2017年04月09日

第182講「銭(じん)」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 今(なま)あ、銭(じん)ぬ世(ゆう)。銭着(じんじゃく)銭じいら入(い)ゆる人(ちゅ)んまんどおん。
A 銭(じん)ぬ畏(うす)りん無(ね)えん人(ちゅ)お、後(あと)お銭詰(じんぢ)まいすん。
B 銭(じん)や渡(わた)い物(むん)やしが、滑(なん)どぅる物(む)ぬんやん。
C 銭(じ)のお銭守(じんかみ)んかいどぅ銭や授(さざ)きゆる銭(じん)喰(くぇ)え虫(むし)んかい構(かむ)らさん。
D 銭(じん)ぬ敬(うやめ)え、知(し)らん人(ちゅ)のお、銭(じ)のお貯(た)ぶゆさん。
E 銭見(じんみ)い易(や)っさくとぅんでぃち、銭(じん)雨(あみ)降(ふ)らちぇえならん。
F 銭費(じんだ)ありする人(ちゅ)んかい銭(じん)費(てえ)さあんでぃ言(ゆ)んばあやさ。
G 銭(じん)貸(か)らさあん銭(じん)借(か)やあん実(じち)え、同(い)ぬ如(ぐとぅ)、銭飢(じんう)がりそおん。

日本語

@ 今は金の世。金銭に執着する者金で苦労する者も多い。
A 金を大切に思わない人は、いずれ金詰まりする。
B 金は天下の回り物だが、手元に残り難いものでもある。
C 金は金線管理者管理させるべきで、浪費者にはさせない。
D お金を大事にできない人は貯金することはできない。
E 金回りがよいからといって、大散財してはならない。
F お金を無駄遣いする人に浪費者というわけよ。
G 高利貸し借金人も本当は同じく金に飢えている

【解説】
 「銭」は「銭金(じんかに)」とも言います。小児語は「銭(じ)ぬう」。なお、「銀」も琉球漢音では大方は「じん」です。(北部、糸満などの南部を除く)

例文@「銭着」は「お金に執着する者」。「銭じいら」は「金で苦労すること」の意味です。
例文A「銭ぬ畏りん無えん」は「お金を大切に思わない」。類句に例文Dの「銭ぬ敬え知らん」。「銭詰まい」は「金詰り」。
例文B「銭ぬ渡ゆん」は「金が世の中を回る」。「銭や渡い物」で「金が天下の回りもの」。「銭や滑どるむん」は「金は滑って手にしても直ぐに滑り去ってしまう」事に喩えた慣用句。
例文C「銭守(じんかみ、じんかみい)」は「金銭管理者」で「銭(じん)ぬ守(かみ、かみい)」とも言います。「銭授きゆん」は「金銭を管理させる」で「銭授かゆん」は「金銭を管理する」となります。「銭喰え虫」は「金銭の浪費癖のある人」で単に「銭喰え」とも言います。類句は例文Fの「銭費えさあ」。
例文D「銭ぬ敬え知らん」は「金を大事・大切にしない」というニュアンス。「銭貯ぶゆん」は「貯金する」。
例文E「銭見い易っさん」は「金回りが良い」という意味の比喩句。「銭雨降らんすん」は「金を湯水のように使うこと、「大散財」の意味の比喩句です。
例文F「銭費あり」は「お金の無駄遣い」。「銭費さあ」は「お金を浪費する人」。
例文G「銭貸らさあ」は「金貸し」の意味もあるが、慣例的に「高利貸」の意味。「銭借やあ」は「金を借りる人」。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の太字部分に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(銭雨降らすん、銭見い易っさん、銭着、銭じいら、銭ぬ敬え知らんでえ、銭ぬ渡りわる、銭ぬ詰まゆん)

@ 銭(じん)粗相(すそん)しいねえ、けえ、くぬうち、倒(とお)りゆんどお。
A 商(あちねえ)さあや、銭(じん)の事(くとぅ)し、しいら入(い)ゆる事(くとぅ)ぬまんどおん。
B あんし、銭(じん)費(てえ)しいねえ、なあ、銭ぬ無(ね)えらんなゆんどお。
C 御(う)万人(まんちゅ)ぬ銭使(じんちか)りわる、商(あちねえ)ん世(ゆう)ん繁(はん)盛(じょう)んする。
D 銭(じん)ぬ事(くとぅ)びけえ、考(かんげ)えいねえ、肝(ちむ)ぬ所(とぅくる)ん無(ね)えんなゆさ。
答え:
@ 銭ぬ敬え知らんでえ。
A 銭じいら。
B 銭雨降らしいねえ、銭ぬ詰まゆん。
C 銭ぬ渡りわる。
D 銭着しいねえ。

日本語訳
@お金を粗末にして大切にしないと、そのうち、倒産してしまうよ。
A商売人は金の事で苦労する事が多い。
Bこれほど出費したら、金が無くなるよ。
C皆がお金を使ってこそ商売も世の中も繁盛するのである。
Dお金の事ばかり考えると、心の置き所がなくなるよ。

2017年03月18日

第181講「家(やあ)、屋(やあ)」に関する慣用句・言い回しW

うちなあぐち

@ 電気(でぃんち)ん無(ね)えらんたる代(ゆう)ぬ家仕(やあし)事(ぐとぅ)お、大事(でえじ)やたる筈(はじ)。
A あまぬやっちいや家毎(やあかじ)拾(ふぃる)やあやくとぅ、頼(たる)がきららん。
B 家竜(やあどぅう、やあるう)ぬ家付(やあぢ)ちょおれえ、よおしょうけえ。
C 家分(やあわ)かやあやてぃん、屋孫(やあんまが)ぬ代(でえ)からあ元祖(ぐぁんす)持(む)ちなゆん。
D 今日(ちゅう)や一家(ちゅやあ)組(ぐな)揃(すり、する)てぃ、家屋敷(やあやしち)ぬ掃(ほ)ちかちさやあ。
E 大人(うふっちゅ)ないねえ、誰(たあ)やてぃん、家持(やあむ)ちゃあなゆさ。
F 正月(しょうぐぁち)ないねえ、家(やあ)毎(かじ)家(や)戸口(どぅぐち)んかい、松飾(まあちかざ)ゆん。
G 此(く)まあ本家(むうとぅやあ)やしが、今(なま)あ、空家(んなやあ)どぅなとおる。

日本語

@ 電気のなかった時代の家事は、大変だっただろう。
A あそこの兄さんは、まぐれなので、頼りにならんない。
B ヤモリが住み着いているのであれば、放っておけ。
C 分家でも内孫の代からは仏壇持ちになる。
D 今日は、一家揃って、家屋敷の掃き掃除をしようねえ。
E 大人になれば、誰もちゃんと、所帯を持てる者になるさ。
F 正月になると、家ごとに戸口に松を飾る。
G ここは本家だが、今は空き家になっている。

【解説】
例文@「家仕事」は「家事」です。
例文A「家毎拾やあ」は元々は「奉公先を転々する者」でしたが、転じて「気まぐ者」、「移り気な人」に意味。
例文B「家付ちゅん」は「家に住み付く」、「居付く」の意味です。「家竜」は「家しじまあ」とも言います。
例文C「家分かやあ」は「分家」。78講の「家立ちゃあ」の実質的には殆ど同じですが、「立つ」と「分かつ」の差からくるニュアンスの違いがあります。「屋孫」は「内孫」。
例文D「一家組」は「一家(ちゅや)っくぁ」とも言います。
例文E「家持ちゃあ」は「ちゃんと所帯が持てる者」の意味で「家持(やあむ)ち」とも言います。
例文F「家毎」は「戸数毎に」、「家ごとに」の、「家戸口」は「戸口」の意味です。
例文G「本家」は「(基本的には嫡子の家系で)本家(ほんけ)」の意味です。「空家」は「空き家」の意味です。参:68講。
  
【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の( )に入る語句・文を次行の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(家付ちょおん、家持ち、家分かやあ、家仕事、一家っくぁ)

@ 今(なま)あ( )え、男(ゐきが)、女(ゐなぐ)んちん、無(ね)えらな、男ん、さびいん。
A ふぃるまむん、野間猫(やままやあ)どぅやしが、( )。
B ( )どぅやてぃから、他所国(ゆすぐに)んかい移(うち)てぃん、済(し)みいどぅする。
C あぬ気任(ちまか)しいぬん、( )けえなてぃ、片心許(かたくくるゆる)ちょおいびいさ。
D ( )揃(すり)てぃぬ旅(たび)やくとぅ、諸(むる、ぶる)、いしょうさいぎさん。
答え:
@ 家仕事。
A 家付ちょおん。
B 家分かやあ。
C 家持ち。
D 一家っくぁ。

日本語意訳
@今は家事は男女の別なく、男でもやります。
Aめずらしいこと、野良猫なのに、居付いている。
B分家だったら、移民しても良いのである。
Cあの我がまま者でも、ちゃんとした所帯持ちになって、一先ず安心していますよ。
D家族揃っての旅行なので、皆、楽しそうである。

2017年03月06日

第180講「家(やあ)、屋(やあ)」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ 火走(ほおは)いや家々財(やあかざい)家持(やあむ)ち道具(どうぐ)ん、あるっさ持(む)っち走(は)ゆん。
A あぬ家門(やあじょう、やあぞう)から家品(やあじな)ぬ分(わ)かゆん。
B 家造(やあづくい)いや、昔(んかし)え結(いい)回(まあ)るう頼(たる)がき、今(なま)あ家大工(やあぜえく)頼(たる)がき。
C 畑(はる)さあや家(やあ)かい荷(にい)、持(む)っちどぅ戻(むどぅ)ゆたる。
D 親(うや)あ家(やあ)てぃいさあ、子(くぁ)あ、家(やあ)しじい
E 昔(んかし)ぬ家風呂(やあぶる)やか家(やあ)ぬ内(うち)んかいある風呂(ふる)ぬどぅましやる。
F 家(やあ)ぬ上(ゐい)んかい上(ぬぶ)いねえ、自(どぅう)なあ達(たあ)牛屋(うしやあ)ぬ見(み)いゆん。
G 村外(むらはじ)しんかいあぬ屋取(やあどぅい)い家数(やあかじ)ぬまんどおん。

日本語

@ 火事は家と財産所帯道具も、一切、持ち去る。
A あの屋根付き門から、家の風格が分かる。
B 昔は共同作業頼みだった家造りも今は家大工任せ。
C 農家は家に、畑道具や家畜用の草等を持ち帰ったものだ。
D 親は人の家に入り浸る人、子は他家に馴染めない人
E 昔の(外にあった)屋根付き便所より屋内便所が良い
F 屋根に上ると、自分達の牛舎が見える。
G 村外れにある都落ちした士族の集落戸数が多い。

【解説】
例文@「家々財」は「家と家財一切」。「家持ち道具」は「所帯道具」の意味です。
例文B「家門」は「屋根のある立派な門」。「家品」は「家の風格」、「家の品」の意味です。
例文C「家造い」は「家造り」。参:79講の「家普請」。「家大工」は主に「家屋専門の大工」の意味です。
例文D「家かい荷」は「農家が家に帰る際に持ち帰る農具は勿論、周辺で刈り取った家畜に与える草などを含む荷」。「かい」は方向などを表わす助詞で「んかい」とも言います。
例文E「家てぃい」は「他人の家に入り浸ること」。「家しじいい」は「他人の家に馴染めない人」の意味です。
例文F「家ぬ上」は「屋根」。「牛屋」は「牛舎」。なお、「山羊屋(ふぃいざあやあ)」は「山羊小屋」です。
例文G「屋取い」は琉球王府(中山府)の「合理化」や廃藩置県などで都落ちした士族の集落のことです。「家数」は「戸数」の意味です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に箇条文の( )に入る語句・文を次行の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(家造い、家品、山羊小屋、家しじい、家かい荷)

@ 知(し)らん人(ちゅ)うする童(わらび)ぬどぅ( )やする。
A 畑(はたき)ぬ手(てぃ)がねえさあや、( )や、まじゅん、持(む)っち取(とぅ)らせえ。
B ( )ぬある家(やあ)や屋敷(やしち)ぬ掃(ほお)ちかちん、出来(でぃき)らちょおん。
C ( )ん、今(なま)あメーカーぬ仕口(しくち)どぅなとおる。
D 豚(うゎあ)ぬ風呂(ふうる)んかい、たっくぁあとおる( )んまんどおたん。
答え:
@ 家しじい。
A 家かい荷。
B 家品。
C 家造い。
D 山羊小屋。

日本語訳
@人見知りする子が他人の家に馴染めないのである。
A畑の手伝い人は持ち帰る荷や道具は一緒に、持って呉れ。
B家の品格のある家は屋敷の清掃もよくしている。
C家造りも今はメーカーの仕事になっている。
D豚小屋にくっついている山羊小屋も多かった。



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