2015年04月17日

第134講「目」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 父(すう)やわじてぃが居(をぅ)たら、目(みい)やとぅざなち見(ん)ちょおたん。
A やしが、母(あんまあ)や目(みい)青光(おおびちぇ)えしみてぃ、父(すう)、見(ん)ちょおたん。
B 父(すう)達(たあ)や諸(むる)、目(みい)ぬ肥(くぇ)えとおくとぅ、しいぐりさん。
C あっさ、目(み)んちゃ物(むん)ぬ入(い)っち、目(みい)姦(がしま)さぬならんしよ。
D 御主前(うすめえ)や、今日(ちゅう)ぬ明(あ)き方(がた)、目閉(みいく)うとおみせえん
E 女(ゐなぐ)おとぅるばてぃ、ふりぶりいとぅ、目空張(みいんなば)いそおん。
F 諸(むる)目(みい)ふぁあふぁあなやい、声(くぃい)んふとぅふとぅうそおん。
G 先生(しんしい)なかい引(ふぃ)ち上(ゃ)ぎらってぃ、目開(みいふ)らきらっとおん

日本語

@ 父は怒っていたのか、眼光鋭くして見ていた。
A だが母は冷たい視線を父に浴びせていた。
B 親父達は皆目が肥えているから、やり難い
C あ〜あ、目にごみが入って(目が)煩わしい事よ。
D お爺さんは、今日の明け方、お亡くなりになりました
E 女は静かに、ぼんやりと、目を空ろに開けている
F 皆、失望感に襲われて、声も震えている。
G 先生に助けられて、啓発されている

【解説】
「目」に関する慣用句・言い回しは、「目ぬ肥えゆん」等、一部を除き、沖縄語として、独自に発達したものの一つです。

例文@「とぅざ」は魚等を獲る「銛」。「目やとぅざなすん」で「眼光鋭くする」の意味となります。
例文A「青光え」は「青光り」。「目青光え」で「冷たい視線を注ぐ」等の意味。「目光らすん」だけなら「睨む」の意味。
例文B「目ぬ肥えゆん」は文字通り「目が肥える」、「見る目がある」等の意味となります。
例文C「目んちゃ物」は「目に入ったごみ」。「目姦さん」には「目に煩い」つまり、「見たくない」等の意味の他、「目が煩わしい」つまり「目が痒い」、「眼病である」の意味もあります。
例文D「目閉うゆん」は単に「目を閉じる」の意味から転じて「死ぬ」の意味にもなります。
例文E「目空張い」は「目を空しく張るように開けている事」の意味つまり「ぽかんとしている事」の意味です。
例文F「ふぁあふぁあ」は「火照る様」の擬態語。「目ふぁあふぁあ」で「目がぼうっとしている感じ」の意味です。
例文G「目開らきゆん」は「目を明ける」の意味から転じて、「啓発する」、「学問をさせる」の意味があります。

【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。

(目姦さ、目空張い、目開らきとおん、目青光しいねえ、目ふぁあふぁあなたあやあに)

@ 同士(どぅし)小(ぐぁあ)や、屁(ふぃい)放(ふぃ)り籤当(くじあ)てぃてぃ、けえがんどぅとおん
A 花粉症(くぁふんしょう)ないねえ、目(みい)ぬいいごおさないんでぃさ。
B あんし悪(や)な目(みい)光(ふぃちゃ)らしいねえ、隔(ふぃだ)てぃ持(む)たりいんどお。
C 我(わん)ねえ、なあ、ちるだいさあに、引(ふぃ)ちなやびたん。
D 記者(ちしゃ)あ、目光(みいふぃちゃ)らち、非明(ふぃいあか)がらちゃるむぬやん。
答え:
@ 目空張い。
A 目姦さ。
B 目青光えしいねえ。
C 目ふぁあふぁあなやあに。
D 目やとぅざなち。

日本語訳:
@友だちは、空籤を当てて、がっかりしてしまった。
A花粉症になれば、目が痒くなるとの事だよ。
Bこれほど、冷たい視線を浴びせると疎遠になるよ。
C私はもう失望して、身を引きました。
D記者は眼光鋭く、悪事を暴いたのである。

2015年04月11日

第133講「面」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 弟(うっと)お面(ちら)わあぬあくとぅ、負(ま)きてぃん面振(ちらぶ)いやさんたん。
A 面(ちら)だましぬあるっ人(ちょ)お面質(ちらしち)持(む)ちし銭借(じんか)ゆしぬなゆん。
B 面高(ちらたか)うち上(ゃ)がいそおしが、却(けえ)てえ、面耄(ちらふ)あぎさん。
C 面影(ちらかあぎ)ぬ良(ゆ)たさあ、面郭(ちらがく)びけんしえ、分(わ)からん。
D 彼女(あり)が面見口(ちらみいくち)え、ちゃあ辛(ちら)様(よう)なてぃ面(ちら)みっくぇえやん
E 面(ちら)ふぁあふぁあするあたい面小(ちらぐぁあ)けえなたん
F 面(ちら)ぬ恥(はじ)ぬ無(ね)えらん人(ちゅ)お、肝(ちむ)ん無(ね)えらん人(ちゅ)どぅやる。
G 人(ちゅ)ぬ形描(かたか)ちゅるばあや、面(ちら)木目(むくみ)どぅ見(ん)じゅるい、あらんでえ、面置(ちらう)ちきどぅ見(ん)じゅるい。
生徒(しいとぅ)ん達(ちゃあ)や、迎(んけえ)え面(ぢら)、新先生(みいしんしい)んかい、御礼(ぐりい)さびたん。

日本語

@ 弟は度胸があるから負けても顔を背けなかった。
A 賢い顔立ちの者は顔を抵当に借金ができる。
B 傲慢に反り返りしているが、却って馬鹿みたいである。
C 顔立ちの良さは、顔の輪郭だけでは決まらない。
D 彼女の表情は一見、いつも泣きべそで、可愛い
E 顔が火照てるほど、恥ずかしくて顔を上げられない
F 顔に恥がでない者は、心の無い者なのである。
G 人物画を描く場合は面構えを見るのか、それとも顔付き(表情)を見るのか。
H生徒たちは新しい先生に会うやいなや、お辞儀をしました。

【解説】
 例文の他に「面(ちら)がまち(顔の卑語)」や「面汚(ちらゆぐ)し」、「ゆむ面(ぢら)(嫌な顔)」等もありますが、特に説明を要する迄もないと思われますので省略します。

例文@「わあ」は「広さ」・「幅」。単独で「度胸」の意味もあるが、「面わあ」で「自信に満ちた度胸」等の意味合い。
例文A「面だまし」は「聡明な顔付き」。「面質持ち」は「顔で質持ちになる事」つまり「(金銭的に)信頼できる顔」。
例文B「面高うち上がい」は「傲慢に反り返っている事」の比喩的表現です。「足元に気を付けない事」の意味もあります。「面耄らあ」は「馬鹿面」の意味で、普通は罵って言う場合に使います。
例文C「面影」は「顔立ち」です。「清・美ら影」と混同しないように。「面郭」は「顔の輪郭」。
例文D「面見口」は「一見した表情・顔」或いは「表情・顔を一見する事」。「辛様」は「面様」とも当てる事が出来ます。「面みっくぇえ」の「みっくぇえ」は「みっくぁさん(憎い)」から転じて「憎い程可愛い事」。
例文E「面ふぁあふぁあ」の「ふぁあふぁあ」は「火照っている様」。「面小」は「顔が小さくなる程恥ずかしい」。
例文F「面ぬ恥」は「顔に出る恥」、「顔に恥が表れる事」。
例文G「面木目」は「顔の輪郭等の物理的作り」。「面置ちき」は「内面的な表情や顔付き等」の意味。
例文H「迎え面」は「向かえるとすぐ」、「迎えるやいないや」という意味です。
 
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(面耄らあ、面わあ、面影ぬ良たさる女、面高うち上がいしいねえ、面ぬ恥ん無えん)

@ わあぬあるっ人(ちゅ)お(・)、また、気鈍(ちいにい)さんあん。
A あんすか迄(までぃ)、清(ちゅ)ら影女(かあぎゐなぐ)お(・)、ちいに、居(をぅ)らん筈(はじ)やん。
B 耄(ふ)り者(むん)ぎさてぃん、がなら者(むん)やれえ済(し)むん。
C どぅく、上(うわあ)辺(び)びけえ見(ん)じいねえ、きっちゃきすんどお。
D 恥(はじ)ん知(し)らんくとぅどぅ、諸(むる)なかい、があみかさりいる。
答え:
@ 面わあ。
A 面影ぬ良たさる女。
B 面耄らあ。
C 面高うち上がいしいねえ。
D 面ぬ恥ん無えらん。

日本語意訳
@度胸のある人はまたのんびり屋でもある。
Aそれほどまでに美しい女は滅多に居ないだろう。
B馬鹿みたいでも、働き者であれば良い。Cあんまり、反り返っていたら(傲慢にしていいたら)、躓くぞ。
D恥も知らないからこそ、皆に拳骨でこつんとやられるのである。

2015年04月01日

第132講「面」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 面々(ちらぢら)とぅ、言(い)い張(ば)らりいねえ、実(じゅん)にぎさんあん。
A あまぬ親(うや)っ子(くぁ)あ、面一(てぃいち)ちやしが、共(とぅむ)に面二(ちらたあ)ちゃあんやん。
B 面割(ちらわい)道具(どうぐ)やれえ、面(ちら)あふぁさ面開(ちらふ)らからん
C 泳(ゐい)じ習(なれ)えや、面(ちら)ちい込(く)んからどぅ始(はじ)みゆる。
D 年取(とぅしとぅ)いねえ、銭(じん)どぅ面(ちら)がたかやる。
E 彼(あり)え(・)面撓(ちらた)まあやあしが、何(ぬう)ん面恥(ちらは)じかさんでえ思(うま)あん。
F 面(ちら)ぬ皮厚(かああち)いや、面(ちら)みっくぁさぬならん。
G あぬ面膨(ちらぶ)っくぁあや、実(じん)に面憎(ちらにく)さん
H生面(なまぢら)あや、面晒(ちらさら)ちん、難ん肝(ちむ)に掛きらん。

日本語

@ 面と向かって、言い張られると、本当のようでもある。
A あそこの親子は瓜二つだが、揃って二枚舌でもある、。
B 面目喪失なら、恥ずかしく穴があったら入りたい
C 水泳の練習は顔を水に突っ込む事から始めるのである。
D 年取れば、金こそが顔(の醜さを)カバーする
E 彼は窪み顔だが、何も恥ずかしいとは思わない。
F 面の皮が厚い者は、憎らしくてしょうがない。
G あの膨れっ面した奴は本当に憎らしい
H厚顔な者は、人前で恥をかいても、何とも思わない。


【解説】
「面(ちら)」は士族音では「つぃら」。文語では「顔(かう)」ですが、「顔隠(かうかく)ち」等、一部では口語でも「顔」使いがあります。

例文@「面々とぅ」は「面と向かって」。
例文B「面一ち」は「顔がそっくりな事」。「面二ち」は「二つの顔」から転じて、「二枚舌」、「内股膏薬」の意味。
例文C「面割道具」は「面目を失う事」の比喩的表現。「面あふぁさん」(直訳:顔の味が薄い)は「面映ゆい」の比喩的表現。「面開らからん」は「会わせる顔がない」という意味の比喩的表現。
例文D「面ちい込ん」は「顔を突っ込む」。「ちい」は「-してしまう」、「強く-する」の意味の(強調)接頭語。
例文E「かたか」は「風がたか」等にあるように「遮蔽」や「庇護」の意。「面がたか」は「(醜い)顔を蔽い隠すもの」という意味ですが、慣用的に「肩書き」や「血筋」等が「醜い顔でも包み隠してくれる事」の意味です。
例文F「面撓まやあ」は「中心部が窪んでいる顔」等を言います。「面恥じかさん」は「恥が顔に出る事」です。
例文G「面ぬ皮厚い」は「面の皮の厚い者」。「みっくぁさん」だけでも「憎い」ですが、「面みっくぁさん」で「顔が憎らしい」、「見るからに憎らしい」等の意味合いになります。
例文H「面膨っくぁあ」は「膨れっ面」。「面憎さん」も「顔的に憎たらしい」という意味合です。参考:前例文。
 
【応用問題】
 例文等を参考に、次の文中の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(面開らからんどぅある、面一ちやん、面割道具なとおん、面々とぅ、面二ちゃあやん)

@ あぬ二(にあ)ちゅうや、実(じゅん)に、まあ似(に)い小(ぐぁあ)そおん
A 男(ゐきが)とぅ女(ゐなぐ)二人(たい)や、たんかあ座(いい)し、互(たげ)えに見詰(みいち)きとおたん。
B 人抜(ちゅぬ)じゃあや、大概(てえげえ)、あり言(い)ちゃい、くり言ちゃいするむぬやん
C どぅく、恥(は)じかさぬ、うっちんたあどぅそおたる
D 悪(や)な事(ぐとぅ)びけんすくとぅ、面目(むんぶく)ぬけえ倒(とお)りとおん
答え:
@ 面一ちやん。
A 面々とぅ。
B 面二ちゃあやん。
C 面開らからんどぅあたる。
D 面割道具なとおん。

日本語意訳
@あの双子は本当にそっくりだ。
A男女は差し向かって互いに見詰め合っていた。
B詐欺師は大体において二枚舌である。
Cあまりにも恥ずかしくて顔が上げられなかった。
D悪事ばかりするから面目を失ったしまった。




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