2016年02月08日

第155講「手」に関する慣用句・言い回しX

うちなあぐち

@ 下手(しちゃでぃい)ねえゆるあたいぬ手引(てぃいふぃ)ち坊主(ぼうじ)とお組(ぐう)なるな。
A 手癖(てぃいぐし)ぬ悪(わ)っさるっ人(ちゅ)ぬ、人(ちゅ)ぬ家(やあ)んじん手探(てぃいさぐ)いすん
B 彼(あり)え手節(てぃぶし)ぬあくとぅ、手綱(てぃいんな)ん、ふぃっ切(ち)ちねえらん。
C 手(てぃい)ごう付(ち)ちょおたくとぅ、手(てぃい)ぬ裏(うら)し面掃(ちらほ)おかったん。
D 我(わん)ねえ手仕(てぃじけ)えそおくとぅ、くぬ仕口(しくち)え手分(てぃわ)きし取(とぅ)らし。
E 手(てぃい)置(うっちゃ)きなゆる肩(かた)んかいあるゑえ瘡(よう)あ手遅(てぃいうく)りならんうちなかい、早(ふぇえ)く手(てぃい)入(い)りしわるなゆる。
F 手習(てぃなれ)え片分(かたわ)き手(てぃい)しみてぃ勝負(しゅうぶ)しみりわる上手(じょうじ)ないる。
G 布織(ぬぬうい)しい慣(な)りとおる下手(しちゃでぃい)ぬ女(ゐなぐ)ん手(てぃい)まみじすたん。
H 空(ん)な手(でぃい)し(せ)え行(い)かんようい、手巾(てぃいさあじ)ぐれえ持(む)っち行(い)かに。

日本語

@ 賄賂をする程の悪友とはグルになるな。
A 盗み癖のある者が、他人の家でも手探りする。
B 彼は腕っぷしがあるから手綱(たづな、ちいさなつな)も切ってしまった。
C 悪戯癖が付いていたから、平手でビンタを食らわされた。
D 私は手が塞がっているから、この仕事は手分けしてくれ。
E が届く肩にある瘍(できもの)は手遅れにならない内に、手術しなければならない。
F 字の稽古二手に分けて勝負させてこそ上達する。
G 機織仕事をやり慣れた身分の低い女も手順を間違えた。
H 手ぶらで行かないで、手拭いぐらいは持って行かないか。

【解説】「てぃふぁな業(わざ)(危険な業)」、「てぃべえゆん(暴れる)」等が「手」の慣用句なのかは判断できませんので紹介だけに止めておきます。なお「手(てぃい)たっ食(くぁ)あす(ふ)ん」で「火傷する」の意味になる地域(石川山城)があります。

例文@「下手」は「袖の下から出す手」に喩えた「賄賂」。「手引ち坊主」は「引導僧」から転じて「誘惑する悪友」。
例文A「手癖」は「手癖」から発展して「盗む癖」の意。「手探い」は「(暗がりなどで)手探りする事」。
例文B「手節」は日本語のそれとニュアンスが異なり主には「腕っ節」の意ですが「げんこつ」という意味もあります。「手綱」は綱引きの際の大綱に付随した「小綱」で、綱引きは「手綱」を引いて行ないます。
例文C「手ごう」は「手でする悪戯」で52講の「手んちゃま」、54講の「手弄たん」に同じ。「手ごう付ちょおん」で、「悪戯癖が付いている」の意。
例文D「手支え」は「手が塞がっている事」。
例文E「手置き」は「(特に)手を回して届く肩辺り」。「手入り」は「(畑・物品の)手入れ・管理」の他に「手術」の意。
例文F「手習え」は「手習い(事)」、また「習字」。「片分き手」は「人数を二手に分ける事」。
例文Gここでの「下手」は例文@と異なり「身分の低い下の者」の意。「手まみじ」は「手作業で手順等を間違える事」。
例文H「空な手」は「何も持たない手」、「手ぶら」、「手巾」は「手ぬぐい」、「ハンカチ」。

【応用問題】例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(手分き、手まみじ、手癖ぬあるっ人、手支えそおん、手入り)

@ 旅んかい行ちゅるばあや、こおとぅねえやあんかい、心入り。
A 仕事え、一人し(せ)えさな、諸(むる)んかい手配いさんでえならん。
B 今あ、忙さぬ、まどお無えらん
C 家ぬ持ちなしん、良うさんでえ、白蟻なかい、さりいんどお。
D 手ばっぺえしいねえ、元被(むとぅかん)じゅんどお。
答え:
@ 手癖ぬあるっ人。
A 手分き。
B 手支えそおん。
C 手入り。
D 手まみじ。

日本語意訳
@旅に出る際はスリに気を付けよ。
A仕事は一人ではせず、皆で手分けしてやらなけらばならない。
B今は忙しくて暇がない。
C家の管理もきちんとしないと白蟻にやられるよ。
D手を間違うと、元が取れず損するぞ。

2016年01月31日

第154講「手」に関する慣用句・言い回しW

うちなあぐち

@ わくい手(でぃい)ぬあてぃん手汚(てぃいはご)おさてぃん、わくてえならん。
A 二才(にいせえ)や手(てぃい)ねえい足(ふぃさ)ねえい手向(てぃいん)けえびけえんそおん。
B 日中(ふぃっちい)、手(てぃい)揉(み)みじしい強(じゅう)さぬ、手(てぃい)だっさなとおん。
C 手相(てぃそう)手(てぃい)ぬ綾(あや)やくとぅ手ぬ腸(わた)、見(ん)でぃわる分(わ)かゆる。
D 手取(てぃいとぅ)ら取(とぅ)らそおる所(とぅくる)んかい居(をぅ)るむぬ、手渡(てぃいわた)しせえわ。
E 昔(んかし)え左手長(ふぃざいでぃいなが)あ手車(てぃいぐるま)入りらったんでぃぬ事(くとぅ)やさ。
F 手(てぃい)ぐうさんどぅそおたるむぬ、いな手枕(てぃいまっくぁ)けえそおん。
G 手(てぃい)弄(むた)あんそおたれえ、手むちゃあむちゃあけえそおん。

日本語

@ 挑発手段があっても歯がゆくても、挑発してはいけない、
A 青年は手を出し足を出すで、反抗ばかりしている。
B 一日中、マッサージをし過ぎて、手がだるくなっている。
C 手相掌の筋の事だからを見てしか分からない。
D 手が届くほどの近くにいるのだから、手渡しして。
E 昔は、泥棒手枷をはめられたとの事さ。
F 後ろ手をついて坐っていたのに、もう手枕して寝ている。
G 手で悪戯をしていたら、手がねばねばしてしまっている。
 
【解説】
「手」の卑語「手っこう」は、嘗ては子供同士でよく使っていましたが、大人になってからは殆ど耳にしません。

例文@「わくゆん」は「悪さをする」で「わくい手」は「悪さをする手・手段」。「手汚おさん」は「もどかしい」、「歯がゆい」。
例文A「ねえゆん」は「(手、足、腹等を)出す」。「手ねえい足ねえい」で「手足を出す」。「手向けえ」は「反抗」。
例文B「手揉みじ」は「手もみ」、「按摩」。「みみじゅん」は「揉む」、「揉める」。転じて日本語の「揉んでやる」のように「苛める」、「懲らしめる」の意味もあります。「手だっさん」(首里語『手だるさん』)は「手がだるい」。
例文C「手ぬ綾」は「掌の筋」。「手の腸」は「掌」で52講の「手平」及び後講の「手ぬ裏」と同じ。
例文D「手取ら取ら」は「手が届くらいの」の意味の副詞。
例文E「手長さん」は「盗み癖がある」と慣用的な意味。「左手長あ」その名詞形。「手車」は「(罪人等に填める)手械」。
例文F「ぐうさん(首里語「ぐうしゃん」)」は「杖」。「手ぐうさん」は「手を後に回して上体を支える事」。
例文G「むたあん」は「-弄び」という意味の接尾語。「手弄あん」で「手でする悪戯」。「手むちゃむちゃあ」は「掌に餅がくっ付いたようにねばっこくなる様」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(手取ら取らそおる所、手むたあん、手汚おさん、手揉みじ、左手長あ)

@ 御主前、按摩しいねえ、いそうさする筈。
A ゆくし物言いさあや、盗人ぬ親(諺)。
B 直ぐ側んかい、あしん、見じい難されえ、年寄い目どぅやる筈。
C 誰んさんくとぅ、なあ、自し、しい欲しゃなとおん。
D 早くぬ童とぅ今ぬ童とお、手がんまりぬしい様ぬ変わとおん。
答え:
@ 手揉みじ。
A 左手長あ。
B 手取ら取らそおる所。
C 手汚おさん。
D 手むたあん。

日本語意訳
@お爺さんをマッサージしたら嬉しがるだろう。
A嘘つきは泥棒の始まり〈ことわざ〉。
Bすぐ近くにあるものが見づらいのであれば老眼かも知れない。
C誰もしないから、もう自分でしたくなった。
D以前の子供と今の子供とでは、手でする悪戯の仕方が違う。

*コメントお、うちなあぐちし、御願えさびら。コメントぬうちなあぐちあらんばすお、返事さんばすんあいびいん。(コメントは沖縄語で御願いします。コメントが沖縄語でない場合は返事がない場合があります)。


2016年01月29日

第153講「手」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ 歌持(うたむ)ちん手事(てぃぐとぅ)ん長(なが)さる節(ふし)ぬ稽古(ちいく)する手組(てぃぐ)みそおん。
A 手(てぃい)ぬ割(わ)りてぃ手業(てぃいわざ)ん、しいぐりさいびいん。
B 彼(あり)え手細(てぅぐま)やくとぅ、何(ぬう)んくぃいん、手作(てぃづく)いしゆすん。
C くまあ手不足(てぃいぶすく)やくとぅ、あぬ人(ちゅ)ん達(ちゃあ)迄(まで)え手(てぃい)ぬ届(とぅどぅ)かん
D 踊(をぅどぅ)い人数(にんず)ぬ手振(てぃふ)いぬ清(ちゅ)らぬ手(てぃい)ぱちぱちいさん。
E 童(わら)達(ちゃあ)使(ちか)いねえ、手足(てぃいふぃさ)纏(まち)ぶいし、手間(てぃま)だありやん
F 彼(あり)が手様足(てぃいようふぃさ)様(よう)するばあや、手(てぃい)とお抱(だ)ちいそおちゅん。
G 手(てぃい)懐(ぶちゅくる)さあぬまんでぃ、何(ぬう)しみてぃん手鈍(てぃいにい)さん

日本語

@ 前奏も歌の合間の長い曲の稽古をする手筈をしている。
A 手があかぎれして手先の仕事もやりづらいです。
B 彼は手先が器用だから、何でもかんでも手作りできる。
C 当方は人手不足なので、あの人たち迄は行き届かない
D 舞踊団の手振りが美しくて、拍手をした
E 子供を使えば、手足纏いになって、手間がかかる
F 彼が手振り足振りをする時は、手を拱いておく
G 何もしない人が多いので何をさせてもするのが遅い

【解説】
「慣用句・言い回し」としての趣旨に沿うか、微妙な句もありますが、他との比較・参考の為にいれてみました。

例文@「手事」は「歌と歌の合い間の演奏」で「間奏」とは異なります。「手組み」は「手配、準備」等の意味。「手を絡ませること」の意味のある地方もあります。
例文A「手ぬ割りゆん」は「手に皹ができる」。「手業」は「手作業」で前講例文Dの「手ぬ技」との違いに注意。
例文B「手細」は「手が器用である事」。
例文C「手不足」は前講の「手ぶらあり」に同じ。「手ぬ届かん」は「手が届かない」から発展して「行き届かない」、「及ばない」の意味。
例文D「手振い」は「(踊りの)手振り」の事です。なお、日本語の「手振り」は「手(てぃい)様(よう)」です。
例文E「まちぶゆん」は「纏わりつく」で、「手足纏ぶい」は「手足纏い」。「手間だあり」は「無駄な手間をかけること」。「手の慣用句・言い回し」として扱うかについては微妙なところ?です。
例文F「手様足様」は「手つき足つき」又「手振り足振りする事」。「手とお抱ちい」は「手を拱く事」、「傍観する事」。
例文G「手懐」は「手を懐に入れている事」から転じて「何もしない事」。「手鈍さん」は「仕事するのが遅い」。
  
【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(手足纏ぶい、手懐、手細、手、手、手ぬ届かん)

@ 細工(せえく)勝手(がってぃ)やるっ人(ちゅ)お、仕口(しくち)ん、とぅめえい易(や)っさん。
A 野球(やちゅう)ぬ選(い)びん人(ちゅ)なれえやあんでぃ思(うむ)てぃん、ぞおいなゆみ
B あぬ童(わらび)え、ふぃっちい母(あんまあ)んかい、たっくぁいむっくぁいそおん。
C いぇえ、汝(やあ)ん手(てぃい)とお抱(だ)ちいさんようい、手(てぃ)がねえし取(とぅ)らせえわ。
D あんしゅか、手(てぃい)鈍(にい)されえ、暇(ふぃま、ひま)だありどぅやる。
答え:
@ 手細。
A 手ぬ届かん。
B 手足纏い。
C 手懐。
D 手間だあり。

日本語訳
@器用な人は仕事を探しやすい。
A野球選手になりたいと思っても、到底及ぶものではない。
Bあの子は一日中、母親に纏わりついている。
Cおい、君も傍観しないで手伝ってくれよ。
Dそんなに、仕事するのが遅いのであれば、時間の無駄である。




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