐ)ぬ親(をぅや)あ笑(われ)えうじらあさぬてえふぁあやいぎさん。
D あっ達(たあ)家人数(やあにんず)ぬ話(はなしい)やゐいりきしぎさしが、当(あ)たとおみ。
E 実(じゅん)にやいぎさんどお。
【解説】
「ぎさん」と「らあさん(首里語では『らあしゃん』)」は形容詞を作る接尾語です。
◆ぎさん:動詞や形容詞等の用言に付くと、「―らしい」、「―そうだ」等と推量を表わします。名詞に付くと「その名詞の表わす意味にふさわしいもの」の意味にもなります。意味はともかく、品詞は形容詞の仲間です。
名詞、代名詞および一部の副詞(名詞にもなりえる副詞)に付く例:「童+やい(存在動詞連用形)+ぎさん」(子供のようだ)」。「あん+やい+ぎさん」(そうであるようだ、そうらしい)。原則的には存在動詞を介して付きますが、存在動詞を略して直接接付く事もあります。
名詞に直接付く例:「ゆくし+ぎさん」(うそっぽい)、「かじい+ぎさん」(粘り強そう、負けず嫌いそう)等。
名詞に存在動詞を介して付く例:「ゆくし+やい+ぎさん」、「かじい+やい+ぎさん」等。
副詞に付く例:「ようんなあ+やい+ぎさん」(ゆっくりのようだ)、「ふぃっちい+やい+ぎさん」(一日中のようだ)等。
動詞に付く例:「ち来い(動詞連用形+ぎさん)(来そう)、「な鳴いぎさん」(鳴るようだ)等。
形容詞に付く例:「はごう+ぎさん」(汚なそう)、「やあさ+ぎさん」(ひもじそう)等。
◆らあさん(らあしゃん):名詞や代名詞のみに付き、「―らしい」という意味の形容詞を作ります。
例:「沖縄らあさん」(沖縄らしい)、「嫡子らあさるしいよう」(長男らしいやり方)等。
なお、「名詞+ぎさん」は「名詞+らあさん」でも殆ど同じ意味になります。例:「ちゅ人らあさん」=「ちゅ人ぎさん」。
【応用問題】
次の文を「ぎさん」又は「らあさん」を用いた文に直しなさい。
@ 泣(な)か泣かあそおる童(わらび)ぬ居(をぅ)ん。
A 先生(しんしい)ぬ如(ぐとぅ)、歌(うた)てぃ、聴(ち)ちしゅうらさたん。
B あぬ人(ちゅ)ん達(ちゃあ)や諸(むる)、ゑえきんっ人(ちゅ)やいぎさたん。
C 聞(ち)ちゃれえ、あねえあらん筈(はじ)やたん。
D なあ、やあさぬ、死(し)にいがたあまあとおしが(註)。
答え:
@ 泣ちぎさそおる童ぬ居ん。
A 先生らあさ歌てぃ、聴ちしゅうらさたん。
B あぬ人ん達や諸、ゑえきんっ人らあさたん。
C 聞ちゃれえ、あねえあらんぎさたん。
D なあ、やあさぬ、死にぎさそおしが。
日本語意訳:
@泣きそうにしている子供がいる。
A先生らしく歌って聞きごたえがあった。
Bあの人たちはみな、金持ちみたいだった。
C聞けば、そうではなかったようだ。
Dもう、ひもじくて死にそうなのだけど。
註:「死にいがたあ まあとおん」は「死にそうにしている」の意味の慣用句です。同じ意味で「死な死なあそおん」というのもあります。