2015年11月28日

第149講「自・胴」に関する慣用句・言い回しW

うちなあぐち

@ 甘(あま)物上戸(むんじょうぐ)うぬ胴保(どぅうたぶ)やあや胴回(どぅうまあ)どぅぬ肥(くぇ)えとおん。
A 胴(どぅう)持(む)ち尽(ず)く良(ゆ)たされえ、胴(どぅう)持(む)ち破(やん)じゅる事(くとぅ)ん無(ね)えらん。
B 胴(どぅう)持(む)ちない、ちゃんとぅすし(せ)え、胴(どぅう)易(やし)いむぬ(の)おあらに。
C 棚(だな)んかい飾(かり)らっとおし(せ)え諸(むる)、我(わあ)自(どぅう)くる作(づく)いせえしやさ。
D 今(なま)ぬまあどお、自破(どぅうやん)じさあに、面目(みんむく)ぬけえ倒(とお)りとおん。
E 人(ちゅ)すぐゆんでぃち転(くる)でぃ、却(けえ)てえ、胴憊懶(どぅうべえれえ)えなたん。
F 業失(わざうし)なたれえ、胴(どぅう)、持(む)ちぐりさぬ、ふしがらん。
G やてぃ家(やあ)んじえ、胴持(どぅうむ)ちぐりさぬ、仕口(しくち)かめいが行かな。

日本語

@ 甘物好きの怠け者腹回りが太っている。
A 暮らし方がちゃんとしていれば、身を持ち崩す事もない。
B 立ち振る舞いをちゃんとするのは簡単な事ではないか。
C 棚に飾ってあるのは、全部、私の自作のものだよ。
D この度は、自分の失敗で面目が潰れた。
E 人を殴ろうとして転び、逆に自分が怪我した。
F 失業したら、体を持て余してどうしようもない。
G だから家には居づらいので、仕事を探しに行こうか。
 
解説】
 我胴(わどぅ)(わたし、文語)、美御胴(みゅんじゅ、ぬんじゅ)(あなたさま)等は慣用句というより単語の類であり、この講では略します。

例文@「胴保ゆん」は「体を動かさず怠ける」。「胴保やあ」はその名詞形。「胴周どぅ(胴周る)」は「胴囲」の事。
例文A「胴持ちずく」は「生活の仕方」、「暮らし方」、「生業」等の意味で、「-尽く」は日本語に同じ。「胴持ち破じゅん」は「堕落する」、「身を持ち崩す」等の意味。
例文B「胴持ちない」は「品行」、「立ち振る舞い」等。「胴易いむん」は47講の「胴易っさん」の名詞で「胴易しい」とも言います。
例文C「自くる作い」は「自作(のもの)」。
例文D「自破じ」は「自分でしでかした失敗」。「胴」。
例文E「胴憊懶」の自分で自分を襲う事」だが「他人に危害を加える積りが逆に自分が怪我する事」の意味。「ふぇえれえ」は唐音で「追い剥ぎ」の意味。
例文F「胴、持ちぐりさん」は「体」を目的語とする「持ち難い」という文。ここでは「身体を持て余す」の意味。次の例文との違いに注意しましょう。「胴」と「持ちぐりさん」は別々に発音します。
例文G「胴持ちぐりさん」は「身持ち悪い」の意味の語で、ここでは「居心地が悪く辛い」等の意味です。前の例文との違いに注意しましょう。「胴持ちぐりさん」と一気に発音します。

応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(胴保いねえ、自破じ、自持ち尽くぬ良たさしが、胴持ちぐりさそおん、胴易いやあらんがやあ)

@ 試験(しきん)、掛(か)からんたくとぅんでぃち、彼(あり)え、異風(いふう)なあ思(うむ)とおん
A 体(からた)ぬ為(たみ)んでぃち、胴(どぅう)あたらさしいねえ、却(けえ)てえ、病(やんめえ)どぅないる。
B 今(なま)ぬ世(ゆう)や、立(た)ち易(や)っさしが、諸(むる)、銭事(じんぐとぅ)けえなてぃ。
C 沖縄語(うちなあぐち)やか英語(いんじりいぐち)習(なら)ゆしえ、胴(どぅう)易(や)しいやあらんがやあ
D 彼(あり)がむぬ(の)お、自(どぅう)ぬせえる事(くとぅ)どぅやるむぬ、よおしょうけえ済(し)むさ。
答え:
@ 胴持ちぐりさそおん。
A 胴保いねえ。
B 胴持ち尽くぬ良たさしが。
C 胴易いむんやあらんがやあ。
D 自破じ。

日本語訳
@受験に受からなかったからといって、彼は居心地悪そうにしている。
A健康の為にと、体を大事にすると却って病気になる。
B現代は暮らしやすいが、全て金銭事の世界になってしまって(いる)。
C沖縄語より英語を習うのが容易いのではないか。
D彼のやったことは、自分の(失敗の)所為なので、放っておけば良いよ。

2015年11月22日

第148講「自・胴」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ くぬ前(めえ)、買(こ)うたる胴(どぅう)しぶいや、我胴抱(わあどぅうだ)ちょおさ。
A 我(わん)ねえ胴重(どぅうん)さぬ、胴(どぅう)振(ぶ)い漕(く)うじ胴唸(どぅうにい)そおん
B 胴売(どぅうう)いそおたる人(ちゅ)ぬ胴代(どぅうしる)払(はら)てぃ、胴(どぅう)ゆふぃとおん。
C 父(すう)や年取(とぅしとぅ)てぃん、胴(どっう)がな敵(かな)てぃ胴軽(どぅうが)っさんあん。
D 母(あんまあ)や胴(どぅう)じいら入(い)りてぃ、夜(ゆる)お胴唸(どぅうにい)かまにいそおん
E ちゃあ、自一人物(どぅうちゅいむ)言(に)いし、自(どぅう)一人(ちゅい)笑(われ)えすし(せ)え違(ちが)とおる筈(はじ)。
F 我(わん)ねえ自(どぅう)一人(ちゅい)転(くる)びびけんし、胴(どぅう)冷(ふぃず)やあけえなとん。
G 自(どぅう)なあ事(くと)お自(どぅう)なあくるすくとぅ、御胴(うんじゅ)なあや何(ぬう)んすな。

日本語

@ この前買った肌着は、私にぴったりだよ。
A 私は病気で体が重くて、身体を揺すって呻いている
B 身売りしていた人が身代金を払い、自由の身になった
C 父は年取っても、健康で身軽でもある。
D 母は体を壊し、夜は呻いて紛らわしている。
E いつも、独り言をし、一人笑いしている奴は頭が変かも。
F 私は一人寝ばかりして、冷え性になってしまった。
G 私達の事は私達自身でやるから貴方達は何もしないで。

【解説】
例文@「胴しぶい」は「肌着」で「肌しぶい」と同じ。「胴抱ちゅん」は「家に引き籠る」という意味もありますが、ここでは「身体にぴったり」という意味。否定文の「胴抱かん」は「だぶだぶである」という意味。

例文A「胴重さん」は「病気等で体が重たく感じる」。「胴振い」は「身体を揺り動かす事」。「胴唸い」は「唸り呻く事」。「胴唸いかまにい」は「苦痛を呻き声で紛らわす様」です。
例文B「胴代」は「胴がねえ」とも言います。「胴ゆぃふぃゆん」は「身請けしている」或いは「自由の身になる」。
例文C「胴がな」は「胴から」とも言います。「胴がな敵ゆん」で「体が丈夫である」。「胴軽っさん」は「身が軽い」。「胴軽っさんあん」は「胴軽っさ」と並列を表わす助詞「ん(も)」と動詞「あん(ある)」からなる文です。
例文D「胴じいら入いりゆん」は「体に難(病気、怪我等)が入る」の意味で、「しいら」は「災難」、「難」等の意味。「胴唸かまにい」の「かまにい」は例文Aの「胴唸」から発展して「唸る事によって痛さや辛さを紛らわす事」の意味。
例文E「違ゆん」はここでは「(頭が)変になる」、「おかしくなる」の意味。「違ゆん(cigajun)」は『沖縄語辞典』には例文にあって、本文にないので記載漏れと思われます。いずれにしても、「」
例文F「自一人転び」は「一人寝」。「胴冷やあ」は「(体の)冷え性」。(頭などが)おかしい」という意味の解説はありません。
例文G「自なあ」「自」の複数形。「自なあくる」は「自分達自信(で)」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(胴軽っさ、胴じいら入ゆる、胴抱かん、胴重さん、胴抱ちぇえ居らな)

@ 御主前(うしゅめえ、うすめえ)や、年取(とぅしとぅ)てぃ、家籠(やあぐ)まいびけんそおん。
A 汝衣(やあち)のお、わぶわぶし、見(ん)ちん風儀(ふうじ)ん無(ね)えらん。
B 今(なま)ぬっ人(ちゅ)お、働(はたらち)ち強(じゅう)さぬ、病(やんめえ)なゆるっ人(ちゅ)ぬまんどおん。
C いいくる、月曜日(ぎちゆうび)ねえ、あんまさぬ、動(んじゅ)ちはいんならん
D あぬ二才(にいせえ)や尻軽(ちびが)さ働(はたらち)ち取(とぅ)らすくとぅ、言(い)い付(ち)き易(や)っさん。
答え:
@ 胴抱ちょおん。
A 胴抱ちぇえ居らな。
B 胴じいら入ゆる。
C 胴重さん。
D 胴軽っさ。

日本語訳
@お爺さんは年取って、家に籠もりきりだ。
A君の服はだぶだぶで、みっともない。
B現代人は働き過ぎて、病気になる人が多い。
C大抵、月曜日には気が重くて動けない。
Dあの青年は気軽に働いてくれるので指示しやすい。

2015年11月13日

第147講「自・胴」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 大人(うふっちゅ)ないねえ、自(どぅう)ぬ力(ちから)し、自足(どぅうあ)掻(が)ちさんでえならん。
A 胴(どぅう)持(む)ち倒(とお)ちゃし自故(どぅうゆい)どぅやくとぅ、自(どぅう)くる外(はん)し。
B どぅく自高(どぅうたか)びしいねえ自(どぅう)喰(くぇ)え事(ぐとぅ)なゆんどお。
C 自一人者(どぅうちゅいむん)ぬ彼(あり)え自(どぅう)賄(まかね)えんし、自雑色(どぅうぞおしち)んそおいぎさん。
D 自(どぅう)なあ物語(むぬがたい)さがなあ、勉強(びんちょう)すし(せ)え胴苦(どぅうぐり)さる筈(はじ)。
E 自飯(どぅうばん)えやか胴身(どぅうみ)しがら空(ん)な胴(どぅう)'''し行(い)ちゅしえまし。
F 胴柔(どぅうやふぁ)らあ自(どぅう)一人(ちゅい)歩(あ)っちえ、胴(どぅう)易(や)っさあ無(ね)えらん。
G 仕事(しくち)とぅじみいねえ、なあ胴々(どぅうどぅう)し、胴骨(どぅうぶに)直(のお)しし呉(くぃ)り。

日本語

@ 大人になったら、自力自活しなけらばならない。さ。
A 体を壊したのも自分が招いた事だし、自身で解決して。
B あまりに、威張り高ぶると自縄自縛する事になるよ。
C 独身の彼は自弁もして、自炊もしているようである。
D 銘々が勝手な話をしながら勉強するのは難しいだろう。
E 弁当持参より、身一つ何も持たずに行くのがよい。
F 病弱者の独り歩きは、簡単ではない。
G 仕事を終えたら、各自で勝手に骨休めをしてくれ。

【解説】
例文@「自足掻ち」は「自ら働き暮らす事」。「足掻ちゅん」は「(肉体)労働する」、「捗る」、「家畜が成長する」等。
例文A「自故」は「自らの作った原因」の意味の他「自業自得」の意味もあります。
例文A「自高び」は「威張って尊大になる事」。「自喰え事」は「自滅する様な事」。
例文C「自賄え」は「食費等を自己負担する事」。「自雑色」は「自炊」。「雑色(ぞうしち)」は「炊事」。
例文D「自なあ物語」は「銘々が勝手に私語をする事」。「胴苦さん」は「心苦しい」、「恐縮している」、「難しい」等。
例文E「自飯めえ」は「弁当(食物)持参」。「持ち飯めえ」と同じ。「胴身しがら」は「身しがら」と同じで「身一つ」。
例文F「胴柔らあ」は「胴柔らさん(病弱である)」の名詞形。「柔らあ」も同じ意味。「胴易っさん」は「容易い(簡単である)」、「楽である」、「安らかである」等の意味。派生語には「胴易い」(簡単にできるもの)、「胴易いむん」(簡単なもの、易しいもの)、「胴易ってえん」(簡単に、容易く)等があります。
例文G「なあ胴々」は「各自(勝手に)」。「胴骨」は「体の骨」の意味。但し「胴骨痛むん」は主には「筋肉痛」の意味。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(なあ胴々、空な胴、胴痛むん、自一人歩っちそおん、胴苦さん)

@ 沖縄語(うちなあぐち)え、滅(ふる)ぶんでぃぬ話(はなしい)ぬ実(じゅん)にぎさし、勝手(かってぃ)に広(ふぃる)まとおん
A 沖縄(うちなあ)語習(ぐちなら)ゆし(せ)え、文言(むんぐん)ぬいきらさくとぅ、実(じゅん)に難(むちか)さん
B 後々(あとぅあとぅ)ぬ事(くと)お、なあ銘々(めえめえ)し、決(ち)わみりわるやる。
C 足掻(あが)からん足掻ちしいねえ、後(あとぅ)からあまくま痛(や)むんどお
D 今日(ちゅう)やぬちゃあしいやくとぅ、身(み)しがらし(せ)え、行(い)からんどお。
答え:
@ 自一人歩っちそおん。
A 胴苦さん。
B なあ胴々。
C 胴骨痛むさ。
D 空な胴。

日本語意訳
@沖縄語は滅びるという話が実しやかに一人歩きしている。
A沖縄語を習うのは、文章が少ないから確かに難しい。
B将来の事は各自で決めるべきだ。
C嫌々しながら、仕事をしたら、後で筋肉通がするぞ。
D今日は持ち寄り宴会だから、(何も持たず)体一つだけでは参加できないよ。




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