2015年09月06日

第143講「口」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ さんさなああん小達(ぐぁあたあ)や'口浅(くちあ)っさんあい、三(さん)馬口(ばくち)んやん。
A 彼(あり)え、芋(んむ)ぬ口(くち)どぅやくとぅ、誰(たあ)んかい口(ぐち)ふぃんけえさん。
B 彼(あり)が話(はなし)え、口回(くちまあ)いする為(たみ)ぬ口先(くちさち)どぅやる筈(はじ)。
C 母(あんまあ)や口重(くちんぶ)うやしが、叫(あ)びらしいねえ、口喧(くちやがま)さん
D あぬ童(わら)え口数(くちかじ)んあい、口(くち)早(べえ)く口ん敵(かな)ゆくとぅ大事(でえじ)やさ。
E 口剃刀(くちがんすい)同士(どうさあ)ぬ口事(くちぐとぅ)お、聞(ち)ちん、口(くち)はごうさん
F 上辺(うゎあば)な口(くち)ぬ緒(うう)から世間(しきん)ぬ口舌(くちしば)んかい掛(か)かゆる事(くとぅ)んあん。
G 男(ゐきが、いきが)ぬ油口(あんだぐち)え、口先(くちさち)びけんどぅやくとぅ、心得(くくりい)り。
H 口(くち)ぬ緩(ゆる)るうそおしえ、歌口え(うらぐち)えあらん風儀(ふうじ)やん。

日本語

@ お転婆お嬢さん達は、口も軽くお喋りでもある。
A 彼は、無口なので、誰にも口答えをしない。
B 彼の話は言い逃れする為の上辺だけの言葉かも知れん。
C 母は、口下手だが、喋らすと、小言ばかり言う
D あの子は語数も多く、早口口答えもするから大変だよ。
E 口達者同士の言い争いは聞いても、口汚い
F 余計な口癖から世間の悪評に乗る事もある。
G 男の甘言は口先だけだから、気を付けよ。
H 口の締りが悪いのは、歌上手ではいないみたいだ。

【解説】
例文@「さんさなあ」は「煩く鳴く蝉」の事ですが、「お転婆」に意味にも転じています。「口浅さん」は「軽々しく(言っていけない事も)口にする」の意味で「口ぬ軽さん」と同じです。
例文A「芋ぬ口」は「無知な者」を嘲笑する語。
例文B「口先」は「上辺だけの言葉」で「口ぬ上辺」とも言います。
例文C「口重う」は「訥弁である」、「口下手」の意味。「口喧さん」は「小言を煩く言う様」。
例文D「口数」は「言葉の数」、「語数」等の意味。「口早さん」は「早口である」。「口敵ゆん」は文脈によって、「口応えする」又は「口が達者である」。
例文E「口剃刀」は「口が達者である者」或いは「言う事が鋭い者」。「口事」は「言い争い」や「口喧嘩」。「口はごうさん」は「口汚い」。
例文F「口ぬ緒」は「口癖」の意味で、「口癖」とも言います。「口舌」は「(主には悪い)評判また噂」の意味です。
例文G「油口」は日本語に同じく「甘言(かんげん)」。「口先」も日本語に同じで「口先」。
例文G「口ぬ緩う」は「口の締りが悪く、だらしない様子」。「歌口」は「歌が上手い口」、つまり「歌上手」。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(口浅さん、三馬口、口事、口舌、芋ぬ口、口重う、口喧さ、口ぬ緒)

@ あまぬゆんたくうあんまあんかいや、口下手(くちびた)ぬ主(すう)や敵(かな)あん。
A 重(んぶ)し減(ふぃ)ならんすんでぃしえ、彼(あ)っ達(たあ)口(くち)ぬ上辺(うゎあび)びけんぬ口癖(くちぐし)どぅやる。
B 彼(あり)え、とぅるばやあどぅやくとぅ、友(どぅし)え一人(ちゅい)んちょおん居(をぅ)らん。
C ごうぐちさる為(たみ)なかい、あんし、沙汰(さた)さりいんでえ思(うま)あんたん。
D あんすか迄(までぃ)ん、抗(あらが)あしいねえ、仲直(なかのお)いやならんないんどお。
答え:
@ 三馬口、口重う。
A 口先。口ぬ緒。
B 芋ぬ口。
C 口喧さ。口舌んかい掛かゆん。
D 口事。

日本語訳
@あのお喋り母さんには口下手の親父は敵わない。
A負担を軽減するというのは口先だけである。
B彼は(どうしようもない)無口なので、友だちは一人もいない。
C小言を言ったばかりに、こんなに、悪く噂されるとは思わなかった。
Dそんなにひどく、言い争いをすると、仲直りが出来なくなるよ。

2015年08月20日

第142講「口」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 昨日(ちぬう)迄(まで)え口(くち)にいさたしが、今日(ちゅう)からあ口まあさん
A 口直(くちのお)しぬ積合(ちむええ)し、じょうふぃたケーキ食(か)でぃ口破(くちやん)とおん。
B 高昼間(たかふぃるま、たかひるま)ないねえ、口(くち)寂(さび)っさないくとぅ、口作(くちじゅく)いさな
C 物事(むぬぐと)お口(くち)追(う)うゆくとぅ、うかいとぅ、口しんだかすな
D くっ達(たあ)や、口汁(くちしる)じいじいするか、口(くち)返答(ふぃんとう)そおたん
E 前(めえ)や口(くち)ぬ前(めえ)びけんどぅやたしが、今(なま)あ食(くぇ)え口(くち)ぬ加増(かずう)てぃ、口とぅめとおん
F 口難(くちぐふぁ)あ口にんさららん物言(むぬい)い方(かた)んすくとぅ厄介(やっけえ)やん。
G 口軽(くちが)っさる者(むん)ぬどぅ、口吹(くちぶう)うちんする

日本語

@ 昨日迄は食欲がなかったが、今日からは食欲がある
A 口直しの積りで、いつもケーキを食べ、食べ癖が付いた
B 昼後には何か食べたくなるので、ちょっと食べようか
C 物事は言った通りになるから、うっかり、口を滑らすな
D 彼らは、唾を垂らしまくる程、口答えしていた
E 以前は自分が食う分しか働かなかったけど、今は、食費が増えたので、職を捜している
F 毒舌者は、絶対に口にすべきでない事も言うから厄介だ。
G 口の軽い者こそ、ほらも吹くのである

【解説】
「苧口(ううぐち)」(おこげ)、「胸口」(みぞおち=『落とぅし』)、「帯しい口」(帯をする所)等の単語の組成となる「口」や「口下手」、「口癖」、「口止み」、「口閉うゆん」等、日本語と殆ど同じ様な句は省略します。

例文@「口にいさん」は「食欲が無い」。「口まあさん」は「(病後等に食欲が出てきて)何でも美味しい」。
例文A「口直し」は日本語に同じ。「口破じゅん」は「口が肥える」「美食癖が付く」等の意味。
例文B「口寂っさん」は「何か食べたい欲求に駆られる」という意味。「口作い」は「少し何か食べる事」。
例文C「口追うゆん」は「言った通りに成就する」という意味で「言葉(くとぅば)追(う)うゆん」も同じです。「口しんだかすん」は文字通り「口を滑らす」、「うっかり、言ってはいけない事を口にする」等の意味です。
例文D「口汁」は「涎」。「〜じいじい」は「たらたら」、「液体が垂れる様」を表わす擬態語です。「油じいじい」という慣用句もあります。「口返答」は「口答え」の意味です。
例文E「口ぬ前」は「自分一人が食う分だけ」という意味です。「口とぅめえゆん」は「職を探す」という意味です。
例文F「口難あ」は「口(言葉)が悪い者」、「喋り方が荒々しい者」等の意味です。「口にさららん物言い方」の「〜さららん」は「できない」。句全体では「(普通)は口にする事の出来ない様な事を(平気で)言う事」の意味となります。
例文G「口軽っさん」は文字通り「口が軽い」。「口吹ち」は「法螺を吹く」、「大言壮語」の意味です。
 
【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(口とぅめえゆん、口けえ破とおん、口吹ち、口にいさん、口追うゆくとぅ)

@ 母(あんまあ)や言葉(くとぅば)追(う)うくとぅんでぃち、「死(し)ぬ」でえ言(い)らんたん。
A 彼(あり)え、大物(うふむに)言(い)いする癖(くし)ぬあくとぅ、厳重(じんじゅう)さあ無(ね)えらん。
B 今(なま)ぬ世(ゆう)や、仕口(しくち)とぅめえてぃ、働(はたら)かんでえ、食(か)み外(は)じゃきゆん。
C あんまさぬ、何(ぬう)ん食(か)みい欲(ぶ)しゃあ無(ね)えらん
D 旅(たび)んかい行(ん)じ、旨(まあ)さ物食(むんか)むる癖(くし)ぬ付(ち)ちょおん
答え:
@ 口追うゆくとぅ。
A 口吹ち。
B 口とぅめえてぃ。
C 口にいさん。
D 口けえ破とおん。

日本語訳@母は言った通りになるからと、「死ぬ」とは言わなかった。A彼は大言壮語を言う癖があるので信用できない。B今は職に就かないと食にありつけない。C気分が悪く、食欲がない。D旅行に行って美味しい物を食べる癖が付いた。

2015年07月31日

第141講「鼻」に関する慣用句・言い回し

うちなあち

@ 鼻(はな)放(ふぃ)ちゃい、鼻啜(はなしし)たい、しいねえ、鼻(はな)しち加減(かじん)やさ。
A 鼻固(はなかた)またい、鼻(はな)ぴいぴいしいねえ、鼻しち罹(かか)とおる筈(はじ)。
B 鼻垂(はなだい)ぬ強(ちゅう)されえ、鼻しぴたい、皮張(かあばい)いさいすんどお。
C 彼(あり・)え鼻(はな)しぴらあやしが、鼻開(はなふら)ち鼻ぬ上迄(ゐいまでぃ)這(ほ)おとおん
D 寝(に)んとおるばす、鼻吹(はなふ)ちゅるっ人(ちゅ)お息(いいち)ぬ止(とぅ)またいすん。
E 鼻汗(はなあし)・鼻血(はなぢい)、拭(ぬぐ)ゆるばあねえ、鼻紙(はながみ、はながん)ぬ要(い)り用(ゆう)やん。
F 汝(やあ)鼻物(はなむぬ)言(い)いや、鼻(はな)しちどぅやるい、ふんでえどぅやるい。
G 鼻(はな)ぶっくぁあ、鼻ぬ先(はなぬさち)んじ見(ん)じいねえ、異風(いふう)なむんやん。
H 鼻無(はなもう)とぅ鼻欠(はなか)きえ同(い)ぬ意味(ちむええ)やしが鼻びらあとお別(びち)やみ。

日本語

@ クシャミしたり、鼻を啜ったりしたら、鼻風邪気味だよ。
A 鼻詰まりした鼻が鳴ったら、鼻風邪をひいているかも。
B 鼻水が多い鼻をかんだり、乾いて張り付いたりするよ。
C 彼は鼻ぺしゃだが、得意気に付け上がっている。          
D 睡眠中に鼾をかく人は、呼吸が止まったりする。
E &&&鼻汗・鼻血を拭う場合は、鼻紙'''が必要だ。
F 君の鼻声は、鼻風邪なのか、甘え声なのか。
G 鼻の盛り上がった部分を間近で見ると変なものだ。
H 鼻無鼻欠けは同じ意味だが、鼻潰れとは異なるか。
  
【解説】
鼻糞、鼻毛、鼻垂やあ(洟垂れ者)、鼻ぬ下ぬ溝小(人中)等は省略します。

例文@「鼻放(はなふぃ、はなひ)ゆん」は「クシャミする」。「鼻啜(はなしし)ゆん」は「鼻をかむ」。「鼻しち加減」は「鼻風邪気味」。
例文A「鼻固まゆん」は「鼻詰りする」。「鼻ぴいぴい」は「鼻詰り気味で出す音」。「鼻しち罹ゆん」で「風邪をひく」。
例文B「鼻垂」は「鼻水」。「鼻しぴゆん」は「鼻をかむ」。「鼻水ぬ皮張い」は「干乾びた鼻水が鼻穴周辺に張り付く事」。
例文C「鼻しぴらあ」は「鼻ぺしゃ」。「鼻開ちゅん」は「得意げになる」。「鼻ぬ上迄這ゆん」は「どこ迄も付け上がる」。
例文E「鼻毛」、「鼻血」、「鼻紙」は読んでじの如くである。
例文F「鼻物(はなむに、はなむぬ)言(い)い」は「鼻にかかったような喋り声又は喋り方」。「ふんでえ」(我儘)はここでは「甘え(声)」。
例文G「鼻ぬ先」は「目前」の意味で「目(みい)ぬ前(めえ)」と同じ。場所にも時間にも言います。「鼻ぶっくぁ」は「鼻の盛り上がった部分」で鼻の卑称でもあります。
例文H「鼻無」は「鼻が欠けて無いもの」で「鼻欠き」も同じ意味。「鼻びらあ」は「鼻が押し潰された様に平たい鼻」。
  
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(鼻しち、鼻ぬ先、鼻開ち、鼻ぬ上迄這おゆん、鼻びらあ)

@ 目(みい)ぬ前(めえ)んかい在(あ)しん分(わ)かんでえ、いふぃえ、違(ちが)てえ居(をぅ、う)らに。
A 引(ふぃ、ひ)ちなてぃ、ようそうちいねえ、たった、あめえとおん
B 彼(うり・)え褒(ふ)みらったれえ、高(たか)うちゃがいけえし、可笑(うか)さどぅ多(うふ)さる。
C 鼻(はな)しぴらあやてぃん、美(ちゅ)ら影(かあぎ)や、まんどおん。
D 咳気(げえち)から強病(ちゅうびょう)んかいなゆる事(くとぅ)んあくとぅ、たんきみそおり。
答え:
@ 鼻ぬ先。
A 鼻ぬ上迄這おとおん。
B 鼻開ち。
C 鼻びらあ。
D 鼻しち。

日本語意訳
@直ぐ近くにあるのに気付かないとは、可笑しいではないか。
A引き下がって、放っておいたら、ますます、付け上がっている
B彼は褒められたら得意気になってしまい、滑稽極まりない。
C鼻ぺしゃであっても美人は多い。
D風邪から重病になる事もあるので、身体をお大事になさい。
参:「鼻(はな)欠(か)き猿(ざある)ぬ全猿笑(またざあるわら)ゆん」は、諺で「自分の欠点を知らずに、完全な者を笑う」という意味になります。



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