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現代生活とうちなあぐち  (週刊レキオ掲載 2006.08.17)
日本語版 うちなあぐち版

うちなあぐちと語彙

うちなあぐちについてよく「語彙が少ない」という言葉を耳にする。

以前、知人に「また来週や」と挨拶したら、「来週んでえや、ヤマトゥグチどぅやしが」と返された。先日、「店長」はうちなあぐちで何というかと訊かれた。

そもそも「来週」、「店長」という漢語は中国語を起源として日本語化した語である。古くから使われた漢語もあれば、「社会」「階級」などのように近世に造られた和製漢語もある。西洋の文物を翻訳するなどの必要性から造られた和製漢語の増大によって日本語はこの百年ほどの間に著しい変化を遂げた。現代日本語は漢語なくしてその表現に事欠く。社会変化に適応するための変化である。次いで和製漢語が中国や韓国でも使用されていることは特筆しておこう。漢語はその言語の語音(クセ)で発音されることによってその国や地域の言語と化する。「先生」は日本語では「センセイ」、北京語では「シエンション」、沖縄語では「シンシイ」である。

沖縄語においても組踊脚本において既に漢語が使われており、「沖縄対話」に見る明治初期頃までの琉球語においても漢語が多く使われ、発音も沖縄式(例「世界」は「シケー」)であった。明治の琉球含む漢字文化圏のように漢語を自国語化して使う感性があれば、「『曜日』は沖縄語で何というのか」などという奇問はないはずである。言語の語彙は使用する生活(社会)環境で決まるのであって、最初から生活に関係ない語彙を持っているはずがない。

世界に最も普及している英語でさえ、その語彙の約半分はフランス語といわれる。フランス語(パリ周辺の方言)自体も語彙は豊かな方でなく、多くはラテン語の流れである。そのラテン語(イタリアの地方語から発展)も語彙をギリシャ語から補っている。このように、繋がりあい重なりあっているのが言語である。日本語は漢語を通して中国語と繋がり、英語はフランス語等を介してギリシャ語等と繋がる。

「方言ニュース」など、漢語(ヤマトゥグチ)を混ぜるうちなあぐちについて、「本当のうちなあぐちでない」もしくは「らしくない」いう言葉もまたよく耳にする。ある言語について「らしさ」という場合、殆どは音韻的特徴(クセ)の狭い意味に限られるのであって、例えば、フランス語彙を使う英語を「英語らしくない」とか、漢語を使う日本語を「日本語らしくない」というのは聞かない。

漢語を交えるうちなあぐちを「本物でない」とか「違う」とかいう指摘は、死語に対するものならともかく、生きた言語に対しては何の意味もない。私の生活上知りえる地域である糸満、勝連・与那城及び読谷辺りでは、うちなあぐちを日常語とする人々が多い。彼らは当然ながら無意識の中に漢語を使用しているので「語彙が少ない」とか「うちなあぐちらしくない」とかいう意識はない。

沖縄語の復興及び発展は、何も難しい理屈の上に成り立つものではない。とにかく使用しさえすれば、そのまま復興に繋がり、ごく自然に発展する。一部の人々の間では、書き言葉レベルまで到達し、メールのやりとりや創作活動含め実現されていることなのである。

注:字数等の関係で「週刊レキオ」と文言が違うところが若干あります

うちなあぐちとぅ語彙

うちなあぐちにちいてぃ、いいくる「語彙ぬ少(いき)らさん」んでぃぬくとぅ、ゆう聞(ち)ちゅん。

かあま早(へえ)く、知っちょおりいんかい「また来週や」んでぃち挨拶(ええさち)されえ、「来週んでえや、ヤマトゥグチどぅやしが」んでぃちぬ返事(ふぃじ)。くぬ前(めえ)、「店長」や、うちなあぐちなかいや何(ぬう)んでぃ言(ゆ)がんでぃち訊(たじ)にらったん。

あたまに「来週」、「店長」んでぃゆる漢語や中国語ゆ起源とぅしち日本語化そをる語やん。かあまんかしから使(ちか)あらっとをる漢語んあれえ、「社会」「階級」んでえねえし近世んじ造(つく)らったる和製漢語んあん。西洋ぬ書物(しむち)ゆ翻訳(ふんやく)すんとぅかぬ必要から造らったる和製漢語ぬうすまさ増(うわ)あちゃるくとぅなかい日本語や、くぬ百年(ひゃくにん)びけんぬ間(ゑえだ)なかい、ひるまさあい変わたん。現代ぬ日本語や漢語ぬねえらんあれえ、なあ言い表わし苦(ぐる)くなとをん。世変わいんかいふさあゆるたみぬ変化やん。次いでぃに、和製漢語が中国んでえ韓国んでえんじん使あらっとをるくとお強々(つうづう)とぅ書ちょをかな。漢語お、うぬ言語ぬ語音(クシ)なかい発音さりいるくとぅにゆてぃ、うぬ国んでえ地域ぬ言語とぅなゆん。「先生」や日本語しえ「センセイ」、北京語しえ「シエンション」、うちなあぐちしえ「シンシイ」やん。

うちなあぐちんじん、組踊脚本うとおてぃ、きっさ漢語ぬ使あらっとをい、「沖縄対話」んじ見(ん)だりいるぐとぅ明治初みぐるぬ琉球語んじん漢語ぬ多く使(ちか)あらってぃ、発音ぬん沖縄式(例「世界」や「シケー」)やたん。明治ぬ琉球ん合わち、漢字文化圏とぅいぬぐとぅ漢語ゆ自(どぅう)ぬ言語とぅさあい使ゆる肝(ちむ)んあれえ、「『曜日』え、うちなあぐちし、ちゃあし言が」んでぃぬ異風な質問やねえらんはじ。言語ぬ語彙や、うり使ゆる生活(社会)環境ぬ中うとをてぃ、なてぃちゅうるむんどぅやる初(はじ)みから生活んかい関係ねえらん語彙持(む)っちょをるわきえねえらん。

世界(しけ)んじ最(むっとぅ)ん普及そをる英語がんちょおん、うぬ語彙ぬ半分びけんやフランス語んでぃ言ゃっとをん。フランス語(パリまんぐらぬ方言)自体ん語彙や豊かあ、あらな、多(うふ)くお、ラテン語ぬ流りどぅやる。うぬラテン語(イタリアぬ地方語から発展)ん語彙やギリシャ語から補(うじ)なとをおるむぬやん。うんなくんなし、まちぶいかぶいそをしがる言語やる。日本語お漢語を通ち、中国語とぅ繋(ちな)じ、英語おフランス語んでえ通(とぅう)ち、ギリシャ語んでえとぅ繋じょをん。

「方言ニュース」んでえ、漢語(ヤマトゥグチ)混んきゆるうちなあぐちにちいてぃ、「じゅんにぬうちなあぐちえあらん」、あらんでえ「らあさあねえらん」でぃぬ話ん、またゆう聞くちゅん。ある言語にちいてぃ「らあさん」んでぃ言るばすお、いいくる音韻的特徴(クシ)んでえぬ狭意味(いいばいみ)なかいどぅ使いるむんどぅやる、例(たとぅ)れえ、フランス語彙使ゆる英語ゆ「英語らあさあねえん」とぅか、漢語使ゆる日本語ゆ「日本語らあさあねえん」んでぃゆる話しや聞ちぇえんだん。

漢語まんきゆるうちなあぐちえ、「本物のおあらん」とぅか「違ゆん」とぅかぬ言しえ、死語に対(てえ)するむんやれえしむしが、生ち言語んかい対するむんとぅしえ何(ぬう)ぬ意味んねえらん。我が暮らち知っちょをる地域やる糸満、勝連・与那城うりからび読谷(ゆんたんざ)まんぐらんじえ、まるひいじいうちなあぐち使とをる人(ちゅ)んちゃあんまんどおん。彼(う)ったあや、当い前ぬくとぅ、何ん考えらんようい、漢語使とをおくとぅ「語彙ぬ少らさん」とぅか「うちなあぐちあさあねえん」とぅかぬ考えやねえらん。

沖縄語ぬ復興うりから発展や、何ん難(むちか)さる理屈(でぃくち)なかい成とをおるむんやあらん。何やらわん、ちゃあ使いそをちいねえ、うぬまま復興んかい繋じ、なんくる発展すん。一部ぬ人んちゃあにとぅてえ、うちなあぐちえ、書ちくとぅばレベルまでぃ成とをい、メールぬ送(うく)たい受きたいとぅか創作活動ん合あち、きっさ実現やなとをん。

注:字数等ぬ関係なかい「週刊レキオ」とぅ文言ぬ違とをるとぅくるぬくうてん小ああいびいん。