2015年06月01日

第137講「目」に関する慣用句・言い回しW

うちなあぐち

@ あんし、朝寝(あさに)しいねえ、目虫(みいむし)ぬ這(ほ)うゆんどお。
A 政府(しいふ)お沖縄(うちなあ)の総考(すうかんげ)えや目(みい)ぬ尻(ちび)しん見(ん)だん
B 目(みい)いんでえぬ出(ん)じてぃ、目姦(みいかしま)さぬないびらん
C うたてぃ、目(みい)だっさんあい、目皮(みいがあ)んふぃっ込(く)どおん
D あんし、目(みい)ぐるぐるまあいし、何(ぬう)とぅめえとおが、汝(やあ)や。
E くぬ病(やんめえ)、くん直(のお)ちゃんでえ、目張(みいは)い事(ぐとぅ)どぅやる。
F 目(みん)ちゃんちゃんなち、根性(くんじょう)叫(あ)びいすし(せ)え風儀(ふうじ)ん無(ね)えん。
G 目(みい)ぬ敵(かな)あな何(ぬう)んくぃん、目(みい)くんだあなてぃどぅ見(み)いゆる。

日本語

@ そんなに、朝寝坊すると、目に虫が這うぞ。
A 政府は沖縄の世論は(軽蔑して)無視している
B ものもらいが出来て、目が煩わしいです
C 疲れて、目もだるいし、瞼もへこんでいる
D そんなにきょろきょろして、何を捜しているのか、君。
E この病から持ち直したとは、意外な事だ。
F 目をぎょろつかせて、怒声を浴びるのは見っともない。
G 目視力が衰えて、何もかも、見てはっきりしない

 
【解説】
 例文以外の目の部位を表わす語である「目元(みむとぅ)」、「目(みい)ぬ芯(しん)(瞳)」、「目眉(みいまゆ)」、「目玉(みんたま)」等や関連語である「目糞(みいくす)」、「目(みい)こうがあ(目窪み)」、「目窪(みいくぶう)(目が窪んでいる者)」、「目涙(みいなだ)(涙)」等の紹介は省略します。

例文@「目虫ぬ這うゆん」は朝寝坊を嘲る慣用句です。
例文A「目ぬ尻」は「目尻(まなじり)」。「目ぬ尻しん見だん」は「(あなどって)無視する」、「眼中におかない」の意味です。
例文B「目(みい)んでえ」は「ものもらい」。地方によっては「目(み)んだい」。「目姦さん」は「目が煩わしい」「見るに堪えない」。
例文C「目だっさん(首里語は『目だるさん』)」は「目がだるい」。「目皮」は「瞼」。「目皮ぬふぃっ込むん」は疲労等で「瞼がへこむ事」。逆に「目皮ぬ起りゆん」は「(元気が回復して再び)瞼が盛り上がる」の意味となります。「目返らあ」ともいう。
例文D「目ぐるまあい」は前講の「目ぐるぐるう」と共通の意味もありますが、ここでは「目をきょろきょろ」の意味。
例文E「目張い事」は「目を見張るような事」つまり「意外性があり驚くべきような事」の意味です。
例文F「目ちゃんちゃんなすん」は「目をぎょろぎょろさせる」の意味。
例文G「目ぬ敵ゆん」は「目が健康である」。「胴がな敵ゆん」は「体全体が健康である」。「敵あっとおみ」は「元気ですか」ぐらいの意味。例文の「敵あな」は「敵わず」の意味。「目くんだあ」は「見てもはっきりしないもの」の意味。

 
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(目ぬ尻しん見だん、目張い事。目ぬふぃっ込どおいびいん、目姦さん、目ぬ敵あな)

@ 難(むち)しいっ人(ちゅ)ぬ、胴(どぅう)持(む)ち外(はん)でぃとおんでえ、思寄(うみゆ)ゆらん事(くとぅ)やん。
A 我(わん)ねえ、あいゆかん、うたてぃ、目(みい)返(けえ)らあなとおいびいん
B 年寄(とぅすい)ぬ面(ちら)あ見(み)いちゃくんねえんでぃ言(ゆ)しが、却(けえ)てえちびらあさん。
C 近頃(ちかぐる)お目ぬ悪っさなやあに、書物(しゅむち)ぬ字(じい)ん、見(ん)じい難(ぐり)さいびいん。
D 年寄(とぅすい)ぬ持(む)ち過(くぁ)そおてぃん、見(ん)だんでぃんさん、くぬ悪魔(あくま)ひゃあ。
答え:
@ 目張い事。
A 目ぬふぃっ込どおいびいん。
B 目姦さん。
C 目ぬ敵あな。
D 目ぬ尻しん見だん。

日本語意訳
@優秀な人が身を持ち崩すとは以外な事だ。
A私はとても疲れて、目がだるいです。
B老人の顔は見るに堪えないというより寧ろ素晴らしい。
C近頃は目が悪くなり、本の文字も見辛いです。
D年寄りが荷を持ち過ぎても見ない振りして、この意地悪者奴。

2015年05月11日

第136講「目」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ 彼(あ)っ達(たあ)しい様(よう)や、どぅくだら、目(みい)に越(くぃ)いとおん
A 汝(いゃあ)や、人(ちゅ)ぬ事(くと)お済(し)むくとぅ、目(みい)ぬ蝿追(ふぇえう)うり
B 夏(なち)ぬ太陽(てぃいだ)あ目光(みいふぃちゃ)らさくとぅ、黒眼鏡掛(くるがんちょうか)きゆし(せ)えまし。
C 異風(いふう)な夢(いみ)見(ん)ち、目(みい)ぬ、けえ強張(くふぁ)(固(くふぁ))とおん
D 走船(はやふに)ぬ慣(な)れや一目(ちゅみ)どぅ見(み)ゆる(花風節より)
E あぬ御主前(うすめえ)や目(みい)ぐるぐるそおしが、落(う)てぃ返(けえ)てぃが居ら。
F 節変(しちが)わいねえ、目(みい)しち鼻(はなはな)しちんかいなゆる事(くとぅ)んあん。
G 業(わざ)し後(あと)お目笑(みいわれ)えどぅする、目煩(みいわざ)ん口煩(くちわざ)んやさんどお。

日本語

@ 彼らのやり方はあまりにも、目に余っている
A 君は、人の事をとやかく言わずに、自分の事をせよ
B 夏の太陽は眩しいので、サングラスを掛けた方がよい。
C 変な夢を見て、目が覚めてしまっている
D 足が早いのが船の習慣なので(船は)一寸しか見れない
E あの爺さんは目ぱっちりだが、子供返りしたのだろうか。
F 季節の変わり目には病気に成る事もある。
G 仕事後は微笑するべきで、しかめっ面するものではない。
 
【解説】
発音・文法もそうですが、慣用句をみても、日本祖語からの分岐以降の琉日両語の長い断絶を感じさせます。

@「目に越いゆん」は「目に余る」の意味です。
A「目ぬ蝿追うり」は「(他人の事より)自分の事を優先的にせよ」という意味です。
B「目光らさん」は「眩しい」の意味です。「目光ゆん(睨む)」は後講で紹介。
C例文は副詞「けえ」を使った為に「目ぬ」等と助詞「ぬ」を使う羽目になりました。通常は「目固(くふぁ)ゆん」又は「目強張(くふぁ)ゆん」です。意味は「目が覚める」又は「目が冴えて眠れない」です。同類語句に「目固あ」、「目固い」、「目固さん」、「目固やあ」、「目固々」等がありますが別講で紹介します。ここでの「固」は「強張」と当てる事ができます?。
D「一目」は「一瞬見る事」。「一見」と解釈する場合はこの講から外れますが、筆者は「一目」と解釈しています。
E「目ぐるぐる」はここでは「目がぱっちりしている様」。「目をきょろきょろさせている事」の意味もあります。「目ぐるぐるう」は「目をきょろきょろさせている者」。「目ぐる回い」は「目をきょろきょろ見回す事」(後講で紹介)。
F「鼻しち」は「鼻風邪」。「目しち」は語呂合わせで付け足した語ですが、「目しち鼻しち」で「病気」の意味。
G「目わざん口わざん」は「目をすぼめ口を歪める事」即ち「顰め面」「煩むん」は「顔に皺を寄せてしかめっ面になる」、「顔を顰める」の意味。「煩」は筆者の当て字なので要注意です。
 
【応用問題】
例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(目わざん口わざん、目に越いゆる、目ぐるぐる、目光らさぬ、目ぬ蝿追うらな)

@ いちむししんだんでえやあいゆかんぬ悪(や)な事(ぐとぅ)やくとぅ、し(せ)えならん。
A 何(ぬう)、かめえゆんち、汝(やあ)や、あんし、あま見(み)いくま見(み)いそおが。
B 何(ぬう)が汝(やあ)や、自(どぅう)ぬ事(くと)おさな、人(ちゅ)ぬ事(くとぅ)ありくり、くじい物言(むに)いする。
C かまじし食(く)ういねえ、却(けえ)てえ、まくぬ突(ち)ち合(ゃ)あさりいどお。
D 車(くるま)ぬ高光(たかびちゃ)い電球(でぃんちゅう)や、くぁらないし光(ふぃちゃ)てぃ、ぞおい見(ん)だりらん。
答え:
@ 目に越いゆる。
A 目ぐるぐる。
B 目ぬ蝿追うらな。
C 目わざん口わざんしいねえ。
D 目光らさぬ。

日本語意訳
@動物虐待等というのは目に余る悪事であり、してはならない。
A何を探すつもりで、そんなに、キョロキョロしているのか。
Bどうして君は自分の事はしないで、人の事を批判するのだ。
Cしかめっ面をすれば、却って、眉を顰められるぞ。
D自動車のハイライトは眩しくて、とても見る事ができない。

2015年04月30日

第135講「目」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 悪(や)な事(ぐとぅ)さあに、人(ちゅ)ぬ目(みい)や塞(ふさ)がらんでぃ思(うむ)り。
A うぬ童(わらび)え、いちゃいちゃあとぅ言(い)ゃてぃん、じかんじん聞(ち)かんくとぅ、なあ我(わん)ねえ目(みい)ぬ舞(も)おとおたん
B 婆前(はあめえ)や御主前話(うすめえはなし)ぬ分(わ)からな、目(みい)ぬむげえりたん
C どぅく、火働(ふぃいばたら)ちし、目(みい)けえふぃっちぇえらちょおん
D 引(ふぃ、ひ)ち目(み)さあに人(ちゅ)、見(ん)じゃあ見じゃあするむぬおあらん。
E 彼(あり)え目病(みいや)みやたる故(ゆい)に、今(なま)あ入(い)り目(みい)どぅなとおる。
F 諸(むる)なかいきろうくのうさってぃ、我(わん)ねえ目(みい)あまじちゃん。
G あったに立(た)っちいねえ、目眩(みいくら)がんする事(くとぅ)んあいびいん。

日本語

@ 悪事働いて、人目に隠す事はできないものと思え。
A その子は、こっぴどく言われても、聞き分けてくれないので、私は見ていて腹が立っていた。
B お婆さんはお爺さんの話が分からず腹が煮え立った。
C あんまり、一生懸命に働いて、目を回してしまった。
D 流し目で人をちょこちょこ見るものではない。
E 彼は眼病だった所為で今は義眼となっている。
F 皆にがみがみ言われて、私は目をうろうろさせた
G 急に立ったら、目眩がする事もあります。

【解説】
前講に続き、独自の慣用句・言い回しが多いです。

文例@「悪なぐとぅ」は「悪事(あくじ)」。「悪なくとぅ」は「ちょっとした悪い事」。「人ぬ目や塞がらん」は「人目から逃れる事はできない」。
文例A「目ぬ舞おゆん」は「見て目が舞う様に腹が立つ」の意味。「嬉しくて目が舞う」のではありません。
文例B「むげえりゆん」は「煮え立つ」、「沸騰する」の意味。「目ぬむげえりゆん」は「目が煮えくり返る様に怒る」。
文例C「目ふぃっちぇえらすん」は「目を回す」、「気絶する」の意味。「けえ」は「―して仕舞う」の意味や強調を表わす副詞。
文例D「引ち目」は「しょう目」とも言います。
文例E「目病み」は「眼病」。「入り目」は「義眼」。
文例F「あまじちゅん」は「揺れる」、「動揺する」の意味。「目あまじちゅん」で「目がうろうろ動く」の意味。
文例G「目眩がん」は「目眩(めまい)」の意味。「くくてぃ回(みん)ぐぃ」とも言います。
  
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(目むげえりとおたん、目や塞がらん、目ふぃっちぇえらちゃん、引ち目、目あまじちゃあに、目眩がん)

@ 崖(はんた)ぬ上辺(うわあび)から下見(しちゃん)ちゃれえ、くくてぃ回(みん)ぐぃし、不気根(ぶちくん)さん
A かじなとおる童(わらび)、見(ん)ち、たありいや、目(みい)ぬ舞(もお)とおたん
B どぅく、しゅう目(み)びけえ、しいねえ、横解(ゆくがん)取(とぅ)らりいんどお。
C 悪者(やなむん)やどぅまんぐぃてぃ、かじ切(ち)り叫(あ)びさがなあ、傾(かたん)ち走(ば)いさん。
D あっ達二人ぬ仲あ、なあ隠ち隠さらん。
答え:
@ 目眩がん、目ふぃっちぇえらちゃん。
A 目むげえりとおたん。
B 引ち目。
C 目あまじちゃあに。
D 人ぬ目や塞がらん。

日本語意訳
@崖の上から下を眺めたら、目眩がして気絶した。
A駄々を捏ねている子を見て父は腹が立っていた。
Bあまり、流し目だけしていると、誤解されるよ。
C悪人は驚いて、絶叫しながら顔を隠すように走り去った。
Dあの二人の仲は、もう隠し通せるものではない。




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