2016年07月12日

第164講「色」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ くぬ色(いる)ぬ衣(ちん)(注)色脱(いるぬ)ぎとおくとぅ、色直(いるのお)しさな。
A 着物(ちん)ぬ色取(いるどぅ)(彩)いや、色取合(いるとぅや)あしし、決(ち)わまゆん。
B 他所(ゆす)ん人(ちゅ)、色(いる)、見(み)い分(わ)かし強(づう)されえ、むてえ栄(さけ)えさん。
C どぅく、魂脱(たましぬ)ぎいねえ、色(いる)しゅもおしゅん脱(ぬ)ぎゆん
D 色香(いるか)んありわる、実(じゅん)にぬ芙蓉(ふゆう)ぬ色(いる)んでぃ言(い)らりいる。
E 若者(わかむ)のお、色見(いるみ)い易(や)っさしが、年寄(とぅす)いや、色見(いるみ)いらん
F 今(なま)いや、諸治(むるのお)いし、色(いる)きさん、ましなとおさ。
G あんまあや、長(なげ)えさ柔(やふぁ)らち、色青(いりおお)じゃあなとおん。

日本語

@ このカラーの服色褪めしているから染め直ししよう。
A 着物の彩りは、配色で決まる。
B 余所者を差別し過ぎると、繁栄しない。
C あまり、魂消ると、顔色も失う
D 色香もあってこそ、本当の美人(の顔)と言われる。
E 若者は喜怒哀楽が顔に出易いが、年寄りは表情に出ない
F 今度こそ、全快し、血色も良くなっているよ。
G 母は長い間、病床に就いて、顔色が真白くなっている。

【解説】
文例@「色ぬ衣(ちん)」(注)又は「色ぬ着物(ちん)」は、元々は「着色した士族用の礼服」。「色脱ぎゆん」は「脱色する」、「顔色が悪くなる」の意味で、その名詞形は「色脱があ」です。
文例A「色取い」は「色取り(彩り)」。「色取合あし」は「色の取り合わせ」、「配色」の意味。
例文B「色、見い分かすん」は「人によって分け隔てを作り、差別する」の意味で、「色分かすん」とも言います。
文例C「色しゅもおしゅ」は、「ショック等で顔色を失う」の意味。「色そおもおそお」はその副詞。「色(いる)そおもおそお、倒りたん」で「顔面蒼白になって倒れた」。
文例D「芙蓉ぬ色」は「美人の代名詞」。
文例E「色みい易っさん」は「喜怒哀楽が顔に出やすい」、「目先の損得で態度を変えやすい」の意味。「色見いゆん」は「顔(表情)に出る」。「色見いらん」は「表情に表れない」。
文例F「色きさ」は「(顔の)血色」。前講のD、E、Fの「色」の意味に同じです。
文例G「色青じゃあ(色青ざあ)」は、「(病気等で徐々に)顔色が悪くなること」。

【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(色見い分かする、色きさぬましなとおれえ、色見い易いやくとぅ、色青じゃあないねえ、色そおもおそお)

@色(いる)ぬ出(ん)じとおれえ、なあ、強(ちゅう)てぃどぅ居(をぅ)る筈(はじ)やん。                
A色無(いるね)えんないねえ、たんきらんでえならん。
B人(ちゅ)、色分(いるわ)かするっ人(ちゅ)お、却(けえ)てえ、自(どぅう)がる色分(いるわ)かさりいる
Cあったに、地(ねえ)ぬ寄(ゆ)たれえ、色(いる)ん飛でぃ、逃(ふぃ)んぎたん。
D色見(いるみ)い易(や)っさくとぅ、ゆくし物言(むに)いんならん。
答え
@ 色きさぬましなとおれえ。
A 色青じゃあないねえ。
B 色見い分かする、色見い分かさりいる。
C 色そおもおそお。
D 色見易いやくとぅ。

日本語意訳@血色が良くなっていれば、もう、回復したのだろう。A顔色が悪くなったら、用心しなければならない。B人を差別したら自らも差別される。C急に地震が起きたので、真っ青になって逃げた。D顔に出やすいから、嘘をつくこともできない。

2016年06月29日

第163講「色」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ じじ内於(うちをぅ)とおてぃん、沖縄語(うちなあぐち)え、色数(いるかじ)あん。
A 同(い、ゆ)ぬ言葉(くとぅば)やてぃん、発音(はちうん)やシマにゆてぃ、色々(いるいる)あん。
B 一(てぃい)ちぬ語(くとぅば)んかいん、色(いる)んな発音(はちうん)ぬあくとぅ、沖縄語(うちなあぐち)語発音(ぐうん)や実(じゅん)に音(うとぅ)ぬグラデーションぬ如(ぐとぅ)どぅある。
C 玉棚(たまだな)ぬ焼物(やちむん)、色清(いるじゅ)らさあてぃどぅ、買(こ)おてぃ見(ん)ちゃる。
D 悪(や)な事(ぐとぅ)(注)しいねえ、必(かんな)じ、色(いる)に表(あら)わりゆん
E 銭事(じんぐとぅ)ないねえ色(いる)わきてぃ、色(いる)み変(が)あいするっ人(ちゅ)ん居(をぅ)ん。
F 怪我(きが)さあに、色(いる)ぬ飛(とぅ)どおたしが、今(なま)あ色(いる)ぬ出(ん)じとおん
G 色欲(いるゆく)ぬあるっ人(ちゅ)お、色好(いるし)ちやい、色(いら)あんでぃ言(い)らりいん。

日本語

@ 沖縄本島内であっても、沖縄語は多様にある。
A 同じ語でも、発音は、地域によって、様々である。
B 一語であっても、複数の発音があるので、沖縄語の語音は、まるで、音のグラデーションのようである。
C ガラス棚の焼物、美しいので、買ってみたのである。
D 悪事(あくじ)を働けば、必ず、顔色に出る
E お金の事となると、特に、態度が急変する人もいる。
F 負傷して、顔面蒼白になっていたが、今は血色がよい
G 色欲のある人は好色であり、すけべえと言われる。

【解説】
「色」には「色」の他、「顔色」、「態度」等の意味があります。「色黒う(色黒の人)」、「色白う(色白の人)」等は略します。

例文@「色数」は「数的に種々多々ある事」、「多様多種」。
例文A「色々」は「色々、様々」。Bの「色んな」もほぼ同じ意味です。
例文B「色んな」は「色々な」、「様々な」という意味ですが、「妙な」、「変な」、「異様な」という意味もあります。
例文C「色清さん」は風景などより、具体的な物体について「美しい」の意味です。
例文D「悪な事」(注)について「やなぐとぅ」は「悪事」、「やなくとぅ」は「やなぐとぅ」より軽い「悪い事」。「色に表わりゆん」は「顔(色)に出る」、「表情に出る」の意味。
例文E「色分きてぃ」は。「色み変わい」は「顔色の急変」ですが、「態度が急変(変節)」する事にもいいます。
例文F「色ぬ飛ぶん」は「(驚く等して顔面が)真っ青になる」で「色ぬ無えらんなとおん」とも言います。「色ぬ出じゆん」は「色が出る」、「血色が良くなる」。
例文G「色好ち」は「好色」。「色あ」は「好色な人」。
 
【応用問題】
例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(色み変あいすたん、色々、色分きてぃ、色数、色ぬ飛どおたん、色んな)

@ かわてぃ、自(どぅう)一人(ちゅい)勝手(がってぃい)やるっ人(ちゅ)お、人(ちゅ)ぬ事(くと)おさん。
A 外国(ぐぁいくく)んかいや異風(いふう)な物(むん)ぬ、幾(いく)ちん三(みい)ちん(注)あん。
B 嫌々(んぱんぱ)そおたるむぬ、銭(じん)見(み)したれえ、あった変(が)わいすたん。
C 妹(うっとぅ)お、どぅ惑(まん)んぐぃてぃ、色(いる)ん無(ね)えらんなとおたん
D 物(むぬ)ぬ考(かんげ)え様(よう)や、人(ちゅ)にゆてぃ、様々(さまざま)やさ。
答え:
@ 色分きてぃ。
A 色んな、色数。
B 色み変あいすたん。
C 色ぬ飛とおたん。
D 色々。

日本語意訳
@特に自分勝手な人は他人の面倒はみない。
A外国には妙なものが数多くある。
B嫌がっていたのに、お金を見せたら、豹変した。
C妹は狼狽して、顔色を失った。
D物の考え方は人によって様々だよ。
注:「幾ん三ちん」は「沢山」の意味の慣用句。

2016年06月10日

第162講「息」に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 長間(ながでえ)、走合(はあええ)しいねえ、息(いいち)ふぇえふぇえし、息吹(いいちふ)ちゅさ。
A 狭(い)ば所(どぅくる)お、息(いち)切(じ)らさぬ、息無(いいちま)でぃいしいぎさあやん。
B 息(いいち)ん欠伸(あくび)んしみらん値(あたい)ぬ仕口(しくち)やんでぃ聞(ち)ち、大息(うふいいち)さん。
C 息(いいち)ぐんぬん、息替(いいちげ)えいん、ならんでえ、泳(ゐい)じゆさん。
D 息穴(いいちみい)ん穿(ふ)がしわる、息(いいち)んしゆする。
E 息(いいち)とぅっ切(ち)ちょおたる童(わらび)ぬ息返(いいちけえ)えち、片心許(からくくるゆる)ちゃん。
F 相撲(しま)あ、一息(ちゅいいち)ん、憩(ゆく)らんようい、息(いち)ゃん張(ぱ)たてぃ取(とぅ)り。
G あんまさるばあや、息(いち)切(じ)りてぃ息(いちゃ)みいんならん

日本語

@ 長距離を走れば、喘ぎ喘ぎ激しく息をするよ。
A 狭い所は、息苦しくて、窒息しそうだ。
B 息つく暇も与えないほどの仕事だと聞いて、溜息をついた
C 息止め息継ぎもできないと、泳げない。
D 空気孔を貫通させてこそ、息をすることもできる。
E 息を詰まらせていた子供が息を吹き返し、ひとまず安心した。
F 相撲は、一息も休まず、息を止め腹に力を入れて取れ。
G 気分が悪い時は、息切れがして、息むこともできない。
 
【解説】
「息(いいち)」は糸満などでは「いき」。

例文@「息ふぇえふぇえ、息へえへえ」は「息をはあはああさせる事、喘ぐ」の意。「息吹ちゅん」は「激しく息をする」。
例文A「息切らさん」は「息苦しい」。動詞はGの「息切りゆん」ですが、この場合は「息切れする」の意味合いとなります。「息無でぃい」は「窒息」。
例文B「息ん欠伸んしみらん」は「息つく間もない」。「息んしみらん」とも言います。「大息」は「溜息」。
例文C「息ぐん」は「暫く息を止めておく事」。「息ぐんぬん」は「息ぐぬん」と発音しますので、「息ぐぬん」の表記が多いです。「息替えい」は「息継ぎ」また「息抜き(ちょっとした休憩)」の意味もあります。
例文D「息穴」は「通気口」。「息しゆすん」は「息(をすること)ができる」。
例文E「息とぅっ切ゆん」は「息を詰まらせる、噎せる」の意。「息ふぃっかからすん、喉たっ切ゆん」とも言います。
例文F「息ゃん張ゆん」は「息を止め、腹に力を入れてことをする、力む」の意味で「息むん」とも言います。
例文G「息切りゆん」は「息切れがする」。形容詞はAの「息切らさん」。「息むん」は「息む」で「息ゃん張ゆん」も同じ。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(息欠伸んしみらん、息ゃん張てぃん、息無でぃいすん、息替えい、息とぅ切ち)

@ 上(ゐい)ぬっ人(ちゅ)とぅ物食(むぬか)むるばすお、息(いいち)ふぃっかからち、まあくんねえん。
A 昔(んかし)え普請(ふしん)するばあや息(いいち)んしみらんようい、ちゃあばんないすたん。
B いちゃっさ、息(いちゃ)でぃん、一人(ちゅい)し(せ)え、木(きい)ぬ根(にい)ぐいや抜(ぬ)がらんたん。
C でぃちゃ、くまんじ、ちゅてえや憩(ゆく)らな
D 息穴(いいちみい)ぬ無(ね)えらあれえ、息(いいち)んならんなゆん
答え:
@ 息とぅ切ち。
A 息ん欠伸んしみらん、。
B 息ゃん張てぃん。
C 息替えいさな。。
D 息無でぃいすん。

日本語意訳:
@上の者と食事をするときは、息も詰まり美味しくもない。
A嘗ては工事をする場合は、息つく暇もなく、どんどん、やり続けた。
Bどんなに、息を止め力んでも、一人では、木の根っ子は抜けなかった。
Cさあ、ここで休もうではないか。
D空気孔がなければ、窒息する。




先頭頁 71