第140講「耳」に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 人(ちゅ)てぃらむぬお、耳(みみ)がにぬありわる、得(い)いらりゆる。
A 今(なま)ぬ政府(しいふ)お、総考(すうかんげ)えや耳(みみ)ぬ葉(ふぁあ)にん入りらんでぃんさん。
B 耳(みん)漏(じゃい)草(ぐさ)あ、耳(みん)漏(じゃい)んかい、かじ効(ち)ちゅんでぃさ。
C どぅく耳(みん)痛(ちゃ)さぬ、耳崩(みんくじ、みんくじ)らあけえなとおん。
D 耳姦(みみがしま)さる所(とぅくま)んじえ、耳平ら(みみふぃ)らみてぃ、聞(ち)けえわ。
E 耳崩(みみくじ、みんくじ)り物語(むぬがたい)や、ちゃっさ聞(ち)ちん、分(わ)からん。
F 豚(うゎあ)ぬ耳皮(みみがあ)、食(か)みいねえ、旨(まあ)さぬ耳(みみ)ぬ葉迄笑(ふぁあまでぃわら)ゆん
G 耳(みみ)掻(か)きじゃあし耳糞(みみくす)、取(とぅ)ゆるばすお、良(ゆ)うさんでえや。
H 大(ま)ぎさる耳(みみ)ぬ垂(たい)や、福耳(ふくみみ)んでぃ言(い)ゃっとおいびいん。

日本語

@ 人たるものは、理解力があってこそ、信頼されるのだ。
A 今の政府は世論に耳を傾けようともしない。
B ユキノシタ中耳炎(耳漏)に効き目があるとさ。
C あまりにも煩くて、つんぼになってしまった。
D 煩いところでは、聞き耳を立てて聞け。
E とんちんかんな話は、幾ら聞いても分からない。
F 豚の耳を食べると、美味しくて、とても喜ばしい
G 耳かき耳垢を取る場合は、気をつけないとね。
H 大きい耳朶は、福耳と言われています。

【解説】「耳」の卑語は「耳(みん)ちゃばあ」です。

例文@「耳がに」は「理解力」。「かに」は「(人としての)理性や常識」。「かに外でぃゆん」は「耄碌する」。
例文A「耳ぬ葉」は「外耳」。「耳ぬ葉にん入りらん」で「聞こうともしない」の意味の慣用句。参:例文Fの「耳皮」。
例文B「耳漏」は地方によっては「みんだい」。「耳漏草」は「耳漏」等を起こす耳の病(中耳炎等)に効くとされる薬草「ユキノシタ」。「かじ効ちゅん」の「かじ」は意味不明語あるいは意味のない語。「効ちゅん」でも構いません。
例文C「耳痛さん」は「(騒音等で)煩い」。例文Dの「耳姦さん」と同じ。「耳崩らあ」は「耳(みん)かあ」又は「耳(みん)くう」とも言います。「耳崩(みみくじ、みんくじ)り者」も同じ意味です。
例文D「耳平らみゆん」は「耳を澄ます」、「熱心に聞く」等の意味。
例文E「耳崩り物語」は「耳の不自由な(耳の遠い)者との会話」。転じて「とんちんかな話」。
例文F「耳皮」は主に食べ物としての「豚の耳」の事。普通は「耳ぬ葉」(例文@)。
例文G「耳掻きじゃあ」は「耳掻き」。「耳糞」は「耳垢」。
例文H「耳ぬ垂」は「耳朶」。「耳ぬふう垂」とも言います。「言ゃっとおん」は「言らっとおん」とも言います。
 
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(耳痛さぬ、耳がにぬあっさあ、耳ぬ葉にん入りらん、耳崩り物語、耳平らみてぃ)
@ 先生(しんしい)ぬ言(ゆ)しえ、うみはまてぃ、聴(ち)きわるないびいる。
A 政治(しいじ)ぬ事(くと)お、聞(ち)かんでぃんさんくとぅ、札入(ふだい)りんならん。
B 特(か)わてぃ、戦闘機(しんとぅうち)ぬ音(うと)お、耳(みん)姦(ちゃ)さぬ防(ふし)がらん。
C 未(なあ)だ童(わらび)どぅやしが、あいゆかん、じんぶなあやっさあ
D 耳(みん)かあ同士(どうさあ)ぬ話(ばなし)や、むさっとぅ分かやびらん。
答え:
@ 耳平らみてぃ。
A 耳ぬ葉にん入りらん。
B 耳痛さぬ。
C 耳がにぬあっさあ。
D 耳崩り物語。

日本語訳 
@先生の言う事は熱心に聴かねばなりません。
A政治の事に耳を傾けようともしないから投票もできない。
B特に戦闘機の音は煩い。
Cまだ子供だが、とても聡明だな。
D耳の遠い人同士の話は全く分からないです。

第139講「目」に関する慣用句・言い回しY

うちなあぐち

@ 赤子(あんぐぁ)あ何(ぬう)んくぃん取(とぅ)てぃ食(か)むくとぅ、目(みい)くげえんならん
A 目玉(みんたま)あ目鏡(みいかがん)掛(か)きいねえ、目口(みいくち)ぬ柔(やふぁ)らさなゆん。
B 竜眼目(りんがんみい)やだあまとぅ似(に)ちょおしが同(い、ゆ)ぬ目病(みいやみ)がやら。
C 短棒(いんちゃぼう)持(む)っち人(ちゅ)ぬ目抜(みいぬ)ち鼻抜(はなぬ)ちすぬむのおあらんどお。
D うぬ童(わらび)え、寝振(にいぶい)がそおらあ、目(みい)擦(し)り擦りそおん。
E 暗闇(くらしみ)んじ壁(くび)んかい突(ち)ち当(あ)たてぃ、目(みい)じいんじいん飛(とぅ)だん。
F 片目(かたみい)し、しょう目(みい)さい、側目(すばみい)さいしいねえ異風(いふう)なあやさ。
G 目張(みいは)てぃ目(みい)まってえんなしいねえ、目立(みいだ)ちゅんどお
H 子(くぁ)あ親(をぅや)ぬ目(みい)とぅ同(いん)丈(たき)成(な)りわる、大人(うふっちゅ)やる。

日本語

@ 赤子は何でも取って食べるので、ちっとも目が離せない
A 目玉の大きい者眼鏡を掛けると表情が柔らかくなる。
B 白内障は角膜白斑とも似ているが同じ眼病なのか。
C 大した根拠も無いのに人の粗探しはしない方が良いぞ。
D その子供は、眠たいのか、目を擦っている。
E 暗闇で壁にぶつかり、目から火が出た
F 片目藪睨みしたり、横目使いしたりしたら変だよ。
G 目を見開いて目を真ん丸くすると、目立つぞ
H 子は親と同じ高さになってこそ大人なのである。

【解説】
 「目禿い」等、分かり易いものや「横目」(役名・監視官)等については一部略します。

例文@「目くげえ」は「目を動かす事」の意味から転じて「目を離す」という意味もあります。
例文A「目玉あ」は「目玉の大きい者」。「目口(みいくち)」は「表情」。同音の「見口(みいくち)」は「見た瞬間」、「一目見た感じ」等の意味。
例文B「だあま」は「だあみ」とも言います。「同(い)ぬ」は「ゆぬ」の発音もあります。
例文C「目抜ち鼻抜ち」は「目を突いたり鼻を突いたり」の意味から転じて、「(子供等の)悪ふざけ」や「人の粗探し」の意味。「短棒を持っち」は「大した根拠もないくせに」等の慣用句。
例文D「目擦り擦り」は「目を擦ること」。「寝振」は「居眠りして身体を揺らす様」。「眠振」の当て字もあり得ます。
例文E「じいんじいん」は「じんじん」とも言い、小児語で「蛍」。「目じいんじいん飛ぶん」で「目から火が出る」。
例文F「しょう目」は「藪にらみ」、「斜視」等の意味。「側目」は「横目使い」。
例文G「目まってえんなすん」は「目を真ん丸くする」。
例文H「目とぅ同丈」は「目の高さが同じ」という意味。慣用的には「子供が親と同じ丈ぐらいになる事」の意味。
 
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(目抜ち鼻抜ち、目口、目くげえんならん、目と同丈、目丸ってえんなちょおいびいたん)

@ 外(ふか)んじえ、面(ちら)あ、いいくる柔々(やふぁやふぁ)あとぅ、すしえましやいびいん。
A くぬ影踊(かあがあをぅどぅい)や面白(うむ)さくとぅ、見詰(みいち)きとおかんでえならん
B あぬ女(ゐなぐ、いなぐ)お、とぅんもおてぃ、目張(みいは)っぱとおいびいたん
C 人(ちゅ)んかい、悪(や)ながんまりすしえ、あらんどお。
D 今(なま)ぬ童(わらび)え程上早(ほどぅゐいべえ)さぬ大人(うふっちゅ)ならんまあどぅ親(をぅや)とぅ同(いん)丈(たき)なゆん
答え:
@ 目口。
A 目くげえんならん。
B 目丸ってえんなちょおいびいたん。
C 目抜ち鼻抜ち。
D 目とぅ同丈。

日本語意訳
@外では表情は大抵、柔和にしていた方が良いです。
Aこの映画は面白いので目が離せない。
Bあの女はびっくりして、目を見開らいていました。
C他人に悪い悪戯するものではないぞ。
D今の子供は成長が早くて、大人になる前に親と同じ背丈になってしまう。

第138講「目」に関する慣用句・言い回しX

うちなあぐち

@ あぬ日(ふぃい)ぬ事(くとぅ)ぬ目(みい)ぬ緒(をぅう)に下(さ)がてぃ、夜(ゆる)ん目固(みいぐふぁ)いそおん。
A 目(みい)こうがあないねえ面目口(ちらみいくち)までぃん、けえ変(か)わゆん。
B 夏(なち)ぬ夜(ゆる)お、しぷたら暑(あち)さぬ目固張(みいぐふぁ)固張(ぐふぁ)し眠(にん)だらん。
C 兄(しいざ)なかい目光(みいふぃちゃ)らってぃ、弟(うっとぅ)お竦目(しかみい)ぐるぐるそおたん。
D 恥(は)じかさがあら、目(みい)ん振上(ふや)ぎらんでぃんさんたん。
E 目強(みいちゅう)やあ呉(くぃ)りんでぃち、童(わらび)え、目(み)様口(ようくち)様(よう)さびたん。
F 苦々(んじゃんじゃ)あとぅ言(い)らってぃ、目元(みむとぅ)暗々(くらぐら)とぅなるが心地(しんち)やさ。
G 男(ゐきが)ぬ白目(しるみい)ふっちぇえらちゃれえ、女(ゐなぐ)お、目(みい)ん白(しる)なち笑(わら)たん。

日本語

@ あの日の事が瞼に焼き付いて離れず、夜も眠れない。
A 目が窪むと顔全体の様相まで変わってしまう。
B 夏の夜は蒸し暑いので寝付きが悪くて眠れない。
C 父に睨まれ、男の子はびくびくしていた。
D 恥ずかしいのか目を上げて見ようともしなかった。、
E お目覚を頂戴と子供は目つきや口の形で合図しました。
F ずけずけ言われて、目の前が暗くなる様な感じだよ。
G 男が瞼を返して白目を出すと、女は目を細めて笑った。

【解説】
 「目元暗々とぅ」等、文学から生まれた表現でも話し言葉で大いに用いたいものです。

例文@「目ぬ緒に下がてぃ」は「瞼に焼き付いて離れない」。琉日語共に文学的表現だが話し言葉としても通用します。
例文A「目こうがあ」は「目が窪む事」で前講の「目皮ぬふぃっ込むん」と同じ意味。「面目口」は「顔全体」の意味です。「面見口(第33講)」や「目口(表情)」との違いに要注意です。
例文B「目強張強張」は筆者の当て字なので要注意です。「目固目固」でも可能です。36講参の例文C参考して下さい。
例文C「目光(みいふぃちゃ)ゆん」は直訳では「目光る」ですが、「目を光らす」つまり「(目を光らす様に)睨む」の意味です。
例文D「目振上(みいふぃや)ぎらん」は「(相手を)見ようともしない」、「(恥ずかしくて)顔が上らない」等の意味です。
例文E「目強やあ」は「おめざ」。首里語では「目固(みいくふぁ)やあ」ですが、同語には「不眠症」という意味もあります。「目様口様」は「目つきや口の形で何らかの合図を送る事」の意味。類語に「手様足(てぃいようふぃさ)様(よう)」(手振り足振り)があります。
例文F「目元暗々とぅ」は「目の前が(失望感等で)暗く」という意味の文学的表現です。
例文G「白目ふぃっちぇえらすん」は「白目を剥く」。「目ん白なち」は「白目になるほど目を細めて」の意味。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(面目口、目強やあ、目こうがあなとおくとぅ、目ん白なち笑いねえ、目光ちゃいねえ、目元暗々とぅそおん)

@ あい、起(う)きみそおちい、だあ、目固(みいぐふぁ)ふぁやあ呉(くぃ)らやあ。
A 汝(やあ)が目笑(みいわれ)え小(ぐぁあ)しいねえ、彼(あり)え、何(ぬう)ん「おお」やさ。
B あんまあや、目皮(みいがあ)ぬふぃっ込(く)どおくとぅ、うたてぃが居(をぅ)ら。
C 今(なま)ぬ政治(しいじ)向(む)ちえ、何(ぬう)がなとおら分(わ)からな、暗々(くらぐら)とぅそおん。
D 汝(やあ)面影(ちらかあぎ)し、あんすか、童(わらび)、見詰きいねえ、けえ竦(しか)ますんどお。
答え:
@ 目強やあ。
A 目ん白なち笑いねえ。
B 目こうがあなとおくとぅ。
C 目元暗々とぅそおん。
D 面目口、目光ちゃいねえ。

日本語意訳
@あら、起きましたか、ではお目覚めのおやつをあげようね。
A君が微笑むと彼は何でもOKだよ。
B母は瞼がへこんでいるので、疲れているのかしら。
C白を黒と言い張る今の政治の動向はどうなるか分かず先が暗い。
D君の顔付きで、そんなに、子供を睨んだら、怖気させてしまうぞ。




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