2018年07月31日

第206講「取ゆん」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 琉球国(るうちゅうくく)や軍(いくさ)やか御取(うとぅ)い持(む)ちい大切(てえしち)にしちちゃん。
A 昔(んかし)え砂糖屋(さあたあやあ)ぬかじ、技取(じいとぅい)ぬ居(をぅ)たんでえ限(かじ)らん。
B 総締(すうじみ)んやがてぃやい、毎日(めえにち)、算取(さんとぅ)とおかんでえならん。
C 取(とぅ)い屈(くぐ)にてぃ、しでぃ果報(かふう)、うんぬきやびいん。
D 彼(あり)が歌い美(じゅ)らさし(せ)え、移(うち、うちゅ)い取(とぅ)とおくとぅどぅやる。
E 今(なま)ぬ世(ゆう)や、ゆりい取(とぅ)らんでえならん事(くとぅ)ぬ多(うふ)さん。
F 人(ちゅ)ぬ言(ゆ)し、能(ゆ)う聞(ち)きわどぅ、勘(かん)ぬん取(とぅ)いゆする
G 護佐丸(ぐさまる)ん阿麻和(あまわ)利(い)ん実(じち)え何(ぬう)ん弓(ゆみ)ん矢(やあ)ん取(とぅ)らんたん。

日本語

@ 琉球国は軍事より接待(外交)を大事にしてきた。
A 昔は製糖工場ごとに製糖技術者が居たとは限らない。
B 総決算も近いし、毎日計算しておかないといけない。
C 慎んで、御礼申し上げます。
D 彼が歌が上手なのは親譲りだからである。
E 現代は許可を得なければならない事が多い。
F 他人の言う事はよく聞いてこそ理解もできるのである
G 護佐丸も亜麻和利も実際、謀反心は少しもなかった

【語句】
例文@「御取い持ちいすん」、「御取い持ちゅん」は「接待する、持て成す」の意味。「持てぃ成すん」を使う人もいますが、「持てぃ成し」は「(心の態度等の)持ち様、世話」の事です。「とぅばらーま」の歌詞の一つに「年ば取り姿(しなだ)や変わるとぅむ、肝(きむ)ぬ持てぃなしや幾世迄ん(年を取り体つきは変わっても心の持ちかたは何時までも同じ)」があります。
例文A「技取」は「製糖技術者」。元々「技術者」の意味であり、その意味で用いても間違いではありません。なお「技(わざ)さあ」は「職人」の意味です。
例文B「算取ゆん」は計算する。「算(さん)」自体は本を読む回数分を目印として挟むもの。この句は転じて多くの物を数えることを意味します。
例文C「屈にゆん」は「慎む」、「慎重にする」、「恭しくする」等の意味。接頭の「取い」はここでは意味の無い語です。
例文D「移い取ゆん」は「(親の)血を引く」、「親譲りである」、「遺伝する」の意味。
例文E「ゆりい取ゆん」は「許可を得る」の意味。
例文F「勘取ゆん」は「解る」、「悟る」、「了解する」という意味です。
例文G「何ん弓ん矢ん取らん」は「謀反心が全くない」事を意味する慣用句です。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(何ん弓ん矢ん取らん、移い、取い持ちん、勘取やびたる、算取ゆん、技さあ)

@ 幾(いく)けぬん、さんみんさしが、締(し)みぬ当(あ)たらん。
A うぬんじゅがみせえたる事(くとぅ)、今(なま)どぅ分(わ)かやびたる
B 病(やんめえ)や親(うや)からぬ譲(ゆじ)りやるむぬんあん。
C 首里(しゅい)んかい叛(すむ)ちゅる積合(ちむえええ)やむさっとぅ無(ね)えん。
D 兄(しいざ)ん達(ちゃあ)、てぃでえゆし(せ)え、実(じゅん)どぅやがやあ。
答え:
@ 算取たしが。
A 勘取やびたる。
B 移い。
C 何ん弓ん矢ん取らん。
D 取い持ちゅし(せ)え。

日本語意訳
@何回も計算したが、合計が合わない。
A貴方の仰った事は今になって分りました。
B病気は遺伝性のものもある。
C首里に叛く考えは全くない。
D先輩方を饗応するのは当然なのだろうか。

注:あびいよう、揚ぎ下ぎえ、なあめえめえぬシマムニイし、する如、考えてぃ呉みそおり(発音・抑揚はそれぞれの地域の言葉でなされるようお願いします)。

2018年07月05日

第205講「取ゆん」に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ まるけえてぃ鋸取(ぬくじりとぅ)てぃん、受取(うきとぅ)らりいるむぬ(の)おあらん。
A 帆高船(ふうだかぶに)や島取(しまとぅ)らん、肝高女(ちむだかゐなぐ)や家(やあ)持(む)たん。(デンサー節)
B 人(ちゅ)ぬ言(ゆ)し、徒(いちゃんだ)ん、横勘(ゆくがん)取(とぅ)ゆるむぬおあらんどう。
C 夫婦(みいとぅんだ)ぬ仲取(なかとぅい)い傍取(はたとぅい)いや、しい様(よう)ぬあん。
D 値(でえ)や売(う)やあとぅ買(こう)やあぬ言(い)い分(ぶん)ぬ中取(なかとぅ)たん
E しい様(よう)にちいてぃ、早(ふぇえ)く取(とぅ)てぃ付(ち)きらんでえならん。
F 精霊(しょうろう)や、たんかあどぅ取(とぅ)てぃどぅ、ちけえちょおる。
G 今(なま)あ時取(とぅちとぅい)い日取(ふぃいどぅ)いする為(たみ)ねえユタ買(こう)いがあ行(い)かん。

日本語

@ たまに鋸を扱っても、習得できるものではない。
A 大船は小島に寄らず、お高く留まる女は家庭を持たない。
B 他人の言う事を、むやみに邪推するものではないよ。
C 夫婦の仲を取り持つのはやりようがある。
D 値段は売り手と買い手に言い分の間をとった
E やり方について、早めに処方しないといけない。
F (盆の)祖先への案内は遥拝して済ませている。
G 現代は日取りや時を占うのにユタを買いには行かない。

【解説】
例文@「鋸取ゆん」は「鋸を扱う」。「蚤」、「鉋」等の大工道具の他、「包丁」等にも用います。「包丁(ほうちゃあ)取(どぅ)い」は「包丁捌き」の意味になります。
例文A「島取ゆん」は「(停泊する港として)島に投錨する」の意味です。教訓歌「デンサー節」より借用しました。歌詞は「どぅくどぅん肝(ちむ)持(む)ちいねえ、海(うみ)に転(くる)ぶる」(あまり、お高く留まると海に転落するよ)と続きます。
例文B「横勘取ゆん」は「誤解する」、「邪推する」等の意味です。
例文C「仲取い傍取い」は「仲を取り持つ」の意味。単に「仲取ゆん」とも言います。「仲」は「なあか」とも言います。「仲取ゆん」は「取い成すん」とも言います。
例文D「中取ゆん」は「間をとる」の意味です。「中」は「なあか」とも言います。
例文E「取てぃ付きゆん」は「処方する」、「手段・方法を講じる」の意味。但し、薬の調合は「配剤(ふぇえぜえ)」、「薬(くすい)盛(む)ゆん」と言います。
例文F「たんかあ取ゆん」は「遥拝する」。「向(ん)けえ取ゆん」、「御通しすん」とも言います。
例文G「時取ゆん」、「日取ゆん」はそれぞれ「(物事をする)時を占う」、「日を選ぶ」の意味です。


【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に最も相応しい語句を次の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(横勘取てえ、御通しし、取てぃ付きらんでえ、仲取ゆしん、包丁取い)

@ いちゅなさくとぅ、今度(くんどぅ)ぬタナバタあ、向(ん)けえ取(とぅ)てぃ済(し)ますん。
A 聞(ち)ちばっぺえやれえ、済(し)むしが、うったてぃ取(とぅ)い違(ちが)てえならん。
B とおないねえ、男(ゐきが)ぬる包丁使(ほうちゃあぢけ)えや上手(じょうじ)がやらん分(わ)からん。
C 彼(あ)っ達(たあ)や兄弟(ちょうでえ)ぐふぁさぬ取(とぅ)い成(な)すしん、よねえあやらん。
D 台風(てえふう)ぬ来(ち)ゅうるばあや、早々(ふぇえべえ)とぅ、支度(したく)さんでえならん。
答え:
@ 御通しし。
A 横勘取てえ。
B 包丁取い。
C 仲取ゆしん。
D 取てぃ付きらんでえ。

日本語意訳
@忙しいので、今年の七夕(墓の掃除および祖先への盆案内日)は遥拝で済ます。
A聞き間違いなら良いが、わざと誤解してはいけない。
Bいざとなれば、男の方が包丁捌きは上手かもしれない。
C彼等は兄弟仲が悪いので仲裁する(取り持つ)のは容易ではない。
D台風がやってくる場合は、早めに対策を講じなければならない。


2018年05月28日

第204講「ふちゅん」、「吹ちすん」等の慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 今(なま)あ前(めえ)やか、煙草(たばく)吹(ふ)ちゅる人(ふ)お、なんぞお、居(をぅ)いびらん。
A 小満(しゅうまん)芒種(ぼうしゅ)ぬ節(しち)え家(やあ)ん中(なあか)あ、いいくる、麹(こうじ)ふちゅん
B エイサー臣下(しんか)ぬ指(いいび)、吹(ふ)ちゅし(せ)ん、エイサーぬ一(てぃい)ちやん。
C 芋(んむ)んかいん色々(いるいる)あしが、粉吹(くうふ)ちゃあぬどぅまあさる。
D 湯(ゆう)沸(ふ)かすし(せ)え、物(むぬ)すがやあぬするぬ仕口(しくち)とお別(びち)がやら。
E 悪(や)な夢(いみ)見(ん)ち後(あとぅご)、息(いいち)ん吹(ふ)からん吹ちいすぬばあんあん。
F どぅく鼻(はな)吹(ふ)ちい強(じゅう)されえ、病(やんめえ)がやらん分(わ)からん。
G 実(みい)ぬ無(ね)えらん人(ちゅ)ぬどぅ、口吹(くちぶ)うちんする

日本語

@ 今は以前より、煙草を吹(す)う人は、多くは居ません。
A 梅雨時期には、、家の中には大抵、黴が生える
B エイサー演舞団が指笛を鳴らすことも演舞の一つだ。
C 芋にも色々あるが、ほくほくしているのが美味しい。
D お湯を沸かすのは炊事人の仕事とは別なのだろうか。
E 悪い夢を見た後、息も絶え絶えになっている場合もある。
F あまり鼾をかくのが、ひどければ病気かもしれない。
G 中身がない人ほど、ほらを吹くのである

【解説】
例文@「煙草吹ちゅん」は「煙草を吸う、煙草を吹かす」、「吸った煙を外に吐き出す」の意味です。
例文A「麹吹ちゅん」は「黴が生える」。「麹」は「味噌麹」は「酒麹」にも言いますが、地方によっては「かあぶい(黴)」を用いることもあります。
例文B「指吹ちゅん」は「指笛を鳴らす」の意味で、地方によっては「竿吹(そおび)ちすん」とも言います。
例文C「粉吹ちゅん」は、主に「(煮芋が)ほくほくするする」の意味で使われます。「ほくほくしている煮芋」を「粉(くう)吹(ふ)ちゃあ芋」と言います。
例文D「湯沸ちゅん」は首里語系で「お湯が沸く」の意味。那覇等では「湯ぬ沸(わ)ちゅん」と言います。
例文E「息吹ちゅん」は「息をする」。第162講「息」に関する慣用句参照。
例文F「鼻吹ちゅん」は「鼾をかく」。第141講の「鼻」に関する慣用句参照。
例文G「口吹うち」は「大言壮語」、「ほら吹き(をすること)」の意味。似たような意味で「大物言(うふむに)い」があります。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の()内に最も相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(米、口、湯、指、麹、息、鼻、風、竿、粉、味噌)

@ あんし、しからあさる所(とぅくる)んじ、( )吹ちゅし(せ)えあらんどう。
A 茶飲(ちゃぬ)みい欲(ぶ)しゃれえ、早(ふぇえ)く( )沸(ふ)かせえわ。
B 彼(あり)え酒(さき)ん飲(ぬ)まんあい( )ん吹(ふ)かんあい、大事(でえじ)な性入(しょうい)っちょおん。
C ( )吹(ぶ)ちゃあぬ言し(せ)え、なあ、誰(たあ)ん聞(ち)かんなとおん。
答え:
D ( )植(うゐ)いゆらあ、粉吹(くうふ)ちゃあやまし(せ)えあらに。
@ 指。
A 湯。
B 煙草。
C 口。
D 芋。

日本語意訳
@こんなに寂しい所で口笛を鳴らすものではないよ。
Aお茶を飲みたければ、早くお湯を沸かしなさい。
B彼は酒は飲まないし、煙草もすわないし、とてもしっかりしている。
Cほら吹きの言う事は、もう、誰も聞かない。
D芋を植えるならほくほく芋が良いのではないか。




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