ことばは文化であるという。単に、意志を伝達するだけなら、そら覚えの外国語でも何とか用を足す。だが、心や感情などといった思いを語るとき、外国語ではどうにも伝えることができないニュアンスの違いを思い知るときがある。共同体（国、地域また民族）ごとに異なる言語は単語や文法あるいは音韻の違いだけではない。長い歴史を通して、人々の生き方、考え方、行動パターンといった共同体の個性を反映した独自の様式（文化）と共に確立されたのがことばである。「思い」は、「心」から発せられるものであるから「ことばは心である」ともいえる。それを共同体レベルに拡大して考えれば、言語は「民族の心である」ということになろうか。言語の違いは心の違いにまで及ぶのである。

さて、沖縄は今でこそ日本の一地方であり、かつての琉球語が、大方、「日本語の一方言」として片付けられてしまった今でも、沖縄人が思い描く「日本人」はヤマトゥンチュと同一ではない。沖縄人は「日本人」であることまでは認めるが、決してヤマトゥンチュであるとは思っていない。そもそも沖縄人自身が本格的に日本志向し始めたのは長い歴史のなかでもここ六十年ほどでしかない。今でも多くの沖縄人に、ウチナアンチュ対ヤマトゥンチュという対置意識が認められるのは、殆どは皮膚感覚からのものである。心の文化が深層化し、さらには皮膚化するにいたるまで時が経過したのだ。

さまざまな系統の言語が複雑に重なり合う西欧においては、人々はどの言語系統に属するかというより今ある差異に敏感である。ＥＵの統合は多言語主義を提唱することで実現したといえるし、言語の細分化は、さらに活発である。分離・対立より統合化という画一化の流れの中でこそ、独自性ひいては民族心が刺激されるのだろう。歴史と背景が異なるので、一概に沖縄との比較はできないが、ＥＵ統合と沖縄の日本への併合には、「画一化」という共通項をもつ。共同体の独自性はまずは言語に求めるのが普通のようである。

なぜ、うちなあぐちに目を向けるかとよくきかれる。沖縄人のチムグクルだからと答えたらカッコ良すぎててれた。自分のことばを使うのに理由など必要だろうか。

注：字数等の関係で沖縄タイムスの「唐獅子」と文言が違うところが若干あります。

ことぅばあ文化やんでぃぬくとぅやん。ただ、思（うみ）とをるくとぅ伝（ちて）えゆるびけんやらあ、やな覚（うび）いぐぁあそおる外国語やてぃん役立ちゅん。やしが、チムグクルんでえ感情んでえ、肝（ちむ）ぬ思い語ゆるばそお、外国語しえ、ちゃしん伝えゆるくとぅぬならんニュアンスぬ違えみぬあぬくとぅ、思い知ゆるばすぬあん。共同体（国、地域また民族）ぬかじなかい違とをる言語や、単語、文法うりに音韻が違とをるびけんやあらん。長えさる歴史（りきし）通（とぅう）ち、人（ちゅ）んちゃあぬ暮らし道、考え方、行動パターンんでえねえそをる共同体ぬ個性ゆ表わちょをる独（どぅう）なあくるぬ様式（文化）とぅまじゅん、立てぃらってぃちゃしがるくとぅばやる。「思い」や、「肝」から出（ん）じゆるむぬどぅやくとぅ「くとぅばあ肝やん」んでぃちしむん。うぬくとぅ、共同体レベルし考えいねえ、言語や「民族ぬ肝やん」んでぃ言ちんしみいがすら。言語ぬ違えみえチムグクルぬ違えみまでぃ及（うゆ）ぶるばすやん。

さてぃ、沖縄（うちなあ）や今（なま）あ日本ぬ一地方とぅなやい、へえくぬ琉球語が、てえげえ、「日本語ぬ一方言」やんでち、けえ片付（かたぢ）きらっとをる今ちきてぃ、うちなあんちゅが考えとをる「日本人」んでぃしえヤマトゥンチュんでぃしとお同（い）ぬむのおあらん。うちなあんちゅお「日本人」やるくとぅまでえ合点（がてぃん）すしが、じょういヤマトゥンチュやんでえ思てえをらん。あたまから、うちなあんちゅくるが本格的に日本志向し始みたしえ長えさる歴史ぬなあかうとをてぃん、くぬ六十年ぐれえなむんどぅやる。今ちきてぃ多（うふ）くぬうちなあんちゅぬ頭（ちぶる）んかい、ウチナアンチュ対ヤマトゥンチュんでぃゆる対置意識ぬあしえ、いいくる皮膚感覚からぬむぬやん。ちむぬ文化ぬ深層化さあい、あんしまた皮膚化すぬあたい時（とぅち）ぬ経っちょをるばすやん。

いるんな系統ぬ言語ぬまちぶいかあぶいそおる西欧んじえ、人んちゃあや、じるぬ言語系統ぬ組（ぐう）やがんでぃゆるくとぅやか、今あぬ違えみんかいどぅ敏感やる。ＥＵぬ統合や多言語主義提唱すぬくとぅにゆてぃ成たんでぃいちんしむい、言語ぬ細分化や、ゆくんはねえちょをん。分離・対立すしやか統合化んでぃゆる画一化ぬ流りぬ中うとをてぃる、独自性うりからまた民族心が刺激さりいるばすやるはじ。歴史とぅ背景ぬ違とぉをくとぅ、まるまるうとぅ沖縄とぅぬ比較（ふぃっちょう）やならんはじやしが、ＥＵ統合とぅ沖縄が日本ぬんかい併合さったるくとお、「画一化」んでぃゆる共通項持（む）っちょをん。共同体ぬ独自性や、まじえ言語（くとぅば）んかい求（むとぅ）みゆしがる普通やいぎさる。

何（ぬ）が、うちなあぐちんかい、あんししゅうみ持っちゅがんでぃ、ゆう訊（ち）かりいん。うちなあんちゅぬチムグクルやくとぅんでぃち、いれえたれえ、どぅくカッコ良たさぬ恥じかさ思いさるばすやん。自（どぅう）ぬくとぅば使ゆるうぬ理由（わき）までぃん言ゃんでえならんがや。