比嘉 清:作
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平成273

見知(みいし)らん[1]従姉(いちく、いちゅく)T

              比嘉 清

 

新暦(やまとぅぐゆみ)十一月(じゅういちぐぁち)んでぃ()ちん、昼間(ふぃるま)あ、(なあ)だ、(あち)さいびいん。十月(じゅうぐぁち)(はじ)頃迄(ぐるまで)え、要用(いりゆう)やた扇風機(しんぷうち)[2]()らんなゆるうっぴどぅやいびいる。

十月ぬ(なか)らから十二月(はじ)頃迄(ぐるまで)え、真夏(まなち)(ぐとぅ)し、ふみちぇえ(をぅ)らんくとぅ、(しぬ)じいやっさ()()たい(めえ)(くとぅ)がやらん()かやびらん。

やしが、四郎(しらあ)(うむ)やびたん。(かんげ)えてぃ()いねえ、(わらび)ぬば()お、十月(じゅうぐぁち)()わいまんぐるからあ(ふぃい)くなやびたん。学校(がっこう)衣替(くるんげ)えい、()たんようい、(ふぃい)くなゆたくとぅ、(あさ)あ、(ふぃい)さがたがたあさがなあ、学校んかい()じゃる(うび)いぬあいびいたん。

うんなある(ふぃい)高昼間(だかふぃるま)金城(かなぐしく)四郎(しらあ)携帯(きいてぃい)電話(でぃんわ)()やびたん。鳴らちょお()え、(うり)与那城(ゆなぐしく)(をぅや)(やあ)んかい()どおる(しいざ)太郎(たらあ)やいびいたん。

「あぬよ、四郎(しらあ)今日(ちゅう)(あさ)てえ、()ぎい(すう)ぬけえ()あちょおんでぃよお」

「あい、やんなあ。また、ちゅうちゃんやさやあ」

「ああくとぅよお」

「うぬ(なあ)城主(ぐしくすう)(やんめえ)どぅそおたがやあ」

()らなあ、だあ、近頃(ちかぐる)お、宮城(なあぐしく)(うとぅ)沙汰(さた)()かんくとぅ」

 四郎(しらあう)や、前々(めえめえ)から、与那城(よゆなぐしく)(をぅ)(やあ)や、西原(にしばら)[3]宮城(なあぐしく)(やあ)とお(ふぃざ)()っちょおたる(くと)お、粗々(あらあら)()かとおいびいたん。

「あひよお、()ってえ、うが(とぅう)からあ、やしが、ないれえ、(ふぇえ)く、あまぬ(やあ)んかい()ちゅんねえしす()え、ま()えあらん?」

 四郎(しらあ)や、自営業(どぅうちゅいあちねえ)そおたくとぅ、彼処走(あまは)此処走(くまは)いや、胴軽(ぢぅうが)っさ、する(くとぅ)ぬないびたん。

「おお、あんしすさ」

 (あざ)与那城(ゆなぐしく)お、宮城(なあぐしく)叔父(うざ)さあぬ(シマ)とお隣字(とぅないむら)同士(どぅうさあ)やいびいたん。やしが、四郎(しらあ)びけんや、(ふか)兄弟(ちょう)(でえ)とお()わてぃ、かあま南城(なんじょう)市どぅ宿元(やどぅむとぅ)とぅそいびいたる。

「おお、なあ、あんしすさ」

(かんがげ)えてぃ(とぅ)らしよお。だあ、()ぬん、ちゅてえ(ぐぁあ)しから、すがてぃ佐知子(さちこ)とぅまじゅん、(さち)なとおちゅさ」

 佐知子んでえ、太郎(たらあ)(とぅじ)やいびいたん。

 四郎(しらあ)や、仕事(しくち)んかい()じょおたる(とぅじ)智子(ともこ)携帯(きいてえ)電話(でぃんわ)()らちゃあに、(かた)やびたん。

「あぬよお、我母弟(わああんまあうっとぅ)宮城(なあぐしく)史春(ふみはる)叔父(をぅざ)さあぬ、今日(ちゅう)(あさ)、けえ()あちゃんでぃよお」

「やんなあ。又()った(ぐとぅ)やっさあやあ」

「やくとぅ、()のお、(なま)から、()()ゅうくとぅ、(いゃあ)()え、(やあ)んじ()っちょおけえ」

「やんなあ、あんし、今日(ちゅう)自一人(どぅうちゅい)し、()ちゅるばあ?」

「へえ」

「あんしいねえ、明日(あちゃ)(くと)お、如何(ちゃあ)なとおが」

()()だんでえ、()からん」

「あんせえ、()じっ()(あとぅ)から(かた)れえわ」

 四郎(しらあ)ぬ、西原(にしばら)宮城(なあぐしく)叔父(をぅざ)さあぬ(やあ)んかい、うち()ちゃ()え、うりから一時間びけん()じてぃからやいびいたん。きっさ、()さんないがたあなとおいびいたん。

 宮城家(なあぐしくぬやあ)屋門(やあじょう)石門(いしじょう)やいびいたん。石門や(いくさ)前迄(めえまで)え、あまくまんかい(ぬく)とおたんでぃぬ(くとぅ)やしが、戦後(いくさあと)お、なあ(ふる)でぃ、うかあさくとぅんでぃち、いいくる(くう)さっとおるむぬやいびいたん。(なま)ちきてぃ、(ぬく)とお()え、ふぃるましむんやいびいたん。

 うぬ石門(いしじょう)や、()ちん(んぶ)らあさんあいびいたくとぅ、(みぐ)てぃ()ゅうる御客(うちゃく)(ちゃあ)や、いいくる、「ちゃめ」んでぃち、()びやびたん。

()ぎい(すう)んでえ、宮城(なあぐしく)史春(ふみはる)徒名(あざなあ)なとおいびいたん。実名(しょうなあ)やか、()()っさんあたくとぅがやたら、(むら)(ちゅ)(ちゃあ)ん、親戚(うぇえか)(ちゃあ)ん、(うり)同士(どぅし)(ちゃあ)ん、(むる)、「()ぎい(しゅう)」んでぃる()ちょおいびいたる。

()(たあ)世代(でえ)(かんな)じ、徒名(あざな)()だい合図(いぇえじ)さいする()りどぅやいびいたくとぅ、当人(じんてぃい)()お、(んぱ)でぃん(おお)でぃんないびらんたん。

()ぎい(すう)や、六十(るくじゅう)(めえ)(まんぐr)(まで)え、村会(すんくぁい)議員(じいん)ぬんそおたる(くとぅ)んあてぃ、(うり)()あちゃる()(ふぃい)御悔(うく)やみ()いが(めえ)御客(うちゃく)お、()(ちが)あい違いし、まんどおいびいたん。

「あい、四郎(しらあ)汝身(いゃあみ)(どぅう)一人(ちゅい)どぅやん?」

 四郎(しらあ)ぬ、声枯(くぃいかあら)らあんかい、とぅん(けえ)えたれえ、(くさ)あんかい、()っちょおた()え、史春(ふみはる)叔父(をぅざ)さあ長女(ちゃくしゐなぐんぐぁ)米子(よねこ)やいびいたん。

米子や(どぅう)(すう)けえ()あちん、びってえんなとおる風儀(ふうじ)えあいびらんたん。彼女(うり)()()ゃあやんでぃ()しやか、(すう)ん、なあ、()ちゅる時分(じぶん)どぅやるんでぃち、やすんじとおる風儀(ふうじ)どぅやいびいたる。

「んん、(わん)一人(ちゅい)どぅやんどお、だあ、()(たあ)智子や、仕事(しくち)(ゆく)ららなよお。やしが、明日(あちゃ)あ、まんな、()らりいさ。あんし、出棺(しゅっくぁん)何時(なんじ)にやが」

明日朝(あちゃあさ)ぬ九時なかいや出棺やんでぃどお」

「うぬ(ふぇえ)くなあ。()(たあ)智子や、(くぁ)(ちゃあ)学校(がっこう)んかい()おてぃ()じからどぅ()らりいくとぅ、十二時(じゅうにじ)まん(ぐる)どぅないる(はじ)

「おお、あんやてぃん、()むんどお。()ってえ、あが(とぅう)からやるむぬ」

()(たあ)位牌(いふぇえ)()ちゃあや、大兄(うふやっちい)ぬるすんなあ」

「へえ、あんやしが、(あり)え、明日(あちゃ)どぅ内地(ないち)から(けえ)ゆる」

「いぇえ、正敏(まさとしい)内地(ないち)んかいどぅ(をぅ)んばあなあ」

「あまんじ、建築(きんちく)関係(くぁんきい)そおんよお」

「あんせえ、内地(ないち)からやれえ、にっかないんてえ」

(あさ)一番(いちばん)飛行機(ひこうち)やくとぅ、火葬(くぁそう)んかいや、かき()あゆる算段(さんみん)そおしが」

「やれえ、上等(じょうとぅう)やさ」

 仏壇(ぶちだん)(めえ)んか()かっとおる棺桶箱(くぁんちぇえばく)[4](なか)んかいや宮城主(なあぐしくすう)()んしらっとおいびいたん。()(らあ)(めえ)んかいや、二人(たいり)婆前(はあめえ)ぬ、彼見(うりん)ち、(なだ)くるくるうし、手巾(てぃいさあじ)さあに(なだ)(ぬぐ)やあ拭やあそおいびいたん。二人(たい)(とぅむ)に、()ぎい(すう)従姉(いちゅく)やいびいたん。

「あいええやあ、()ぎい(すう)、なあ(みい)()()さんばあなあ。汝身(いゃあみ)え、なあ、うっさどぅ、(むぬ)お、()むんな?」

うぬ(あとぅ)、うぬ婆前(はあめえ)()ちゃる(くとぅ)可笑(うか)さぬ、まんぐらぬ(ゐきが)(ちゃあ)や、(われ)えかんてぃい、けえ、そおいびいたん。(むる)声出(くぃいん)じゃち、(わら)ゆしんにじとおる風儀(ふうじ)やいびいたん。

「あっさみよお、()ぎい(すう)()(がう)(までぃ)(はだ)()しゃぎさそおる(ちら)うちきしい(くぁ)てぃ。汝身(いゃあみ)えなあ、(はだ)()しゃあ()えらんどぅあんばあなあ」。

 また、なあ一人(ちゅい)婆前(はあめえ)や、

「あいええ、()ぎい(すう)汝身(いゃあみ)え、なあ案内(あんねえ)()しく、()いんばあなあ。やしがなあ、汝身(いゃあみ)んやがてぃ八十(はちじゅう)やせえ。()いさくどぅやんどお、()ぎい(すう)(けえ)てえ、(いゃあ)家組(やあぐな)[5](わちゃ)らさんようい、だでえまなかい、(みい)()とぅいそおくとぅ、しょう()っちょおさ。(ぬう)心配(しわ)んさんようい、()りよおやあ。汝妻(いゃあとぅじ)ぬウタん、あまんじ、男飢(ゐきがう)がりさあに、()ちかんてぃいそおる(はじ)やるむんぬ、とお、(そう)まりい、()ちみそおれえ」

 うぬ()ぎい(すう)二人(たい)従姉(いちゅく)婆前(はあめえ)にちいてえ、四郎(しらあ)()ちゃる(うび)いやあたしが、だてえん、(はなしい)さる(うび)いや()えやびらんたん。

うぬ一人(ちゅい)婆前(はあめえ)ぬ、とぅん(けえ)えたれえ、()(らあ)(をぅ)(くとぅ)んかい()()ちゃる風儀(ふうじ)やいびいたん。

「あいなあ、うんじゅお、前金城(めえかなぐしく)四郎(しらあ)やあらん?」

 前金城(めえかなぐしく)んでえ、金城(かなぐしく)四郎(しらあ)(をぅや)(やあ)家号(やあんなあ)やいびいたん。

「うう、やいびいんどおさい」

「あっさ、あんし()(どぅう)さる。大人(うふっちゅ)けえなてぃやあ。とお、()(たあ)()ぎい(すう)()(とぅ)らしえ、うり」

 (はあ)(めえ)二人(たい)四郎(しらあ)(くと)お、()()っちょおる風儀(ふうじ)やいびいたん。棺桶箱(くぁんちぇえばく)(すば)から(はな)りゆしとぅまじゅん、今先(ななさちまでぃ)、しっくぇえはっくぇそおたる二人(たい)や、ちゅうちゃん、(われ)(がう)んかいけえなやびたん。

 四郎(しらあ)や、二人(たい)ぬあった()わい(よう)んかい、いふぇえ、可笑(うか)(うみ)いんさしが、にじてぃ、棺桶箱(わんちぇえばく)(なか)んかい面伸(ちらぬ)ばがらち()きやびたん。あんし、(てぃい)(うさ)()さびたん。

 (すば)んかいや、()ぎい(すう)長女(ちゃくしゐなぐんぐぁ)ぬ米子ぬ()ちょおいびいたん。()ぎい(すう)(とぅじ)ぬウタあ、()十年(じゅうにん)(めえ)ぐれえんじ、けえ()あちょおいびいたん。

「あが(とぅう)那覇(なあは)から()(とぅ)らち、()(ふう)うしどお、なあ」

「あらん、()のお、島尻(しまじり)南城(なんじょう)市からどぅやんどお」

 ()まりかあぬ(ちゅ)(ちゃあ)にとぅてえ、南部(しまじり)(ほう)まんぐらあ、(むる)(まとぅ)みてぃ「那覇(なあふぁ)」でぃち、片付(かたじ)きとおる風儀(ふうじ)やいびいたん。くめえきてぃ、(てぃい)ちなあ一ちなあぬシマぬ(なあ)()()え、(わちゃ)れえ(ぐとぅ)やいぎさいびいたん。

「あい、やたんなあ。御無礼(ぐぶりい)なとおさ」

 だあ、んちゃ、四郎(しらあ)やてぃん、まる平生(ふぃいじい)や、くまぬ(ちゅ)(ちゃあ)とお、なんぞお、ふぃれえ(ぐとぅ)()(をぅ)らんどぅあくとぅ、くまぬ人数(にんず)()(らあ)(たあ)(くとぅ)、くめえきてえ()からんてぃん、ふぃるましい(くと)お、あいびらんたん。

 四郎(しらあ)(くさあ)んかい(をぅ)たるたん(めえ)とぅ()わゆんでぃち、(あとぅ)しんちゃあさびたん。()ぬたん(めえ)や、棺桶箱(くぁんちぇえばく)(なか)()ばがてぃ()あびたん。()ちいやさんぐうとぅう、()ぎい(すう)とぅ物語(むぬがたい)(ぐぁあ)する(ぐと)おいびいたん。

普通(ふつう)やれえ、(ふぃい)くないるばすんじどぅ、いいくる(ちい)(みぐ)いぬ、()っさなてぃ、脳溢血(のういっきち)んでえなかい、けえ()あするむぬやしが、あっさ、汝身(いゃあみ)え、(ぬく)ばあっとるばすに、けえ()あすんでぃんあんなあ」

 うり()ち、米子(よねこ)声枯(くぃいか)(ぐぃい)し、()ぎい(すう)()わい、(いれ)えやびたん。

「あらんどお、うんちゅうさい、()(たあ)(すう)や、(ぬく)ばあっとおくとぅどぅ、けえ()あちょおいぎさいびいんどお。昨日(ちぬう)や、かわてぃ(ぬく)ばあっとおた()えやあ、やくとぅ、()った(すう)や、『うんなばあや、(なあ)草刈(くさか)らんでえ』でぃちゃあま、草刈(くさか)いかちそおたる風儀(ふうじ)やしが、どぅくまた、(あし)()(じゅう)さぬ、(ふぃい)(にち)()き、なやあにどぅ、けえ(とお)りとおたる風儀(ふうじ)やいびいんどお。あっさ、(じゅん)に、(なあ)んじ物吐(むぬは)ち、ゐんちゃてぃ、(とお)りとおみせたんでぃ。(とぅないぬ)ぬカジャア[6]うんちゅうぬ、しょう()ぎてぃ、(たし)()くちゃるば()お、なあ、(ちい)湿()ったとおみせえたんでぃさ。救急車(ちゅうちゅうしゃ)()でぃ、病院(びゅういん)ぬんかい()おてぃ、()じゃるむぬやしが、だあ、(ちゅ)けぬんちょおん、(みい)(さみ)みらんぐうとぅう、今日(ちゅう)()(がた)、けえ()あちゃるばすどぅやみせえんどお」

「いぇえ、あんどぅやたん?。んちゃ、昨日(ちぬう)や、(ぬく)ばあとおたくとぅやあ」

(あち)さん()えらん、(ふぃい)くん()えらんでぃ(うむ)てぃ、油断(ゆだん)どぅんしいねえ、んちゃ、大事(でえじ)ないっさあやあ」

 米子や、()ぬうんちゅうとぅぬ()ちゃい()ちゃい()まちゃれえ、四郎(しらあ)側向(はたん)かやびたん。四郎(しらあ)兄弟(ちょうでえ)姉妹(うとぅだんざ)あ、高昼間(たかふぃるま)まんぐるなかい、()ばがてぃから、きっさ、(やあ)んかい(むどぅ)てぃ()ちゃんでぃぬ(はなしい)やいびいたん。あんやんでぃち、()かたれえ、四郎(しらあ)や、長居(ながいい)やならんでぃち(うむ)やびたん。

 よういいふぃ(ぐぁあ)()っちから、四郎(しらあ)や、米子んかい()かやびたん。

「とお、あんせえ、()のお、(やあ)とぅめえらんでえないびらん。又明日(あちゃ)()ゅうさ」

 四郎(しらあ)や、うち(まあ)るう、そおたる御悔(うく)やみさあ(たあ)んかい、御礼(ぐりいい)さがなあ()っちゃびたん。

果報(かふう)しどお、なあ、四郎(しらあ)(また)明日(あちゃ)ん、難儀(なんじ)(とぅ)らしよお」

 うぬばす、四郎(しらあ)や、ちゅうちゃん、いふぃえ、異風(いふう)なあ(うむ)やびたん。

 (をぅや)(やあ)とぅ()まぬ宮城家(なあぐしくぬやあ)とお、(ぬうう)んでぃち(ふぃざ)()っっちゅんねえなたがやあ。

 やしが、四郎(しらあ)ぬ、ありくり、(かんげ)えてぃん、()かゆるむ()おあいびらんたん。ただ、四郎(しらあ)(わらび)ぬばす、大概(てえげえ)十年(じゅうにん)ぐれえが(ゑえだ)四郎(しらあ)(あんまあ)かたくじら(ゐきが)(をぅや)とぅ()ぎい(すう)(ぬう)がなぬ(くとぅ)なかい、(くく)やたる(くとぅ)(うび)いや、胸内(んにうち)(ふか)くんかいあいびいたん。

祝儀(しゅうじ)()こういぬ(くとぅ)なかいがやたら、ユタ(ぐとぅ)なかいがやたら、あらんでえ(また)(しい)()んでえ札入(ふだい)りぬ(くとぅ)なかいがやたら、二人(たい)(をぅや)ぬ、けえ()あちゃる(なま)なてぃから、(ぬう)()かゆるむ()お、あいびらんたん。

ただ、あいゆかんぬ(さき)いやたる四郎(しらあ)(ゐきが)(をぅや)ぬ、まるけえてぃなあ、酒飲(さきぬ)みがちいなあ、()ぎい(すう)んかい、ごうぐちひゃあぐちす(くとぅ)ん又、(ちむ)(うび)いぬあいびいたん。

(やあ)とぅ宮城(なあぐしく)(やあ)(くとぅ)にちいてぃ、四郎(しらあ)んかい()()かする家組(やあぐな)あ、(たあ)(をぅ)いびらんたん。(ぬう)(くとぅ)にちいてぃぬ高足(だかびしゃ)(じけ)えがやいびいたら。

 くぬ(めえ)(をぅ)らんなたる四郎(しらあ)(あんまあ)世音(よね)や、西原(にしばら)んかい()どおる(どぅう)(うっとぅ)二人(たい)(すば)んかいや、四郎(しらあ)(くう)さいにいや、いいくる(あし)びいが()おてぃ()ちゅたるむぬやしが、(ぬう)がやら、(うっとぅ)ぬ史春ぬ(はた)びけんかいや、()おてぃ()かったる(ちむ)(うび)いや、なんずかあ、()えやびらんたん。

 四郎(しらあ)(ゐきが)(をぅや)とぅ(くく)やたんでぃ()しやか、(けえ)てえ、(あんまあ)とぅが(くく)やたらあ、(なま)とぅなてえ、なあ()かやびらん。

「とおあんせえ、明日(あちゃ)やあ」

 声枯(くぃいか)らあ米子や、あん()ち、従弟(いちゅく)()(らあ)門口(ぞうぐち)(までぃ)(ちけ)えさびたん。

 門口(ぞうぐち)(はた)んかいや、四郎(しらあ)()ちゃる(うび)いぬある(ゐなぐ)()っちょおいびいたん。

一目(ちゅみ)()じいねえ、(とぅし)え、()(ぐり)さたしが、いやでぃん、三十半(さんじゅうなか)らぐれえや、あらんがあらんでぃ(うま)ありいやびたん。婦人(あんまあ)風儀(ふうじい)んや()えやいびいたしが、また、ゆゆ(じゅ)らさんあたくとぅ、なあだ若女(わかゐなぐ)(ぐとぅ)んあいびいたん。やしが、(あとぅ)から()ちゃる(はなしい)なかいや、(じゅん)ねえ、四十余(しじゅうあま)いやたんでぃぬ(くとぅ)やいびいん。

 (はだ)(いる)(しる)さぬ、さじりとおる(はな)あ、(たか)ねえいし(ちゅ)らさい、(くる)スカートから()じとおる(ふぃさ)(くる)ストッキング()ちょおいびいたしが、若女(わかゐなぐ)(ふぃさ)(ぐとぅ)、さじりとおいびいたん。

 (ゐなぐ)色香(いるか)あ、四郎(しらあ)目鼻(みいはな)んかい、やふぁやふぁとぅ()っち()ゅうる(ぐと)おいびいたん。

 やしが、(ちゅ)てえ(ぐぁあ)しいねえ、四郎(しらあ)や、うん(ぐと)おる(ゐなぐ)()ちゃる(うび)いぬあんでぃ()え、(かん)(ちげ)えがやたらあ()からんでぃ(うみ)ゆんねえないびたん。何時(いち)(みい)がやら、四郎(しらあ)や、(ゐぬぐ)後風儀(うしるふうじ)[7]、ちゃあ(なが)みいそおいびいたん

 いやでぃん、学生(がくしい)時分(じぶん)とぅか、(びち)(とぅくる)(ゐなぐ)とぅるばっぺえとおる(はじ)んでぃ、(うむ)やがなあ、(ゐなぐ)(ちら)()だん(ふう)うなあさあに、石門(いしぞう)から()じらんでぃそおたるばすやいびいたん。

「はいさい[8]

 (ちゅ)(ぐぃい)なかいする合図(ええじ)()かりやびたん。(くぃい)(ぬうし)え、うぬ()()らん(ゐなぐ)(むん)やいびいたん。

 四郎(しらあ)や、いちゃっさ、とぅぬまぬうそおいびいたがやあ。(うま)あじふらあじ、()(ぐとぅ)

「あい、はいさい」

んでぃち、(いれ)えやびたん。

「うんじゅお、与那城(ゆなぐしく)前金城(めえかなぐしく)四郎(しらあ)どぅやみせえさに」

「やんどお」

(わん)ねえ、高江洲(たけえし)麻里子んでぃ()ちょおいびいさ、見知(みいし)っっちょおてぃ(くぃ)みそおれえ」

 四郎(しらあ)やふぃるまさ(うみ)いさがなあ、いふぃえ、どぅまんぐぃてぃが(をぅ)たらん()かやびらんたん。

 見知(みいし)らん(ゐなぐ)どぅやる(はじ)やしが、(ぬう)んでぃち、(どぅう)(なあ)()っちょおがやあ。

(はじ)みてえ、あいびらんどお

 んでぃち、麻里子や、「んふふ」んでぃち、(みい)(われ)えさびたん。

 四郎(しらあ)や、ゆくん、とぅぬうまぬうさびたん。みったい、まあぬ(たあ)がやたら。

 (ゐなぐ)お、四郎(しらあ)ぬ、とぅぬうまぬうそおる(ちら)(みい)(くち)()ち、今度(くんど)お、(うす)(われ)えさびたん。

「かあま(ふぇえ)くに、くまぬ十五夜(じゅうぐやあ)(むら)(あし)びぬばすに、いいくる、行逢(いちゃ)あてえ()あびらんたん?」

 (うび)らじに、四郎(しらあ)面々(ちらぢら)あとぅ、(ゐなぐ)()あびたん。

あんし、だでえまなかい、まるまるうとぅ、(うび)()じゃさびたん。肝内(ちむうち)んじ、「あっはあ」んでぃ、()びやびたん。

「あい、(うび)()じゃちゃさあ。行逢(いちゃ)いや、さしが、うんにいや、(はなしい)さる(うび)いや()えらんたしがるやあ…」

 (たし)かに、うんにいや、四郎(しらあ)中学校(ちゅうがっこう)ぐれえどぅやたい、また、あいゆかんぬ()らん(ちゅう)んやたくとぅ、他所(ゆす)ジマぬ(ちゅ)とぅ(はなしい)する(じん)(ぶん)ある(わき)え、()えやびらんたん。

「あんやたしが、(わん)ねえ、()(うび)いとおたんどお」

「いぇえ」

「なあ、(やあ)んかいどぅやんなあ」

「だあ、なあ(やあ)とぅめえらなんでぃ(うむ)てぃどぅ、()っち、()ょおしが」

「あんし、うんじゅお、(やあ)や、何処(まあ)やくとぅ?」

「かあま南城市どぅやしが…」

「あが(とぅう)なあ、やしがあんせえ、安慶名(あぎなあ)(みち)しがらどぅやせえ、とお、(わん)汝車(いゃあくるま)んかい()してぃ(とぅ)らさらんなあ」

 四郎(しらあ)車持(くるまむ)っちょおる(くと)お、()たい(めえ)(くとぅ)とぅしち、(かんげ)えとおる風儀(ふうじ)やいびいたん。

 やしが、安慶名(あぎなあ)や、(みち)しがらあ、あいびらんたん。四郎(しらあ)島尻(しまじり)んかい()かゆるばあや、いいくる勝連(かっちん)城址(ぐしくあとぅ)(すば)(みち)から沖縄(おきなわ)[9]市ぬ(ああ)()大道(うふみち)んかい()りてぃ、与那原(ゆなばる)往還(おうくぁん)なありいどぅ()ちゃびいる。安慶名(あぎなあ)遠回(とぅうみぐ)いどぅやいびいたる。

やしが、()たい(めえ)(くとぅ)、うんな(くとぅ)んでえ()いねえ、折角(しっかく)()してぃ(とぅ)らしんでぃ()ちょおるむぬ、無礼(ぶりい)なやびいん。あらぬ、無礼(ぶりい)んでぃ()しやか、四郎(しらあ)や、(ぬう)がやら、うぬ(ゐなぐ)とぅなあふぃん、物語(むぬがたい)(ぐぁあ)しい()しゃん、あいびいたん。

「おお、おお、()むんどお、とおあんせえ」

 四郎(しらあ)(くるま)あ、()中古車(ふるgるま)(ぐぁあ)どぅやいびいたしが、エンジンや、いそうしゃぎそおる音立(うとぅた)てぃとおいびいたん。

 「やしがまた、うんじゅお、(じゅん)に、我事(わあくとぅ)()(うび)いとおてえさあ」

 本当(ふんとう)や、四郎(しらあ)や、()()え、麻里子とぅ宮城(みやぎ)史春(ふみはる)(すう)とお、如何(ちゃぬ)(よう)間柄(まがら)なとおがんでぃ、()かんでぃるそおいびいたしが、うぬ分別(ぶんびっち)え、(ちぶる)から(とぅ)でぃ()()えやびらんたん。

「んふふ」

 麻里子や、(じち)え、「だああんせえ、うんじゅお、うんにいや、(むら)(あし)びえ、()だな、(わん)びけんどぅ、()じゃあ()じゃあそおたるむぬ」でぃ、()()わい、(くく)(われ)(ぐぁあ)どぅさびたる。

「あんし、四郎(しらあ)(すう)や、(なま)ん、芝居(しばい)とぅか組踊(くみうどぅい)そうなむ()お、()ちやん?」

()ちやんどお」

「やしが、なあ、(むら)(あし)びそおなむぬん、組踊(くみおどい)そおなむぬん、うんにいやか、けえ(した)りてぃやあ」

「やくとぅよお、(じゅん)沖縄中(うちなあじゅう)が、あんしゅかんでぃん、うち()わてぃ、いっそうから、大和(やまとぅ)()いけえおし…」

 

四郎(しらあ)や、うぬ(ゐなぐ)(はじ)みてぃ、()ちゃ()え、(たし)中学(ちゅうがく)時分(じぶん)やたる(はじ)んでぃ(うむ)やびたん。

うんにいぬ西原(にしばら)村遊(むらあし)びんじ、四郎や、()(やらび)やたるばすぬ()(ゐなぐ)ぬんかい、目惚(みいぶ)りけえそおいびいたん。

 (どぅう)(しま)んかいや(をぅ)らん風儀(ふうじい)面影(ちらかあぎ)んそおい、(ふく)ん、(かば)ばさい、(ちゅ)らさんあいびいたん。(ぬう)んでぃちん、ふぃるまさ()え、彼女(うり)容貌(かあぎ)え、まあにん()えらん風儀(ふうじい)やる(くとぅ)やいびいたん。

 やしが、(なま)あ、四郎(しらあ)大人(うふっちゅ)なやあに、(とぅじ)んとぅめえとおる()(ゐい)(なま)やれえ、(ぬう)(うゎあ)()(ぐとぅ)(かんげ)えらんようい、(ちむ)()してぃ、物語(むぬがた)(ええ)する(くとぅ)んないびいん。

「あんし、うんじゅお、(しょう)安慶名(あぎなあ)(ちゅ)どぅやるい」

 安慶名(あぎな)んでぃ()いねえ、与勝(かっちん)半島(ゆなぐしく)から、具志川(ぐしちゃあ)(まじり)(まち)なとおいびいたん。

 かわてぃ与勝(かっちんゆなぐしく)半島(はんとう)(わら)(ちゃあ)や、(をぅや)から「でぃか、()慶名(ぎな)んかい()おてぃ()か」でぃ()らりねえ、でえじな、いしょうさ[10]ぬないびらんたん。

 金城(かなぐしく)家組(やあぐな)あ、いいくる七月(しちぐぁち)(しょう)(ぐぁち)(こお)()のお安慶名(あぎなあ)んじする(なりい)やびいたん。(むっとぅ)ん、正月(しょうぐぁち)(こお)(むん)ぐれえや、まるけえてえ、那覇(なあは)平和通(ひいわどおり)りんかい、()ちゅるばあんあいびいたしが…。

安慶名(あぎなあ)市場(まち)[11]んかい、(ふぇえ)りんちいねえ、何時(いち)やてぃん、(かんな)じ、(まあ)()ばぬさびたん。うぬまあさ()ばあ、夜中(ゆなか)(までぃ)(ぬく)とおいびいたん。(をぅや)ん、旨さ()ばんかい、にじららんがあたらあ、また(かんな)じ、天麩羅(てぅんぷらあ)()おてぃ、(くぁ)んかい()なさびいたん。()たい(めえ)(くとぅ)(をぅや)くるん、()なびたん。

「ましやあ、安慶(あぎ)(なあ)んでぃ()いねえ、市場(まち)んかいや、(まあ)あさ(むん)ぬんまんどおい」

「あらんどお、安慶名(あぎなあ)(ちゅ)やてぃん市場(まち)んかいや、まるけえてぃなあどぅ()ちゅんどお」

「いぇえ、やんなあ。やしが、毎日(めえにち)(まち)から(まあ)あさ()ばぬ()ゃあに、()塩梅(あんべえ)やあらんなあ」

「あっさ、()(かな)城主(ぐしくすう)や、あんし餓鬼(がち)まい物言(むに)いし」

 (ゐなぐ)片口(かたくち)(われ)え、けえさびたん。

「やしが、(わん)ねえ、(むとぅ)からぬ安慶名(あぎなあ)(ちゅ)おあらんどおやあ」

「へえ、あんせえ、まあん(ちゅ)やくとぅ?」

(むと)安勢里(あしり)

「へえ、やんなあ」

 やくとぅどぅ、(ちら)木目(むくみ)ん、(ちゅ)(づく)いそおるんでぃ、四郎(しらあ)(うむ)やびたん。安勢里(あしい)(ちゅ)んでぃ()いねえ、津堅(ちきん)(ちゅ)とぅ()ぬむん、琉球(るうちゅう)んかい、かあま、あまん()から(をぅ)たる先住民(さちゆうぬちゅ)なとおいびいん。()(ちゅ)(ちゃあ)や、今帰仁(なちじん)(むとぅ)()糸満(いちゅまん)先島(さちしま)んかいんまんどおいびいたしが、津堅(ちきん)(ちゅ)安勢里(あしい)(んちゅ)(かあぎ)え、一目(ちゅみ)()じいねえ、和蘭(ウランダ)がやらんでぃ(うま)ありゆるあたい、色分(いるわき)きてぃ()わとおい、(たあ)がん()かやびいん。

()(ふか)(ちゅ)(ちゃあ)や、(うふ)さ、いきらさあ、あしが、琉球(るうちゅう)んかい(あとぅ)から()ゃる大和人(やまとぅんちゅ)とぅか、大陸(てえぐく)(ちゅ)東南(ふぇえ)アジアん(ちゅ)とぅ()んちゃあ、けえなやあに、(いき)らくけえなとおるむぬやいびいん。

()んな(ちゅ)(ちゃあ)(くとぅ)()っちょおたる四郎(しらあ)や、学者(がくしゃ)あ、あらんたしが、沖縄人(うちなあんちゅ)お、ただ(じょう)文人(むんじん)大陸(てえりく)風儀(ふうじい)弥生(やゆいん)(ちゅ)んでぃゆる色分(いるわ)きぬしい(よう)んかいや、いふぃえ、(ちが)てえ(をぅ)らんがあらんでぃ(うみ)いとおいびいたん。

 琉球(るうちゅう)んかいや、弥生人(やいいんちゅ)とぅ縄文人(じゅうむんちゅ)びけえのおあらな、先言(さちい)ちゃる安勢里(あしり)()堅人(きんちゅ)とぅか、湿()ったい(みみ)(ちゅ)[12]とぅかねえぬ(びち)先住民(さちうちなあんちゅ)(をぅ)たんでぃち、(うむ)とおびいたん。

 

 四郎(しらあ)中学校(ちゅうがっこう)一年生(いちにんしい)やたるばすぬ十五(じゅうぐ)()()三日目(みっかみい)(ふぃい)やいびいたん。学校からぬ(むどぅ)やあ、かたがた、大信座(たいしんざ)宣伝車(しんでぃんぐるま)()(らあ)(むら)(みぐ)とおいびいたん。

「ゴ当地ノ皆サン、コチラハ、大信座ノ宣伝マイクデゴザイマス。来ル○○日、夜7時ヨリ、与那城映画館ニテ、…」

 沖縄(うちなあ)芝居(しばい)(むる)沖縄語(うちなあぐち)なかいどぅ、そおたるむぬやいびいしが、宣伝(しんでぃん)マイクぬ村回(むらみぐ)いびけえんや、ヤマトゥ(ぐち)さあにそおいびいたる。

うり()ちょおたる道端(みちばた)大人(うふっちゅ)同士(どうさあ)ぬ、

「あっさ、あっ(たあ)芝居(しばい)しいやかん、ぞおい、村芝居(むらしばい)ぬる面白(うむさ)さる。(かわ)てぃ、西原(にしばら)()ぎい主達(すうたあ)ぬ、そおる大原城(ううはらぐしく)ぬる面白(うむ)さる」

 四郎(しらあ)や、(どぅう)叔父(をぅざ)さぬ、あんし、()くぃいぬ(たか)さがやあんでぃ、(うみ)いねえ、いしょうさぬないびらんたん。

(どぅう)(むら)びけんやあらんようい、まんぐらぬ(むら)んじ、あんし、沙汰(さた)さりゆるあたい、西原(にしばら)村芝居(むらしばい)(うとぅ)(とぅゆ)まっとおいびいたん。

十五夜(じゅうぐや)(はじ)みぬ(ゆる)お、(どぅう)(むら)村芝(むらしば)()()ち、二日目(ふちかみい)や、四郎(しらあ)祖母(はあめえ)()まり故郷(ジマ)やる()安名(んな)村芝(むらしば)()()じいが()ちゅる()りなとおびいたん。

十五(じゅうぐ)夜祭(やあ)(しい)(ふぃい)四郎(しらあ)や、いっそうまぬ(とぅし)(ぐとぅ)(あんまあ)世音(よね)なかい、「西原(にしばら)村遊(むらあし)びんかい()おてぃ()ちゅくとぅ、()こうとおき」んでぃ()らりやびたん。

やしが、四郎(しらあ)(ちむ)()りらりやびらんたん。(あんまあ)とぅまあがなんかい、()ちゅしやか、(どぅし)(ちゃあ)とぅ(あし)ぶしえまし。

「あんまあ、()のお()かんどお」

「あい、()が」

()ちい()しゃあ()えらんとおてぃ」

 ()物言(むぬい)(よう)さあに、四郎(しらあ)(しい)()(ちゃあ)ん、(むる)中学生(ちゅうがくしい)ないねえ、(あんまあ)とお、何処(まあ)んかいん、()かんなとおいびいたん。うぬ(くとぅ)ん、んちゃ、(くぁ)(ちゃあ)大人(うふっちゅ)なてぃ()ちゅる(しるし)どぅやら(はじ)やんでぃん(うみ)いんさしが、(あんまあ)や、目笑(みいわれ)えさあに、()やびたん。

今度(くんどぅ)びけんどぅやくとぅ、まじゅん、()(とぅ)()え」

 (あんまあ)(さび)っさぎさる声聞(くぃいち)ち、四郎(しらあ)ん、(あんまあ)(ちむ)(ぐる)しくなやあに応え(いれ)やびたん。

「あんせえ、今度(くんどぅ)(までぃ)びけんどぅやんどお」

()が、(どぅし)とぅ何処(まあ)がなぬ村芝居(むらしばい)やてぃん()じいが()ちゅる()(ええ)どぅやたんなあ」

 四郎(しらあ)何処(まあ)(たあ)とぅん、まじゅん、何処(まあ)がなんかい()ちゅるくぬ()え、()(をぅ)いびらんたん。ただ、(ぬう)がやら(あんまあ)とぅまじゅん、()ちゅ()え、いふぃえ、(ちら)()じかさんでい(うむ)ゆる年頃(とぃぐる)どぅなとおたる(はじ)やいびいたん。

隣村(とぅないむら)西原(にしばら)あ、(あんまあ)()まり故郷(ジマ)んやい、彼女(あり)(をぅや)(やあ)ぬある(とぅくる)やくとぅ、四郎(しらあ)や、でえじなぬ(くう)さいにいから、折目(うゆみ)節日(しちび)ぬば()お、いいくる、(あんまあ)なかい()おらってぃ()ちゅる(とぅくま)んやいびいたん。

やくとぅ、西原(にしばら)四郎(しらあ)にとぅてえ、()たい(めえ)(くとぅ)(どぅう)(しま)(ぐとぅ)隅々(みいみい)てえでえ、()っちょおいびいたん。

四郎(しらあ)や、(あんまあ)(をぅや)(やあ)んかい()じ、仏壇(ぶちだ)ぬんかい手押合(てぃいうさ)あちょおる(ゑえだ)西原(にしばら)村屋(むらやあ)んかい、()ばがやびたん。ないれえ、(あんまあ)から(はな)りい()しゃんあたくとぅやいびいん。

村屋(むらやあ)()え、(むら)二才(にいせえ)(たあ)女小(あんぐぁあ)(たあ)が、今日(ちゅう)すぬ(しば)()稽古(ちいく)そおびいたん。

 なあだ中学生(ちゅうがくしい)どぅやたくとぅ、四郎(しらあ)(くみ)(をぅどぅい)言葉(くとぅば)あ、粗々(あらあら)どぅ()かゆる、大概(てえげえ)()かやびらんたん。

 やしが、うりん、また、()たい(めえ)(くとぅ)やいびいたん。

 組踊(くみをぅどぅい)言葉(くとぅば)んでぃ()え、(じゅん)に、平民(ひゃくしょう)ぬまる平生使(ふぃいじいちか)とおる言葉(くとぅば)とお、あい()わてぃ、うちなあぐち風儀(ふうじい)()びとおるびけんぬ()和口(まとぅぐち)()んちまんでぃ、大概(てえげえ)(つく)言葉(くとぅば)どぅなとおたくとぅんやいびいん。

 四郎(しらあ)小学生(しょうがくしい)から中学生(ちゅうがくしい)ぬばす(まで)え「方言撲滅運動」ぬ万事(ばんじ)やいびいたくとぅ、大概(てえげえ)ぬ、(うや)(ちゃあ)(ふか)大人(うふっちゅ)(ちゃあ)ん、(くぁ)(ちゃあ)(わら)(ちゃあ)んかい、芝居(しばい)言葉(くとぅば)(なら)あするっ(ちゅ)お、むさっとぅ(をぅ)いびらんたん。

 やてぃん、ういんにいや、うぬ(くと)お、()たい(めえ)んでぃが(うま)あっとおたらあ、大人(うふっちゅ)(わらび)ん、(とぅむ)(たあ)(ちむ)()きゆる(ちゅ)お、(をぅ)いびらたんらん。

 さてぃ、()さんでぃなてぃ、村屋(むらやあ)んかい(ちゅ)(すり)(はじ)みやびたん。

 四郎(しらあ)や、芝居(しばい)や、なれえ、(あんまあ)から(はな)りてぃ、()じゅる(くとぅ)にそおいびいたん。(あんまあ)や、()まり故郷(ジマ)やる西原(にしばら)んじ(うとぅ)とぅめえてぃ、んまんかい()どおたる(どぅう)(うっとぅ)二人(たい)とぅ、ちゅまなやあに、村屋(むらやあ)(なあ)んかい()かっとおる(むしる)上辺(うゎあび)んじ、姉妹(ちょおでえ)物語(むぬがたい)そおびいたん。

母妹(あんまあうっとぅ)(ちゃあ)や、四郎(しらあ)ぬ、まじゅんあらん(くと)んかい、いふぃ(ぐぁあ)(ちむ)()かいそおる風儀(ふうじ)やいびいたん。

「だあ、()(たあ)四郎(しらあ)や」

「んまりかあいんかいどぅ(をぅ)(はじ)どお」

「なあ、んちゃ、(をぅや)から(はな)()しゃる年頃(とぅしぐる)んやくとぅやあ」

(さび)っさあないる(はじ)えやしが、世音(よね)よ、う()えなあ仕方(しかた)()えらん(くとぅ)どぅやんどお」

 四郎(しらあ)や、(どぅう)一人(ちゅい)村屋(むらやあ)(なあ)()(きい)(すば)んじ、()っち、芝居見(しばいん)ちょおいびいたん。

 うぬうちなかい、組踊(くみをぅどぅい)大原城(ううわらぐしく)」ぬ(はじ)まやびたん。

大原(ううわら)按司(あじ)え、(いくさ)なかい()きやあに、(てぃち)なかい、かちみらってぃ、(どぅう)(まあ)大綱(うふじな)さあに(たば)らりやびたん。

やしが、大原(ううわら)按司(あじ)え、片膝(かたちんし)()てぃてぃ、(ぬう)どぅくぃいどぅんでぃ、()びやがなあ、()てぃてえる片足(かたふぃさ)()ぎたやがあんで(うみ)いねえ、舞台(ぶてえ)(ゆか)んかい、パンみかち(うる)すしとぅまじゅん、うぬ(うふ)(じな)(たあ)(うでぃ)し、(ふぃ)()やびたん。うぬ(とぅくる)ぬどぅ、()組踊(くみをぅどぅい)一番(いちばん)見所(みいどぅくる)やいびいたん。

毎年(めえにん)、うぬ見所(みいどぅくる)ないねえ、見物人(ちんぶちに)のお、(かんな)じ、(むる)いっそうから、(てぃい)ぱちぱちさびたん。うぬ(とぅくる)びけんや、婦人方(あんまあたあ)ん、ゆんたく、()ちゃあに、舞台(ぶてえ)どぅ見詰(みいち)きとおいびいたる。

世音(よね)とぅ彼女(うり)(うっとぅ)(ちゃあ)や、(どぅう)(うっとぅ)大原(ううわら)按司(あじ)