沖縄タイムス「唐獅子」掲載 提供 有限会社 南謡出版
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八重山古謡にみるオモロの面影  (掲載2007.3.2)
日本語版 うちなあぐち版
 
 喜舎場永cによれば、首里王府による「おもろさうし」の結集事業は第四回に宮古、第五回に八重山の民謡が対象になっていたが、中断されたとのことである(『八重山古謡(上)』序文)。

琉球古典民謡の殆どが八八八六調の韻を踏む琉歌形式に移行したのに対し、現存する宮古、八重山、与那国の古謡の多くはオモロと同じ詩形(対句形式など)であり、語句使いもオモロ的である(「おもろさうし」の「よわれ」、「たまわれ」が八重山古謡では、「ようり(やうり)」、「たぼうり」となる)などオモロ時代の香りを今に残す。

同書によれば、八重山の各島各村には、ある数以上(例えば波照間では、ジラバなど四種を各八十首以上)の古謡を暗誦した者を音取役(ねどりやく)と称したという。宮古や八重山に現代の波が押し寄せたのは人頭税廃止(一九〇二年)以降である。その時までオモロ的時代が続いていたといってよいだろう。

だが、詩形がオモロ的でも、特に八重山古謡の歌詞の多くは、オモロ的でない。官製歌謡集として神歌などにかたよる「おもろ」の性格から、庶民の匂いがする歌謡は採用してないからである。八重山古謡には奔放な恋歌、労働歌そして史料としても参考にもなる長い叙事詩もある。その豊かさは「おもろ」の比ではないが、離島での結集事業が予定通り行われていたとしても、王府の編纂方針に合わず、採録は、ごく一部に止まっていたかもしれない。

偏りの強い「おもろ」の欠陥を宮古や八重山の古謡は補う。本島におけるオモロ的時代の庶民の生活などを類推させるのだ。現代の本島の恋歌(民謡)を作る感性も突然、現われたものではなく、オモロ的時代からの血筋であろう。旋律も現在、古典系と民謡系があるようにオモロ系と庶民系とで異なっていたかもしれない。

本島にもオモロ語は残る。「おもろ」の「けよ」、「けお」は、「今日」であるが、前者は「キユ」として糸満市宇江城などに残る。民謡「だんじゅかりゆし」のはやし「ハイセ」は、「おもろ」の「は(走)りやせ」である。

宮古や八重山などの古謡が「おもろ」に数多く結集されていれば、未詳語の多いオモロ語の解明に貢献できたかもしれない。

注:字数等の関係で「唐獅子」と文言が違うところが若干あります。


 喜舎場永cにゆいねえ、首里王府ぬ、「おもろさうし」ぬ結集事業や第四回んじ宮古、第五回んじ八重山ぬ民謡が対象んかいなとおたんでぃぬくとぅやしが、中断さったんでぃぬくとぅやん(『八重山古謡(上)』序文)。

琉球古典民謡ぬ多(うふ)くが八八八六調ぬ琉歌形式んかい変わてぃんじゃるむんやしが、今(なま)あぬ宮古(みゃあく)、八重山(ゑえま)、与那国(ゆぬん)ぬ古謡ぬ多くおオモロとぅ同(い)ぬ詩形(対句形式んでえ)やい、語句使(ぢけ)えんオモロ的やん(「おもろさうし」ぬ「よわれ」、「たまわれ」が八重山古謡うとをてえ、「ようり(やうり)」、「たぼうり」とぅなゆん)んでえ、オモロ世ぬ香(かば)、今に残(ぬく)ちょをん。

うぬ書物(しむち)にゆいねえ、八重山ぬ島々村々(しまじまむらむら)んかいや、ある数以上(例れえ波照間んじえ、ジラバんでえ四種ゆ各八十首以上)ぬ古謡、覚(うび)いとをる者(むん)や音取役んでぃち言ちゃんでぃぬくとぅやん。宮古んでえ八重山んでえんかい近代ぬ波ぬ、寄(ゆ)し返えらち来(ち)ゃしえ人頭税廃止(一九〇二年)ぬ後(あとぅ)やん。うにいまでぃオモロ世ぬ続(ちじ)ちょをたんでぃいちんしむるはじ。

やしが、詩ぬ形がオモロぎさるむんやらわん、かわてぃ八重山古謡ぬ歌詞ぬ多くお、オモロぎさあねえらん。官製歌謡集とぅしち神歌(かみうた)んでえんかいかんちょをる「おもろ」ぬ性分から、庶民かじゃすぬ歌謡んでえや採用さってえ居らんくとぅやん。八重山古謡んかいや奔放な恋歌(くいうた)、労働歌あんしまた史料とぅしちん参考んかいないる長叙事詩んあん。うぬ豊かさあ、「おもろ」とお、比(く)なびららんしが、例(たとぅ)い、離島うとをてぃぬ結集事業ぬ企(くぬ)み通(どぅう)い行わりたんてえまん、王府ぬ編纂方針とぅ合たらな、採録や、くうてん小(ぐゎあ)どぅやたるはじ。

神歌「おもろ」ぬ足らあんとぅくるゆ宮古んでえ八重山んでえぬ古謡や補(うじな)とをん。本島んじぬオモロ的世ぬ庶民ぬ暮らし方んでえ、類推しみゆるむぬやくとぅやん。今ぬ本島ぬ恋歌(民謡)作ゆる性(しょう)ん、あったに、現わりたるむのおあらな、オモロ世からぬ筋(しじ)やらはじ。旋律(ふし)ん現在(なま)、古典系(こてんむん)とぅ民謡系ぬあんねえしオモロ系とぅ庶民系とお、違とをたるはじ。

本島んかいんオモロ語や残とをん。「おもろ」ぬ「けよ」、「けお」や、「今日」やしが、前者や「キユ」とぅしち、糸満市宇江城んでえんかい残とをん。民謡「だんじゅかりゆし」ぬ囃子(ふぇえし)、「ハイセ」や、「おもろ」ぬ「は(走)りやせ」やん。

宮古んでえ八重山んでえぬ古謡が「おもろ」んかい、ちゃっさきいなあ結集さっとをたれえ、分からんくとぅばぬまんどをるオモロ語ん、解かゆるくとぅんかいないがさらんわからん。

注:字数等ぬ関係なかい「唐獅子」とぅ文言ぬ違とをるとくるぬくうてん小あいびいん。