2015年10月21日

第146講「自・胴」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 彼(あり)え、自(どぅう)考(かんげ)えぬ強(ちゅう)さぬ、却(けえ)てえ、自明(どぅうあ)かがいする筈(はじ)やさ。
A 自崇(どぅうあが)みいとぅ自敬(どぅううや)えや、いいくる同(い)ぬ意味(ちむええ)どぅやる。
B 彼(あり)が話(はなしい)聞(ち)ちいねえ自(どぅう)ぬ上(ゐい)ぬ事(くとぅ)ねえし、自当(どぅうあ)たいすん。
C 自前(どぅうめえ)や自(どぅう)し、しわんでぃち、自(どぅう)転(くる)びしみらっとおん
D 今(なま)、自(どぅう)勝手(がってぃ)しいねえ、後々(あとぅあとぅ)、自腹(どぅうはら)痛(や)ますんどお。
E 自守(どぅうむ)いそおる童(わらび)ぬ、自一人物(どぅうちゅいむに)言(い)いし遊(あし)どおん。
F 自一人者(どぅうちゅいむん)自一分(どぅういちぶん)ぬ暮(く)らし(せ)え見(ん)ちん、心(うら)ちらさぎさん。
G 自(どぅう)縋(しが)りするっ人(ちゅ)お、いいくる自煩(どぅうわちゃ)れえそおん。

日本語

@ 彼は独断し過ぎるから、逆に自己曝露するかもしれない。
A 自惚れ自尊は、だいたい同じ意味である。
B 彼の話を聞くと我が事のように、心に突き刺さる。
C 自分の事は自分でやれと、一人でほったらかされている
D 今、自分勝手にすると。後で臍を噛むぞ。
E 子守役の無い子供が、独り言して遊んでいる。
F 独身者一人暮らしは、見ても、心寂しそうである。
G 自分頼みする人は、大抵、自分の手を煩わしている。

【解説】
自分や(自分の)身体を表わす「どぅう」は、「胴」が当てられるが一般的(普通)ですが、本書の場合は、基本的には、(精神的)「自分」を表わす場合は「自」を、身体を表わす場合は「胴」を当てていますので要注意です。但し、「自」「胴」の何れとも判別し難い場合は、何れでも良しとしています。

例文@「自考え」は「独断」、「自分の考え」。「自明かがい」は「自分のした事を自ら曝露する事」の意味です。
例文A「自崇み」は「自惚れ」。「自敬え」は「自尊」又「自分を偉いかのように思う事」です。
例文B「自ぬ上」は「(自分の)身の上」。「自当たい」は「(自分の)心に強く当たる事」。「内当たい」に似ます。
例文C「自前」は「自分がすべき事」。「自転び」は「自ら転ぶ事」の他に「ひとり放置される事」の意味にもなります。
例文D「自勝手」は文字通り「自分勝手」。「自腹痛ますん」は「悔しい思いをして苦しむ」の意味です。
例文E「自守い」は「(子供が)一人遊びする事」。「自一人物言い」は「独り言」。
例文F「自一人者」は「独身、一人身」。「自一分ぬ暮らし」は「一人だけの暮らし」。
例文G「自縋り」は「自己依存、全て自分が判断して行動する事」。「自煩え」は「面倒な事でも自分でやり通す事」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(自当たい、自崇み、自腹痛まちならん、自一分ぬ暮らし、自縋りし)

@ 自(どぅう)一人(ちゅい)暮(ぐ)らし(せ)え、何(ぬう)んうけえ思(うみ)いさんてぃん済(し)むん。
A あぬっ人(ちゅ)お、自(どぅう)びけえ、頼(たる)がきてぃ、人(ちゅ)お頼(たる)がきらん。
B 人(ちゅ)てぃらむぬお、自(どぅう)敬(うやめ)えする肝(ちむ)ぬありわる、前(めえ)あがちんないる。
C あぬばす、試験(しきん)受(う)きとおれえんでぃ、腸苦(わたぐり)さぬならん
D 煙草(たばく)吹(ふ)ち、病(やんめえ)なたんでぃぬ話(ばなしい)や、我(わ)ぬんかいん内当(うちあ)たいさん
答え:
@ 自一分ぬ暮らし。
A 自縋りし。
B 自崇み。
C 自腹痛まちならん。
D 自当たい。

日本語訳
@一人暮らしは何の気兼ねもいらない。
Aあの人は、自分だけを頼りにして人に頼らない。
B人たるものは、自尊心があればこそ、前進できる。
Cあの時、試験を受けておけば良かったのにと、後悔して悩んでいる。
Dタバコを吸って、病気になるという話しは、本当に、心に突き刺さる。*「我ぬんかいん」=「我にんかいん」。

2015年09月18日

第145講「胸」に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 父(すう)ぬたきちきとおんでぃぬ話聞(はなしち)ち、胸樽(んにたあら)割(わ)りとおん
A 夫旅(うとぅたび)んかい遣(や)らちゃるむぬやしが、胸(んに)ぬわさみちゅん。
B 大水(ううみじ)なかい家(やあ)ぬ流(なが)さったんでぃぬ話や実(じゅん)に胸焼(んにや)ちゅん
C ハブんかい走(は)い行逢(いちゃ)いねえ、誰(たあ)やてぃん胸冷(んにふぃ)じゅらすん
D 強(ちゅうし)ばあ台風(ううかじ)ぬ来(ち)ちゅうるばす(お)お、胸(んに)じいら入(い)ゆさ。
E 女(ゐなぐ)ん子(ぐぁ)あ新衣(みいじん)、着(ち)い欲(ぶ)さし、胸(んに)だくみちそおたん
F 人(ちゅ)ぬ前(めえ)んじ三味線(さんしん)弾(ふぃ)ちゅるばあや、胸(んに)ぎとぅぐとぅすん。
G 嫡子(ちゃくし)ぬ新嫁(みいゆみ)え如何(ちゃ)ぬ様(ゆう)な女(ゐなぐ)がやら、胸(んに)どんどんそおん。

日本語

@ 父が危篤だという話を聞いて胸も潰れる思いである
A 夫を旅に行かせたのだが、胸騒ぎがする
B 洪水で家が流されたという話は本当に心を痛める
C ハブに遭遇すれば、誰でも、はっとする(肝を冷やす)
D 強い台風が来るときは心労するよ。
E 女の子は新品の服を着たがって胸をときめかしていた
F 人前で三味線を弾く場合は、胸がどきどきする。
G 長男の嫁はどんな女なのか、胸がどきどきしている。

【解説】
 胸語は「驚き」や「不幸」や喜びに遭遇したとき身体に受ける衝撃を表現するものが多いです。「胸口(みぞぐち)」、「胸毛(んにぎい)(むなげ)」等は略します。

例文@「胸樽割りゆん」は、胸を樽に例えて「心配で胸が潰れる思いがする」意味です。
例文A「胸ぬわさみちゅん」は「胸騒ぎがする」の意味で、「胸ぬ」と「わさみちゅん」からなる句です。「胸わさわさ(あ)す」とも言います。「わさわさ」は「ざわめく」を表わす擬態語です。類語に「肝わさわさあ」等があります。
例文B「胸焼ちゅん」は「(自他問わず)危険に遭遇した時に焦ったり、苦慮したりする」の意味です。
例文C「胸冷らさん」は「はっとする」、「肝を冷やす」等の意味。「胸冷らさすん」はその動的表現です。
例文D「台風」は「ううかじ」とも「てえふう」とも言います。「胸じいら」は「心労」。「しいら」は「災難」や「厄介な病気」等の意味です。「しいら入(い)ゆん」や「しいらぬ多(うふ)さん」等と使います。
例文E「胸だくみちすん」は「胸」が「だくめく」という意味で、(良い事等に対して)「ときめく」の意味になります。
例文F「胸ぎとぅぎとぅ」は、(期待と不安が入り混じって)「心臓がどきどきする様」の意味。
例文G「胸どんどん」も前例文の「胸ぎとぅぐとぅ」と同じ意味です。「胸だくだく」とも言います。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(胸冷じゅらちゃん、胸ぎとぅぎとぅ、胸どぅ焼ちゅる、胸じいら入ゆる)

@ ふだがなし、車(くるま)ぬ突(ち)ち当(あ)たらんでぃさあに、諸毛立(ぶりぎいだ)ちゃん
A 狂(ふう)り遊(あし)びびけんそおる子(くぁ)ぬ居(をぅ)れえ、親(うや)あ苦労(くろう)する筈(はじ)。
B でえじな、胸だくだくなやあに、血圧(きちあち)ぬ上(あ)がとおさ。
C うんな事(くと)しん、不為(ふだみ)なゆんでぃ思(うみ)いねえ、肝(ちむ)ん肝ならん
D 戦世(いくさゆ)ぬ事(くとぅ)、思(うび)い出(ん)じゃしいねえ、実(じゅん)に肝(ちむ)どぅ抱(だ)ちゅる
答え:
@ 胸冷らちゃん。
A 胸じいら入ゆる。
B 胸ぎとぅぎとぅ。
C 胸樽割りゆん。
D 胸どぅ焼ちゅる。

日本語訳
@すんでの所で車が衝突しそうになってひやっとした。
A遊び呆けている子を持つ親は苦労するだろう。
Bとてもどきどきして血圧が上がったよ。
Cそんな事をしても、(将来的に)、為にならないと思うと、胸も押し潰される思いだ。
D戦争の事を思い出すと、本当に胸が痛む。

2015年09月08日

第144講「口」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ 沖縄人(うちなあんちゅ)ぬ口々(くちぐち)え諸(むる)、うちなあ口(ぐち)やしえ、ましやしがる。
A じいかじん聞(ち)かん童(わら)ぬ口(ぐち)ぬ分(わ)からな口髪(ぐちからじ)ぬ病(や)むさ。
B 口引(くちふぃ)かりいるあたい、口(くち)とぅ斗掻(とうか)ちぬ暮(く)らしどぅそおる。
C 口(くち)ぬ上辺(うゎあび)びけんぬ口車(くちぐるま)んかい、乗(ぬ)しららんし(せ)えまし。
D 悪(や)な口(ぐち)し、ちゃっさ口敵(くちかな)てぃん、親(うや)んかいや敵(かな)あん。
E 口振(くちふ)てぃにいねえ、彼(あり)ぬ口ぬ悪(わ)っさしん肝内(ちむうち)ん分(わ)かゆん。
F はか口(ぐち)開(あ)ゆるばすぬ方角(ほうがく)お、今(なま)ぬっ人(ちゅ)お肝(ちむ)に掛(か)きらん。
G 女(ゐなぐ)お口(くち)吸(す)うゆる前(めえ)に口濯(くちゆし)ぎんでぃ言(い)ち口尖(くちとぅが)らちょおん
H 良(い)い新口(みいぐち)んかいなゆんねえ、赤口(あかぐちゃ)あ前(めえ)んかい祈(いぬ)たん。

日本語

@ 沖縄人の言葉は、すべて、沖縄であれば良いのに。
A 聞き分けの無い子供の話が分からず怒り疲れるよ。
B 食事を減らされる程、ぎりぎりの生活しかしてない。
C 上辺だけ口車(くちぐるま)に乗せられない方がよい。
D 口汚く、いくら親に口応えしても、親には敵わん。
E 言わせてみれば、彼の口の悪いのも内心も分かる。
F 鍬入れの方角については現代人は気にかけない。
G 女はキスする前に嗽(うがい)をしろと言って不機嫌である
H 商売初めが上手くいくよう、火ヌ神様に祈った。

【解説】
例文@「口々」は「口々」の意味の他、「みんなの喋る言葉」と言う意味もあります。「ましやしがる」は「良いけど…」の意味。「る」は強調を表わす「どぅ」の清音。「(地域名、国名)口」は「(地域、国)語」。例:大和口(やまとぅぐち)=日本語。
例文A「口ぬ分からん」は「言葉が分からない」又は「言葉が通じない」等の意味です。「口髪ぬ痛(病)むん」は肝要的に「言い疲れて頭痛がする」等の意味となります。
例文B「口引ちゅん」は「食べ物を(他人の為に)減らす」の意味で「口引かりゆん」はその受身文です。「口と斗掻ち」は「斗掻きで掻き込むだけの食事しかできない生活の事」。
例文C「口ぬ上辺」は「口先」と同じ意味です。「口車」は日本語のそれと同じ意味です。
例文D「悪な口」は「口汚い事」。「口敵ゆん」は「口が達者である」と「(年配に)口答えをする」の意味があります。例文E「口振ゆん」は「(相手の意向を伺う為に)それとなく言わしてみる」の意味。「口ぬ悪っさん」は「口が悪い」。
例文F「はか口」は「鍬入れをする最初の場所」の意味ですが、転じて「仕事初め」。
例文G「口吸うゆん」は「キスをする」。「口濯じゅん」は「嗽をする」。「口尖らすん」は「ご機嫌斜めである」。
例文H「新口」は「商売の口開け」。「赤口あ前」は「火(ふぃ)ヌ神(かん)」の別称で文語で口語では使いません。

【応用問題】例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(悪な口、口ぬ分からな、口ぬ敵ゆしが、口尖らちょおん、口髪ぬどおん)

@ ウランダーぬ言葉(くとぅば)ぬ分からな、しいら入(い)っちょおん。
A 童(わらん)ん達(ちゃあ)、呪(ぬれ)え懲(くる)すんでぃち、頭病(ちぶるや)んさい、口(くち)だっさなとおん。
B 童(わらび)え、猫口(まやあぐち)なやあに熱(あち)こうこう食(か)むし、嫌々(んぱんぱ)そおん。
C 良(い)い事(くとぅ)ん
悪(や)な叫(あ)びいしいねえ、悪(や)な事(くとぅ)ねえしどぅ聞(ち)かりいる。
D 彼(あり)え、でえじな、
弁口(びんくう)'''やしが、弁護士(ぶんぐし)がやら。
答え:
@ 口ぬ分からな。
A 口髪ぬ病どおん。
B 口尖らちょおしん。
C 悪な口。
D 口ぬ敵ゆしが。

日本語意訳
@外人の言葉が分からず困っている。
A子供等を叱りつけようとして頭が痛い。
B子供は、猫舌なので、熱いものをたべないと、嫌がっている。
C良い事でも口汚く言えば悪い事の様にしか聞えない。
D彼はとても雄弁だが弁護士なのか。




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