2016年10月12日

第170講「空(んな、から)」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 空物(からむん)とぅ空茶(からざあ)びけえ、みせいねえ、貧(ふぃん)相者(すうむん)ぬ如(ぐと)とおん。
A 空酒(からざき)、ちゃあ飲(ぬ)みいしいねえ、酒(さき)がくがなゆら。
B 空地(からじい)ぬ上(ゐい)ん空床(からゆか)ぬ上ん、足(ふぃさ)まんちしいねえ足ぬ痛(や)むん。
C あぬっ人(ちゅ)お、空威張(からいば)いさあに、、空咳(からざっくい)びけんそおん。
D 何(ぬう)ん食(か)まんようい、酒飲(さきぬ)むくとぅどぅ、空嘔(からゐいばち)そおる。
E 木薪(だむん)燃(め)えち後(あとぅ)ぬ空灰(からふぇえ)、畑(はたき)んかい持(む)っち行(ん)じ取(とぅ)らし。
F 長(なげ)えさ雨(あみ)ぬ、降(ふ)らな、まあんくん、空渇(からがあ)きそおん。
G 亡(ま)あちゃる人(ちゅ)ぬ空骨(からふに)ぬ供養(くよう)ぬ為(たみ)、空御花(からんぱな)うさぎら。
H 弦(ちる)ぬ鳴物(ないむん)ぬ空弾(からば)んち(ちぇ)え、良(ゆ)う響(ふぃび)ちゅん。

日本語

@ おかず無しの飯から茶だけ、召し上がると貧乏みたい。
A ストレートの酒を飲み続けると胃癌になるのだろうか。
B 地べたでも空床でも、正座すると、足が痛む。
C あの人は。空威張りして、空咳だけしている。
D 何も食べずに酒を飲んだから嘔(からえずき)しているのだ。
E 薪を燃やした後のは、畑に持って行ってくれ。
F 長らく、雨が降らず、どこもかしこも干上がっている。
G 死者の亡骸を供養する為に、御花米を供えしよう。
H 弦楽器の開放弦は、良く響く。

【解説】
例文@「空物」は「おかずなどのないご飯だけの食事の事」で「空米(からめえ)」とも言います。
例文A「空酒」は「つまみや食事をとらないでのむ酒」又は「水等で薄めない酒」の意味です。
文例B「空地」は「地べた」。「空床」は「何も敷いてない床」。
例文C「空威張い」は文字通り「空威張り」。「空咳」は「空咳(からせき)」。
例文D「空嘔(からゐいばち)」は「からえずき」。
例文E「空灰(からふぇえ、からへえ)」は「薪を燃やした灰」。「木薪」は「薪(たむん)」と同じです。
例文F「空渇き」は「井戸や川が干上がっている事」。
例文G「空骨」は「白骨」又「亡骸」。「空御花」は、「洗ってない祈願用の米」。「ぱな(花)」は「はな」の「古音」で北部や先島地方に残っています。
例文H「空弾んち」は「弦楽器における開放弦」又は「開放弦を弾く事」の意味です。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。答えは下欄です。
(空酒、空騒じ、空待ち、空乾き、空骨)

@ 空米(からめえ)びけん食(た)みいねえ、食(か)みぶらありなゆんどお。
A 昔(んかし)え、さあいないねえ、やあさ死(じ)にする人(ちゅ)ん居(をぅ)たんでぃさ。
B 洗骨(しんくち)え、なれえ、骨(ふに)なてぃから、すし(せ)えまし。
C 強(ちゅう)ばあ振(ふ)うなあし、何(ぬう)ん糅(か)てぃらんようい、酒(さき)飲(ぬ)むし(せ)えあらん。
D ハープお諸(むる)弦(じる)、指(いいび)なかい押(う)すらんようい、弾(は)んち鳴(な)らすんでぃさ。
答え:
@ 空物。
A 空渇き。
B 空骨。
C 空酒。
D 空弾んちし。

日本語意訳
@米だけ食べると、栄養不足になるよ。
A昔は旱魃になれば、餓死する人もいたとさ。
B洗骨(註)は、できれば、白骨になってからした方が良い。
C強がって、薄めないで酒を飲むものではない。
Dハープは全ての弦を開放弦で鳴らすのだとさ。
註:嘗ては「洗骨」の習慣がありました。

2016年09月29日

第169講「空(んな、から)」に関する慣用句・言い回しU

うちなあぐち

@ 相撲(しま)ん、唐手(とうでぃい)ん、空手(んなでぃい)し、するむぬどぅやる。
A 戦(いくさ)、終(う)わてぃ直(ちゃあき)え食(か)むしん、空汁(んなしる)びけんどぅやたる。
B 来(く)ららんでぃ言(い)れえ済(し)むるむぬ、人(ちゅ)、空(んな)待(ま)ちしみてぃ。
C 今(いま)前(めえ)や、まぎい頼(たる)がきゆしん、大概(てえげえ)、空頼(んなたる)がきどぅやる。
D とぅめい着(ち)ちゃる鳥(とぅい)ぬ巣(しい)や卵(くうが)ん無(ね)えな、空殻(んながら)やたん。
E 童(わら)ん達(ちゃあ)、揃(すら)あち、空口戻(んなくちむどぅ)すんちんあんな。
F くぬパソコンや空物(んなむん)どぅやくとぅ、ソフト入(い)りれえ。
G 地震(ねえ)ぬ寄(ゆ)ゆんでぃぬ警報(しらし)え、空騒(んなさわ)じがやたらあ。
H 費(ちく)りぬ多(うふ)さぬ、儲(もう)きてぃん、一時(いっとぅちゃ)ぬ空嬉(んなうり)っさどぅやる。

日本語

@ 相撲ん、空手も、素手で、やるものである。
A 終戦直後は、食べ物も、具の無い味噌汁だけだった。
B 来れないと言えば良いものを、人を待ちぼうけさせて。
C 昨今は偉い人を当てにしても、大抵、無駄な期待である。
D 探し当てた鳥の巣は、卵も無く、蛻けの空だった。
E 子供たちを集めて、何も食べさせないで帰すとは。
F このパソコンは、だから、ソフトをインストールして。
G 地震が起きるという警報は、空騒ぎだったのだろうか。
H 無駄な出費が多く、稼いでも、一時のぬか喜びだ。

【解説】
 「空」関連の造語は今でも盛んです。「空(んな)働(ばたら)ち」(無駄働き)、「空回(んなみぐ)い」(空回り)、「空動(んなんじゅ)ち」(無駄な動き)等。

例文@「空手」は「素手」、「手ぶら」等の意味で、部分的には前講の「空胴」に似ます。「空手(んなでぃい)空手(からでぃい)」とも言います。
例文A「空汁」は「具の入ってない味噌汁」。
例文B「空待ち」は「待ち惚け」、「無駄に待つ事」。
例文C「空頼がき」は「無駄な期待」、「空しい期待」等の意味。
例文D「空殻」は「空っぽ」、「蛻けの殻」等の意味。
例文E「空口」は「何も食べさせない事」。「空口戻すん」は「何も食べさせないで帰す」の意味の慣用的言い回し。「戻すんちんあんな」はニュアンス訳。直訳は「帰す事ってもあるのか」?。
例文F「空物」は「空っぽ」、「何も無い事」の意味。
例文G「空騒じ」は「空騒ぎ」。
例文H「空嬉っさ(空嬉っさ、空嬉さ)」は「ぬか喜び」。
 
【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(空働きち、空騒じ、空待ち、空嬉っさ、空頼がきどぅやんどお)

@ 今(なまいま)からあ、子頼(くぁたる)がきてぃん、何(ぬう)んならんどお
A いちゃんだ奉公(ぶうくう)すし(せ)えあらん。
B うんじゅ、ちゃあ待(ま)ちいし、くたんでぃとおん
C 今(なま)、考(かんげ)えいねえ、あぬばすぬ騒(さわ)じ事(ぐと)お、ただぬ浮(う)ち物(むん)どぅやたる。
D 後(あとぅ)ぬうじゅみ、何(ぬう)んあらなそおてぃ、いちゃんだん嬉(うり)っさしみてぃ。
答え:
@ 空頼がきどぅやんどお。
A 空働ち。
B 空待ち。
C 空騒じ。
D 空嬉っさ。

日本語意訳
@これからは、子供を頼っても意味無いよ。
A無駄働きするものではない。
B貴方を待ち草臥れている。
C今、考えると、あの時の騒ぎは空騒ぎだったのだ。
D結局、何でもないのに、人を喜ばして。

2016年09月26日

第168講「空(んな、から)」に関する慣用句・言い回しT

うちなあぐち

@ 親戚(ゑえか)ぬ家(やあ)、初(はち)巡(みぐ)いするばあや、空胴(んなどぅう)し(せ)え、行(い)からん。
A 空籤(からくじ)、引(ふぃ、ひ)ちゃあに、目空張(みいんなば)いどぅそおる。
B 空腸(んなわた)し(せ)え、仕口(しくち)え、ならん。
C 空屋敷(んなやしち)んかいや、長(なげ)えさ、空座(んない)いやならん。
D 空車(んなぐるま)ぬとぅめえららな、空捻(んなむでぃ)でぃいそおたん。
E 空(んな)食(ぐぇ)えさあや、当(あ)たい前(めえ)ぬっ人(ちゅ)おあらんどぅある。
F 空家(んなやあ)やくとぅんでぃち、空(から)足(びしゃ)し(せ)え、入(い)らんどお。
G 空畑(んなばたき)、返(けえ)すし(せ)え、何(ぬう)ん空難儀(んななんじ)え、あらんどお。
H泥道(どぅるみち)於(をぅ)とおてえ、車輪(ひゃあがあ)や、いいくる、空回(からみぐ)いすん。

日本語

@ 親戚の家を初めて訪ねる場合は、手ぶらでは行けない。
A 空籤を引いて、空しく目を開けているばかりだ。
B 空きっ腹では仕事ができない。
C 空き屋敷には、長らく、無駄に居ることはできない。
D 空車が探せなくて、無駄骨になっていた。
E 働かないで食う者は、普通の人間ではないのである。
F 無人の家だからといって、裸足で入るものではない。
G 空いている畑を耕すのは何も、無駄骨折りではないよ。
H泥道では、車輪は、大抵、空回りする。

【解説】「空」は日本語の「空(むな)」に対応します。その熟語は沖縄語に多いようです。ここでは、「から(空)」を含めます。
例文@「空胴」は「身一つ」、「素手」等の意味で、「空(んな)胴空胴(どぅうからどぅう)」とも言います。部分的に次講の「空手」と似ます。
例文A「目空張い」は「目を空しく開けている事」、「ぼんやりしている事」等の意味となります。
例文B「空腸」は「空きっ腹」、「空腹」な等の意味です。
例文C「空屋敷」は「何も無い屋敷」。「空座い」は「空しく居る事」。
例文D「空車」は「人の乗ってない車」で、嘗ては人力車の事ですが、現在はタクシー等にも言います。。「空捻でぃい」は「無駄骨」の意味です。「捻でぃゆん」は「捻る」の意味ですが、ここでは、「渾身を込めて(何かを)する」の意味です。
例文E「空食え」は「働かずして食う事」等の意味です。
例文F「空家」は「空き屋」の意味です。「空足」は「裸足」。なお、「空足」の語尾を長音にすると、「裸足の状態」の意味となります。、
例文G「空畑」は「何も植えてない畑」。「空難儀」は「無駄骨折り」、「徒労」等の意味です。
例文H「空回い」は「空廻り」。

【応用問題】
 例文・解説文を参考に次文の太字部分に意味に近い語句を左の( )内から選びなさい。
(空腸なてぃ、空畑、目空張いそおん、空家、空胴しえ行からん)

@ いちゃんだん、高物(たかむん)買(ご)うい、けえし、けえ、とぅるばとおん
A どぅくだら、やあさぬ 物(むぬ)考(かんげ)えんないびらん。
B 親(をぅや)ぬ家(やあ)んかい、巡(みぐ)ゆるばあや、ただ行(い)ちえならん。
C 何(ぬう)ん植(ゐ)いらってえ無(ね)えん畑(はる)お、後(あと)お、原(もう)どぅけえないる。
D 誰(たあ)ん住(す)まてえ居(をぅ)らん家(やあ)や、いっぺえ、しからあさん。
答え:
@ 目空張いそおん。
A 空腸なてぃ。
B 空胴し(せ)え行からん。
C 空畑え。
D 空家。

日本語意訳
@無駄に高額品を買ってしまい、呆然としてしまっている。
Aあまりにも、ひもじくて、物考えができません。
B実家に立寄る場合は、手ぶらでは行けない。
C何も植えてない畑は、いずれ原っぱになってしまう。
D誰も住んでない家は寂しい。




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