2016年03月31日

第158講「腸」に関する慣用句・言い回し1

うちなあぐち

@ ちゃあ、腸(わた)ぬ満(みい)、物食(むぬjか)でぃ、腸(わた)ぬ、けえ、ねえとおさ。
A 人(ちゅ)ぬ腸(わた)あ探(さぐ)らんぐうとぅう、腸々(わたわた)あとぅ話(はなし)どぅする。
B 彼(あり)んかい腸(わた)くじ物言(むに)いけえし、腸(わた)ぐりさぬならん
C 人(ちゅ)ぬ腸(わた)くじいねえ、後(あと)お、自(どぅう)ぬ腸(わた)ぬる、むげえゆんどお。
D 腸力(わたでえ)ぬあし、食(か)だくとぅ、なあだ、腸減(わたび)ないんさん。
E 空(ん)な腸(わた)どぅやたしが、ちゅふぁら食(か)でぃ、腸多(わたうふ)さん
F 食(か)でぃ直(ちゃあき)き、長(なが)這(ぼ)おいしいねえ、腸(わた)ぬかみらりゆん
G 腸半(わたなか)ら食(か)むしん、良(い)い物(むん)、悪(や)な物(むん)どぅやる。

日本語

@ いつも、腹一杯、食って、お腹が出てしまったよ。
A 他人の腹を探ろうとせず、親しく話をすべきである。
B 彼に怒らせるような事を言ってしまい、後悔している
C 他人を怒らすような言動をすれば、いずれは、自分の腹の方が煮えくりかえる事になるぞ。
D 腹持ちの良いのを食べたから、まだ腹は減ってない。
E 空きっ腹だったのだけど、沢山食べて、腹一杯なった
F 食べて直ぐ、寝そべると、腹が突き上げられる様に痛い
G 腹半ば食べるのも、良し悪しが半々である。

【解説】
「腸」の慣用的な使い方は、姉妹語である日本語に比べると、実に独特で面白いです。

例文@「腸ぬ満」は「腹一杯」。「満」は私の当て字なので要注意。「腸{ぬ}ねえゆん」は「腹が出る」。
例文A「腸探ゆん(腸探いん)」は文字通り「腹(他人の考え)を探る」。「腸々あとぅ」は「親しく」の意味。
例文B「腸くじ物言い」は「(相手を)怒らすような物言い方」でCの名詞形。「腸ぐりさん」は「腹苦さん」とも表記される事もあります。「腹に応えるほど後悔する」という意味。
例文C「腸くじゆん」は「(相手の)腹を抉るような不快又は怒らすような言動をする事」。「腸ぬむげえりゆん」は「腸が煮えくり返る」。「むげえゆん」は「湯が沸騰、または食べ物がぐつぐぐつと煮える」の意味。
例文D「腸でえ」は「腹持ち」。「腸でえぬあん」で「腹持ちが良い」。「腸減ない」は「腸が減る事」。
例文E「空な腸」は「空きっ腹」。「腸多(わたうふさん)さん」は「わたふさん」。「わたうふぃさん」とも言い、「腹一杯」の意味。
例文F「かみゆん」は「上に乗せる」。「腸ぬかみらりゆん」は「突き上げられる(ように痛む)」。逆流性食道炎の類?
例文G「腸半ら」は「腹半分(食べる事)」で「中ら腸」とも言います。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(腸ぐりさん、腸ぬむげえりとおん、腸くじゆん、腸々あとぅ、空な腸やるばす)

@ 友(どぅし)とお、愛々(かながな)あとぅ、ふぃれえらんでえ、ならん。
A 彼(あり)んかい、悪(や)な事(くとぅ)けえ言(い)ち、自腹痛(どぅうはらや)まちょおん
B わちゃこおげえじ、叫(あ)びらりいねえ、うむこお無(ね)えらん。
C やあさるばすお、何(ぬう)やてぃん、美味(まあ)さん。
D 仕事(しくち)ぬ事(くとぅ)なかい、ぬらあってぃ、わじわじいそおん
答え:
@ 腸々あとぅ。
A 腸ぐりさん。
B 腸くじらりいねえ。
C 空な腸やるばす。
D 腸(わた)ぬむげえりとおん。

日本語意訳
@友だちとは、親しく付き合わないといけない。
A彼に嫌な事を言ってしまい、後悔している。
Bあてつけがましく、言われると面白くない。
C腹が減ったときは何でも美味しい。
D仕事の事で、怒られ腹立たしい。

2016年03月10日

第157講「足」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 歩(あ)っち足(びしゃ)あ猫(まやあ)やてぃん、足車(あしぐるま)入(い)てえならん。
A 客(ちゃく)ぬめえせえるばすお、高足(やかびしゃ)遣(じけ)えさんでえならん。
B あんし忙(いちゅな)しばあに、足畳(ふぃさたく)でぃ座(い)ち、何(ぬう)ぬ積合(ちむええ)やが。
C 足跡(ふぃさかた)見(んん)じいねえ、足弱(ふぃさよう)やる事迄分(くとぅまでぃわ)かゆん。
D 靴(ふや)あ足(ふぃさ)ぬ腸(わた)んかいん足(ふぃさ)なあんかいん合(あ)たゆし(せ)えまし。
E 足(あし)まるびし、痛(や)まちぇえる足(ふぃさ)あ、足(ふぃさ)擦(し)り擦りしん治(のお)らん。
F 年寄(とぅす)ぬ、けえ寝(に)んじいねえ、足力(ふぃさじから)ぬ無(ね)えんなゆん。
G 足(あし)まるび手(てぃい)まるびし、走合(はあええ)ないねえ、どぅ返(げえ)ゆんどお。

日本語

@ 外出癖のある猫でも足枷をはめてはいけない。
A お客様がいらっしゃる時は、気遣いしなければならい。
B こんな忙しい時に何もしないでいるとは何の積もりだ。
C 足跡をみれば、足が弱いという事迄、分かる。
D 靴は足の裏にも、足の甲にも合うものがよい。
E 足を滑らして痛めた足は、足擦りしても治らない。
F 年寄りが寝込んだら、足力がなくなる。
G 慌てふためいて、走ると、転ぶよ。

【解説】
文例@「歩っち足あ」は「よく歩く足」、「(外を)歩き回る癖のある足(人)」の意味。
文例A「高足遣え」は「足音戸を立てないように爪先立ちで歩く事」の意味から「気を使うこと」の意味にもなります。
文例B「足畳でぃ座ゆん」は「足を畳んで座る」意味から「何もしないでいる」、「無為徒食」そして「楽している」という意味に発展しています。「忙しばあ」は「忙なさるばあ」という意味の慣用句です。
文例C「足弱」は「足が弱い事」。
文例D「足ぬ腸」は「足の裏」。「足なあ」は「足の甲」。
文例E「足まるび」は「(慌てる等して)足がうまくコントロールできない様」や「足を滑らす事」の意味。
文例F「足力」は前講の「足(あし)どおに」と同じく「足の力」、「脚力」の意味。「寝んじゅん」は「病気等で寝込む」意味もあります。
文例G「足まるび手まるび」は文例Eの「足まるび」と同じ意味ですが、「手まるび」を加える事によって大袈裟な表現となります。「転ぶ」を意味する「どぅ返りゆん」は「転(くる)ぶん」より土着語的であり一般的に多く使われています。
  
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(歩っち足あ、手まるび足まるびし、足高あ、足畳で座ちょおちいねえ)

@ 子(くぁ)ぬ怪我(きが)さんでぃぬ話聞(ばなしちん)ち、落(う)てぃたい舞(も)おたいし来(ち)ゃん。
A 今(なま)ぬ世(ゆう)や、女(ゐなぐ)やてぃん、家(やあ)んかい掛(か)からぬうやしがる普通(ふつう)やる。
B あたら若者(わかむん)ぬ家(やあ)んじ、空居(んない)いしん、仕口(しくち)え、とぅめいゆさん。
C しょう脱(ぬ)ぎとおるばあや、どぅ返(け)ゆる事(くとぅ)ん有(あ)くとぅ、良(ゆ)うし。
D 三(さ)味(ん)線(しん)や高鳴(たかな)いすくとぅ、稽古(ちいく)するばあや、気遣(ちじけ)えすん。
答え:
@ 手まるび足まるびし。
A 歩っち足あ。
B 足畳でぃ座ちょおちいねえ。
C 足まるびする。
D 高足遣え。

日本語意訳
@子が怪我をしたと聞いて、躓いたり、転んだりしながら来た。
A現代は女性でも外出するのが普通である。
Bあたら若者が家で無為に座っていても仕事は探せない。
Cびっくりした時は、転ぶこともあるので気を付けて。
D三味線は音が大きいので、練習する場合は気遣いをする。

2016年02月25日

第156講「足」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 足(ふぃさ)かやあちゃれえ、足腰(あしくし)ぬ立(た)たんなとお。
A 長(なげ)えさ、足(ふぃさ)まんちいそおらたれえ、足(ふぃさ)ふぃらくどおん
B 足高(ふぃさだか)あし歩(あ)っちん、足音(あしとぅ、あしうとぅ)お聞(ち)かりいんるむぬやん。
C 足(あし)どおに(ね)え無(ね)えんしが、足早(ふぃさふぇえ)みてぃちゃあ行(い)ちいさん。
D 足(ふぃさ)だっさぬ、なあ、一足(ちゅふぃさ)、二足(たふぃさ)ん、歩(あ)っからんなとおん。
E 諸足(むるびしゃ)、空足(からびしゃ)あし仕口(しくち)そおたれえ、足切(あしじ)りそおん。
F 靴(ふや)くでぃん、ハブ所(どぅくる)、歩(あ)っちゅし(せ)え足汚(ふぃさはご)おさん
G 親(をぅや)ぬ家(やあ)から親戚(ゑえか)ぬ家(やあ)んかい、同(い)ぬ足(ふぃさ)し向(ん)かたん。

日本語

@ 足しげく通ったら、足腰が立たなくなった。
A 長く正座していたら、足が痺れている
B 爪先立ちして歩いても、足音'''は聞えるものである。
C 足力は無いけど、早足で、行き続けた。
D 足がだるいので、もう一足も二足も歩けなくなった。
E 両足とも裸足で仕事をしていたら、皸足になっている。
F 靴を履いてもハブの良く出る所を歩くのは気味悪い。
G 実家から親戚の家に、そのまま出向いた。。

【解説】
「足」は「膝(ひざ)」からの転化とも言われています。普通は「ふぃさ、ひさ」と言いますが、慣用的に「あし」とも言います。卑語は「あしふぃさ、あしひさ」と言います。「足腰(あしくし)」、「片足(かたふぃさ)」、「足骨(ふぃさぶに)」等、日本語とほぼ同じ語や「足駄(あしじゃ)(下駄)」、「足(あし)てぃびち(豚足料理)」など、単に単語の一部を為す「語」は略します。

例文@「かやあすん(かやあしゅん)」は「持ち運ぶ」の意味で「足かやあすん」は慣用的に「足茂く往復する」の意味。
例文A「足まんちい」は「足を丸めて坐る」の意味で「正座」。「ふらくむん」は「痺れる」。
例文B「足高あ」は「足を高くすること」の意味から「爪先立ち」、「背伸び」の意味。「足音(あしとぅ、あしうとぅ)」の発音に注意。
例文C「足どおに」は「足の力」、「脚力」。
例文D「足だっさん(「足だるさん」)」は「足がだるい」。
例文E「諸足」は「両足」。「空足」は「裸足」。「足切り」は「足の裏の皸」。
例文F「はごおさん」は「汚い」、「気持ち悪い」、「下品である」の意味ですが、「足はごおさん」は「足元が気味悪い」。
例文G「同ぬ足」は「その足(で)」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(足汚おさあ無えんたん、足どおに、同ぬ足し、足高あ、足かやあち)

@ 序(ちい)でぃどぅやるむぬ、ちゃあしっちい、行(い)きよお。
A 恋路(くいじ)やれえ、幾(いく)けん、とうん戻(むどぅ)やあしん、うたらんしがる。
B スポーツぬ選(い)び人数(にんず)お足力(ふぃさじから)ぬありわるんかいないゆうする。
C 高尾山(たかおさん)ぬ吊(ちい)橋(ばし)え、何(ぬう)ん、足(ふぃさ)あ、がたないさんたん
D 高(たか)はじいや、あどぅ高(たか)くさんてぃん、行逢(いちゃ)ゃゆさ。
答え:
@ 同ぬ足し。
A 足かやあちん。
B 足どおに。
C 足汚おさあ無えんたん。
D 足高あ。

日本語意訳
@序でだからその足で行ってね。
A恋路なら幾度、行き戻りしても疲れないのに。
Bスポーツ選手は脚力があってこそなれる。
C高尾山の吊橋は何も足元が震えなかった。
D背高のっぽは、背伸びしなくても届くよ。




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