2016年01月26日

第152講「手」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 意地(いじ)ぬ出(ん)じらあ手引(てぃいひ、てぃいふぃ)き手ぬ出じらあ、意地引き。
A 幾(いく)けぬん手掴(てぃいじかあ)んされえ、なあ、手痛(てぃいざ)けえそおん
B 親(をぅや)あ手近(てぃいぢか)さくとぅ、いいくる手(てぃい)壊(じ)きしいが行(い)ちん。
C 手(てぃ)んちゃまあ手懐(てぃじ)きゆし(せ)え、手煩(てぃいわちゃ)れえ事(ぐとぅ)やん
D 手(てぃ)ぬ技(ざ)し、儲(もう)きてぃ、手回(てぃまわ)しぬ行(ん)じょおん。
E 片(かた)手(でぃい)無(む)っこうや、手小(てぃいぐぁあ)びけんし、手押(てぅいう)さ合(あ)ちん済(し)むん。
F 手墨(てぃしみ)学問(がくむん)しん、手(てぃい)びけえ使(ちか)ゆるっ人(ちゅ)お何(ぬう)んならん。
G 手平(てぅんだ)ぬうっぴやてぃん、畑(はたき)え、手(てぃい)から放(はな)する'''むぬ(の)おあらん。

日本語

@ 怒ったら、手を出すな手を出したら、怒りを収めよ。
A 何回も手掴みしたら、もう、手首が痛くなってしまった'''。
B 親は近所だから、よく面倒見に行く。
C 悪戯小僧は手懐けるのは、手を煩わす
D 手芸で、嫁せいで、生活が楽になってきた
E 片手を失った者は、片腕だけで合掌しても良い。
F 学問をしても、手をぶらぶらさせるだけの人は役立たん。
G 狭くて小さくても、畑は手放すものではない。

【解説】
「手」の慣用句・言い回しは地方独自のものがあったり、変意していたりする事がありますので要注意です。

例文@糸満の諺です。「意地」は「意地」等の他も「怒り」の意味あります。「手引ちゅん」は「手を出さない」。
例文A「手掴ん」は「手掴み」。「手業」は「手(先)でする仕事」。「手痛」は「手首の痛み」。
例文B「手近さん」は「身近にいる」、「表通りに面している」等の意味。「手懐きゆん」は「よく世話する」、「手懐ける。
例文C「手んちゃあま」は「手でする悪戯」で「手んちゃあまあ」は「手悪戯する者」。「手煩れえ」は「手を煩わす事」。ここで「手懐きゆん」は、例文Bと異なり、日本語と同じく「手懐ける」の意味です。、
例文D「手ぬ技」は「手芸、刺繍」等の意味。「手回し」は日本語の「手回し」の他、「暮らし向きが良くなる(ゆとりが出る)事」の意味もあります。
例文E「手無っこう」は「手が切れるなどして無い者」で「手無っくう」、「手無おかあ」とも言います。「手小」は「片腕」の意味ですが、多くは「片腕(かたうでぃ)」を使います。「手押合あすん」は「手を合わせる」、「合掌する」の意味で、「手押し上ぎゆん」と言う地方もあります。
例文F「手使ゆん」は「空手を使う」や「空手の演舞をする」から転じて、「人が働いているそばで、ただ手をぶらぶらさせているだけ何もしない」の意味ともなります。但し、後者の場合は、多くは冗談で使います。
例文G「手平」は「掌」。「手平ぬうっぴ」は「とても狭いもの」。「手から放すん」は「大事なものを手放す」の意味。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(手煩れえ事、手痛し、手んちゃま、手懐ゆしえ、手近い所お、手無っくう)

@ 大道(うふみち)え、車(くるま)ぬうかあさくとぅ、良(ゆ)うし。
A がんまりしいねえ、婆前(はあめえ)なかい、呪(ぬら)ありやびいんどお。
B 戦(いくさ)んじ、手(てぃい)無(もう)なとおる人(ちゅ)んまんどおいびいん。
C 手(てぃい)ぬ首(くび)、痛(や)まち、三味線(さんしん)ぬん、弾(ふぃ、ひ)ちゆさんなとおん。
D 御主前(うすめえ、うしゅめえ)、頓(とぅん)着(ぢゃく)すし(せ)え、何(ぬう)ん手乱(てぃいんじゃ)り(れ)えあらんさ。
答え:
@ 手近さる所お。
A 手んちゃま。
B 手無っくう。
C 手痛し。
D 手懐きゆし、手煩れえ事お。

日本語意訳
@表通りは車が危ないので気を付けて。
A悪戯をするとお婆さんに怒られますよ。
B戦争で腕を失った人も多いです。C手首を痛めて、三味線も弾けなくなった。
Dお爺さんの世話をするのは、何も面倒ではないよ。

2015年12月28日

第151講「手」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 手(てぃい)ぶらありやたしが、子(くぁ)ぬ手(てぃい)ぬ生(み)いてぃ来(ち)、楽(らく)やん。
A 手下(てぃいしちゃ)んかいんやらわん、手喰(てぃいくぁあ)あ足喰(ふぃさくぁ)あすしえあらん。
B 手上(てぃゐい)やるっ人(ちゅ)、手(てぃい)うせえいし、手(てぃい)ねえてえならん。
C 手(てぃ)早(べえ)さてぃん、手(てぃい)鈍(にい)さてぃん、手荒(てぃいあら)くお、さんけえ。
D 手足(てぃいふぃさ)倒(どお)りそおくとぅ手分(てぃわ)きさあに手(てぃ)がねえし取(とぅ)らし。
E 切(てぃいち)り包丁(ぼうちゅう)そおたしが、手油出(てぃいあんだん)じゃち如何(ちゃあ)がななたん。
F 明日(あちゃ)ぬ事(くとぅ)なかい、手(てぃい)まあまあし、手(てぃい)上(かみ)とおん
G 手仕事(てぃいしぐとぅ)んでぃる思(うむ)とおたるむぬ手乱(てぃいんじゃ)り仕事(しぐとぅ)どぅやる。

日本語

@ 手不足だったが、子が働けるようになってきて楽だ。
A 身分の低い者に対してでも、喰ってかかるものではない。
B 手腕が勝る者甘くみて手を出してはいけない。
C 仕事が早くても遅くても、手荒くはするな。
D てんてこまいしているから手分けし手伝いしてくれ。
E 料理材料が少なかったが、念入りにして何とかなった。
F 明日の事で準備不足でうろたえ頭をかかえている
G 簡単な手先仕事だと思っていのに、手を煩わす仕事だ。
 
【解説】「手紙(てぃがみ)」、「手掛(てぃがか)かい」、「手助(てぃだし)き」、「手柄(てぅがら)」、「手心(てぃぐくる)」、「手並(てぃな)み」、「手真似(てぃまに)」、「手間賃(てぃまちん)」等、日本語遣いにほぼ同じ語句や「相手(ええてぃ)」、「勝手(かってぃ)」、「番手(ばんてぃ)(番人)」等のように単に単語の一部と思われる語については省略させていだきます。

文例@「手ぶらあり」は「手不足(てぃいぶすく)」とも言います。「手ぬ生いゆん」は「子供が大きくなって働けるようになる」意味。
文例A「手下」は「手下(てした)」からの転意で自分より下の者」。「手喰あ足喰あすん」は「いちいち食ってかかる」。
文例B「手上」は「自分より腕が上である事」。「手うせえい」は「相手も見縊る事」。「うせえゆん」は「あなどる、馬鹿にする」の意味。「手ねえゆん」は単に「手を差し出す」意味の他、「手を出す、殴る」の意味にもなります。
文例C「手早さん」は「手が早い」の他、「仕事が早い」、「短気で直ぐ手を出す」等で、「手鈍いさん」は「手が遅い」、「仕事が遅い」等の意味です。「手荒さん」は「やる事が荒っぽい」の意味です。
文例D「手足倒り」は「手足が倒れるほど忙しい様」。「手がねえ」は「手助け、手伝い」の意味。
例文E「手切り包丁」は「手さえ切りそうなほど材料が少なく調理に苦労する事」。「手油」は「念入りに料理する」。
例文F「手まあまあ」は「手が空回りする様」であり、準備不足等で「うろたえる様」。「手上ゆん」は「(苦悩して)手て頭を抱え込む」意味。「かみゆん」は「頭に物を乗せる」、「(闘牛等において角で)突き上げる」、「頂く」等の意味。
例文G「手仕事」は「手先で出来る簡単な仕事」。「手乱り」は「手を汚すような仕事」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(手がねえ、手仕事、手早く、手まあまあそおた、手喰あ足喰あ、手早さくとぅ)

@ 胴(どぅう)易(やし)い仕事(しぐとぅ)お、とぅめえいぐりむぬやさ。
A 萩倒(ううじとお)しぬばあや、加勢(かしい)しいが、行(い)かんでえならん。
B 支度(したく)んしえ居(をぅ)らな慌(あわ)てぃとおたしが、さあらないさん。
C 短気(たんちゃ)あや、直(し)ぐ手(てぃい)ねえゆくとぅ、心得(くくるい)り。
D いちゃんだん、くじい物言(むに)いさってぃ、手上(てぃいかみ)たん。
答え:
@ 手仕事。
A 手がねえ。
B 手まあまあそおた、手早く。
C 手早さくとぅ。
D 手喰あ足喰あ。

日本語訳
@簡単な仕事は、探し難いものだよ。
A砂糖黍の収穫の際は手伝いに行かなければならない。
B準備もせず、慌てていたが、手早く済ませた。
C短気者は手が早いから気を付けて。
D何でもないのに、批難されて頭を抱えた。

2015年12月20日

第150講「腰・後」に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 腰掛(くしが)きとおたる親(うや)ん居(をぅ)らんなてぃ、腰(くし)弱(よお)くなとおん。
A 腰骨(くしぶに)ぬ痛(や)むれえ、腰剥(くしは)じい、せえわ腰叩(くしたた)ちし取(とぅ)らさ。、
B 彼(あり)え後(くし)(腰)引ち者(むん)なてぃどぅ、後(くし)なてぃ立(た)っちょおる筈(はじ)。
C 今(なま)ぬ世(ゆう)や、腰(くし)冷(ふぃず)らする事件(いっちん、じきん)ぬまんでぃ大事(でえじ)やん。
D 腰当(くしゃ)てぃ方(かた)ぬ頑丈(がんじゅう)くとぅ、何(ぬう)ぬ心配(しわ)ん無(ね)えやびらん。
E 御主前(うしゅめえ)や腰力(くしでえ)ぬ弱(よお)さくとぅ腰擦(くしし)てぃうさぎれえ。
F 銭腰掛(じんくしが)きしいねえ、後お銭(じん)なかいうっちぇえらりいん。
G 後(くさ)あ持(む)ち反(す)りとおたれえ、後(くさ)あうっちぇえてぃねえらん。

日本語

@ 頼りにしていた親もいなくなり、心細くなっている。
A 背骨が痛いのなら上半身脱いでよ按摩をしてあげよう。
B 彼は面汚し者だから、顔を背けて立っているのだろう。
C 今の世の中は、背筋も凍るような事件が多くて大変だ。
D 後ろ楯がしっかりしているから、何の心配も要りません。
E お爺さんは腰が弱いから背中を流してさしあげなさい。
F お金を鼻にかけると、いずれ、お金に裏切られる。
G 後に反り返っていたら、後ろにひっくり返ってしまった。

【解説】
「くし」には「腰(くし)」と「後(くし)」(卑語は「くさあ、くしゃあ」)の意味があります。「背中全体」や「背面」(「後方」)をも表わします。本書では文脈によって「後(くし)」と当てる場合もあります。「腰憩(くしゆっくぃい、くしゅっくぃい)」(農繁期の終わりに行う骨休みの行事)、「腰(くし)じゃあ」(機織器具の一つ)等は省きます。なお、「腰のくびれ」の部分は特に「がまく」と言います。

例文@「腰掛き」は「頼みにする事」の意味の他、転じて例文Fのように「威を借りる」、「かさに着る」にもなります。「腰弱さん」は「心細い」。
例文A「腰骨」は「ながに骨(ぶに)」ともいいます。「腰剥じい」は「腰剥じゆん」の名詞で、「上半身脱ぎ」の意味です。「腰叩ち」は「腰叩ちゅん」の名詞で「腰叩き」、「按摩」の意味となります。
例文B「後引ちゅん」は「名を汚す」、「面汚しをする」という意味「後引ち」はその行為。「後引ち者」はそれをする者。
例文C「腰冷らすん」は「ぞっとする」、「背筋が凍る」等の意味です。
例文D「腰当てぃ」は「腰当て」つまり「寄りかかるもの」の意味から「背にするもの」。「後ろ楯」ひいては「根拠」の意味。「腰当てぃすん」は「頼りにする」、「根拠にする」等の意味。特に「腰当てぃ方」は「嫁ぎ先」の意味。
例文E「腰力」は「腰の力」の意味の他、「頼みとするもの(の力)」の意味もあります。「腰擦ゆん」は「背中を流す」。
例文F「腰掛きゆん」は例文@の通り。「銭腰掛きゆん」は「金を鼻にかける」等の意味になります。
例文G「後あ持ち反りゆん」は「後に反る」。「うっちぇえゆん」は「裏返る、ひっくり返る」。転じて「仰天する」の意。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(腰剥じてぃ、腰引ちいねえ、腰当てぃん無(ね)えらなそおてぃ、腰力やたるっ人、腰冷らちゃん、腰弱さぬ)

@ 短(いん)ちゃ棒(ぼう)持(む)っち、長(なが)追(うう)いしいねえ、笑(わら)ありいん。
A 親(うや)ぬ面汚(ちらゆぐ)し、しいねえ、後(あと)お汝(いゃあ)がる恥(は)じさ思(うみ)いやする。
B 頼(たゆ)とおたるっ人(ちゅ)ん、何(ぬう)ん分(わ)からんあい、肝暗(ちむぐら)さぬならん。
C あったに、やまししんかい、はっちゃかてぃ、魂(たまし)脱(ぬ)ぎたん
D 汗走(あしは)い仕事(しくち)え、上衣(うゎあじん)剥(は)じてぃ、すし(せ)まし。
答え:
@ 腰当てぃん無えらなそおてぃ。
A 腰引ちいねえ。
B (上)腰力やたるっ人、(下)腰弱さぬ。
C 腰冷らちゃん。
D 腰剥じてぃ。

日本語訳
@根拠もなく深追いすれば、笑われる。
A親の面汚しをすれば、何れは君が恥ずかしい思いをするのだ。
B頼っていた人も何も知らないし心細い。
C急に猪に出くわし、ぎょっとした。
D汗かき仕事は上着を脱いでした方がよい。




先頭頁 71