うちなあぐち散文会
          作品集
11
  トップページへ戻る
  散文会作品一覧へ戻る
散文会会員 
比嘉 清 (糸満市)

平成
181228

戦場ぬヨネ(短編小説)

今度(くんど)(わあ)あんまあヨネぬ七回忌んかい当たゆん。

あんまあぬ(くと)(どぅう)(をぅや)どぅやくとぅ、当たい(めえ)(くとぅ)、いるいるとぅ(うび)いてえ(をぅ)ん。やしが、(わん)ねえ九人(くにん)兄弟(ちょう)姉妹(でえ)ぬ中んじえ戦後(いくさあとぅ)()まりぬ六番(るくばん)(みい)どぅやくとぅ、我が()まりらん前ぬあんまあぬ事お知らん。やてぃ近頃(ちかぐる)お我が知らんヨネぬ事、分かい()しゃんでぃぬ(うみ)いぬ(つう)くなてぃちょおん。あんし、(わん)にん(とぅし)(とぅ)てぃが居ら、兄弟()(ええ)んでえうとおてぃ、あばあやっちい(たあ)んかい、いいくるあんまあぬ(くとぅ)()ちゅる事ぬ(うふ)くなてぃちょおん。ヨネぬ(わらび)ぬばすから(いくさ)()(ぐる)(までぃ)ぬ話や()ちゅるかじ、(むる)(みい)くに聞ちゅる話なやい、ゐいりきさんあしが、ひるまさる話んまんどおん。

我ねえあんまあが()ちちょおるばすに、なあふぃん、あんまあとぅたんかあなてぃ、いるんな(むぬ)(がた)(ええ)(ぐゎあ)そおけえ()むたるむんでぃ思いんすい、()(ぬう)んでぃち、うんなゆちみん()えらんたがやんでぃありくり考えゆる事んあん。童ぬばすお確かにあいゆかぬ(ふぃん)(すう)なやい、物喰(むぬくぇ)えじくぬ事びけんどぅ考えとおたる、家組(やあぐな)同士(どうさあ)ぬ物語合小やなんずかあ、すぬゆちみえ無えらんたぬ覚いぬあん。又(どぅう)家庭(ちねえ)()ちなやい、親から離りてぃ暮らすんねえしなてぃ(あとぅ)からん、親とお、いち()ゆるかじ、(いま)(めえ)世間(しきん)話小どぅすたる、あんまあが若さるばすぬ話んでえや、しえやあんでぃゆぬ考えやむさっとぅ無えらんたん。

うんなくんなぬ(わき)ぬあてぃ、(なま)からぬ話や大概(てえげえ)やあばあやっちいから()ちゃる話どぅやる。(かわ)てぃ戦ぬばすぬ話や実人(じんてぃい)からあ聞ち(ぐり)さるあたい、()ちかさる話やん。

やしが、くぬ話すぬ前なかい、言い訳そおかんでえならん事ぬあん。

ヨネやまる平生(ふぃいじい)やゆんたくしみいねえ、(じゅん)(んかし)(ちゅ)(ぐとぅ)(んぶ)らあさ物言(むに)いすたしが、(やま)(とぅ)口あびらしいねえ、三才(みいち)なやあ童ぬ如、てえてえ(むに)()いどぅすたる。子守(くゎむ)やあさがちい、まるけえてぃなあどぅ、(しょう)学校(ぐぁっこう)(かゆ)とおたんでぃぬ事やくとぅ、大和口(やまとぅぐち)んうら覚い小どぅそおたる事お仕方ぬ無えらん事やたん。やてぃヨネぬ事、語ゆるばすお(かんな)じまでぃ、うちなあぐちし、さんでえならんばすやん。

ヨネや明治(みいじ)四十四年(ゆんじゅうゆにん)なかい与那城(ゆなぐしく)(すん)西原(にしばる)伊禮門家(いりいじょう)んじ生まりたん。隣村(とぅないむら)ぬ字与那城ぬ前比嘉(めえひじゃ)全功(すう)とぅにいびちさしえ、ヨネが

二十歳(はたち)ぬばすやたん。翌年(ゆくどぅし)長男(ちゃくし)ぬ全太郎ぬ生まりたん。うぬ(あとぅ)、ひるましむん必じ三年(さんにん)()しいなかい、(ゐきが)(ぐゎ)四人(ゆったい)(ゐなぐ)ん子四人生まりたるばすやたん。やしが、全太郎が小学校四年(ゆにん)ぬばす、(やんめえ)なかい、くぬ()うしなたるばすお、ヨネや四十九日(しんじゅうくにち)までえ泣ちどぅ暮らちょおたんでぃぬ事やん。

四男(ゆなん)ぬ全清が二才やたるばすぬ話どぅやる。(ふぃい)さん(あち)さん無ん四月(しんぐぁち)(なか)らやたん。六年(るくにん)(めえ)、戦ぬあたんでえ(うま)あらんあたい長閑(ぬどぅか)な昼やたん。ヨネとぅ全清が(かあ)んじゆくとおたん。(とぅない)ぬ我如古チルが(みぐ)てぃ()ゃあいヨネとぅゆんたくし(はじ)みたん。ちゅてえ小しから、ちゅうちゃん村屋(むらやあ)(かに)ぬ何がな、そう()ぎとおる如、ちゃあ鳴いさん。うぬ後から村ぬ男ぬ一人(ちゅい)走合(はあええ)さがなあ、道なありいあびとおたん。

「アミリカーど、アミリカーぬ来ょおしが」

如何(ちゃあ)しえ()むが、チル」

ヨネやどぅ(まん)ぎぃてぃ色青(いるおお)ざあなとおたん。

「ヨネ、(へえ)(はしる)(まどぅ)(むる)()みらんあれえ」

チルや(をぅ)てぃ()ちょおたん。二人(たい)し家ぬ戸とぅ格子(くうし)窓ぬあるっさ閉みたん。チルや意地(いじ)ゃあやたるはじ。戸ぬ穴小(みいぐぁあ)から(ふか)様子(ゆうし)、すう見そおたん。ヨネや仏壇(ぶつちだん)ぬ前んじ全清抱ちふとぅふとぅうそおたん。あんし、何時(いち)(みい)がやら、右手(にじりでぃい)なかい全清ぬ口(うす)とおる事に()()ちゃん。あんし、(るく)年前、(ぐう)ぬ中んじん(しゅう)(よう)(じゅ)ぬ中んじん()ぬ事そおたる事、(うび)()じゃちょおたん。

 

区長や(あかちち)から村中(みぐ)てぃ歩っちょおたん。門口(じょうぐち)んじ、(ほうち)かちそおたるヨネ()(しば)(べえ)く語たん。きっさ、アミリカ軍が読谷(ゆんたん)まんぐらんかい上陸そおんでぃぬ話やたん。ヨネやとぅんもうてぃ、御主(うす)(めえ)()くちゃん。前比嘉家ぬ家ぬ事お御主前ぬ(ちむ)に掛かやあやたん。

年明(とぅしあ)きてぃから沖縄守備隊ぬ予備(ゆび)(ひい)とぅし召集さったる(をぅとぅ)ぬ事が一番しわやたしが、今ぬ(まど)おヨネや肝ふぃちゃぎそおたん。(いくさ)()いねえ、(とぅし)いかん三人(みっちゃい)(わらび)(ちゃあ)如何(ちゃあ)し、かげえてぃ行けえ()むが。又(わた)ぬ中んかいや、子ん()っちょおん。()がちゅうちゃんちん、(うす)まさる事んかいけえなてぃ。ヨネやただ首(ゆく)んかい振やあ振やあどぅそおたる。

御主前や(はじ)めえ、まんぐらぬ(ちゅ)(ちゃあ)とぅ同ぬむん、島尻んかいや(ふぃん)ぎらんようい、(どぅう)なあ(たあ)ぬ墓ぬ中んかい(くゎっき)ゆる積合(ちむええ)そおたん。

平安名(ひんな)んかいあぬいがろう大墓(うふばか)まんぐらあ、高所(たかどぅくる)なとおくとぅ艦砲ぬ当たい易っさあねえらんがや。やしが艦砲や高所んちん(くぶ)んちん無えらしはじや」

御主前や独一人(どぅうちゅい)物言いさがちい、(なあ)(ちむ)(まゆ)いそおいぎさたん。大息(うふいいち)しからヨネんかい(たじ)にたん。話やありくり聞ちから()わみゆる積合がやらん分からん。

「あんし、区長ぬ話や如何(ちゃぬ)ぬふうじやたが」

「区長や、前やれえ山原(やんばる)んかい避難すしがるましやたるはじやしが、今からやれえ、去年(くず)から、なあ前々し、()てぃうちぇえる(ぐう)んかい逃ぎゆしるましんでぃ言ちょおみせえたっさあ。今日(ちゅう)明日(あちゃ)ぬうちなかいんでぃて」

 与那城んじえ、前ぬ年ぬ十月(じゅうぐぁち)十日(とぅか)ぬ空襲ぬ(あとぅ)(たあ)がが(はじ)みたるむぬやら分からんしが、大概ぬ家庭が村ぬ近くぬ山んじ防空壕堀てぃうちぇえたるばすやん。

「あんし友軍や如何(ちゃぬ)ゆうな考えそおんでぃぬ話やさんたるばすい」

「だあ、区長ん、そう抜ぎてぃる(をぅ)みせえたくとぅ、友軍ぬ話やしんそおらんたしが」

「いいゆい、友軍やくぬ前から(むる)、島尻んかいでぃち家移(やあうち)いどぅそおしえ。なあ勝連(かっちん)、与那城んかいや部隊(ぶてえ)(ぬく)てえ居らんはじど。まんぐらぬ話どぅやくとぅ、(じゅん)にがやら」

(しとぅ)ぬカマが(すば)からあびたん。

「やしが(なま)でぃいから、友軍ぬ後(をぅ)うてぃ、あが(とぅう)島尻んかいでえ、うりん又、じょういならんあいや」

 御主前や決わみかんてぃいし、(うでぃ)()どおたん。ヨネや(うとぅ)ぬ言ちゃる事(うび)い出じゃち御主前んかい(ちら)()きたん。

「御主前、大道原(うふどうばる)んかい掘てぃうちぇえる壕んかいやましえあいびらんな」

全功やヨネが大腹(うふわた)んそおい、又うっさぬ(わらび)(ちゃあ)添うてぃ、どぅく遠さんかい逃ぎいねえ、(けえ)てえ哀りなむんやくとぅ、なるびちえ家ぬ近くんかい避難すしえましんでぃ言ち、大道原んかい御主前とぅ(うっとぅ)ぬ全六とぅまじゅん壕掘てぃうちぇえたるばすやたん。

「区長ん、なあ前々し考えりんでぃ、みそおちょおるあたいやくとぅ、いがろうやいがろう考えさびやい、でぃちゃ、大道原んかい(もう)やびらな。子ん達んまんどおい、近くどぅましやいびいんどたい、御主前」

「ヨネがうっさぬ子とぅ(わた)ぬ中ぬ子ぬ事しわし、うぬ考えそおれえ、なあうりどぅましやるはじ。()う考えいねえ、んちゃ大道原どぅましやらはじや。行ちい易っさいあい、(くぶ)なとおくとぅ、アミリカー(たあ)(とぅう)てぃん、分かい苦さる(とぅくる)やしえや」

 ようやく、避難先(ひなんさち)ぬ決わみらったん。

「とおあんしえなあ、今日ぬうちなかい、行ちゅる考えし、しこうりわ」

 (んな)肝ひじょおる如とおたん。しこういむこういぬ(はじ)またれえ、又皆戦ぬ事おけえ(わし)りてぃ、だたぬ家移い支度そおる如、けえむさげえとおたん。今度十六才(じゅうるく)なてぃ(ちゃあき)きぬヨネぬ義弟(うっとぅ)ぬ全六や、五体(ぐてえ)ぬまんでぃ、特てぃ()()きとおたん。(くぃい)ん又あび()ぎさたん。

「大道原やれえ、裏原どぅなとおくとぅ、アミリカーや通らんはじやい、いがろう(はる)ん近くんかいまんどおくとぅ、艦砲射撃ぬ暇々(まどぅまどぅ)なかいや(んむ)堀いがん行かりいぬはじ。いいばすやさ」

やしが、御主前やけえ笑たん。

「あきさい全六、(いゃあ)が気掛きとおしえ分かゆしが、うわば事お考えらんけ。戦ぬばすなかい、畑業(はるわざ)ちんないみ、(ちが)てえうらに」

「あらぬ、暇々、うんな事んないがすらんでぃぬ話どぅやる。むさっとぅ何んならんでぃちえ無えらんさに」

(へえ)くしこういむこういしわ。(じち)()ぬん、大道原がるましやんでぃ思とおたんよ。山なかい囲まあってぃ、(かあら)(いじゅ)ぬんあくとぅ(みじ)ぬしわあ無えらんあい、(くゎっき)どぅくまとぅしえ、上等やさ」

(すう)よ、()ぬ事我が言いねえ、ぬらてぃ、畑んかい行ちゅしん、泉んかい水汲みいが行ちゅしん、同ぬむんどぅやとおてぃ」

(にい)しこうゆんち、前比嘉ぬ家組あ、ぱったらげえやあなたん。御主前や前予(めえか)にてぃしこうてえたる黒砂糖(くるざあたあ)ぬ入っちょおるぐな樽(たあ)ちオーダーなかい(ちち)だん。

「何が御主前、砂糖や樽(てぃい)ちし、ちゅふぁあらあらに」

 カマやひるましむん()うんねえし、夫ぬ(はた)見ちゃん。

「何や無えらんなてぃん、砂糖ぬあれえ、やあさあさんてぃん()むるはじど。砂糖や(しい)いらんあい、うりがる一番やる。(びち)()みむん()っち行じん、壕ぬ中んじえ(むぬ)おすがららんどや」

やしが、カマや台所(しむ)んかい()りてぃ()じゃあに、生芋(なまんむ)大根(でえくに)人参(あかでえくに)そうなむん、かしがあんかい入りてぃ、なあひん、入りいびちいやる食み物お無えらんがやんでぃち、(みい)やとぅざなてぃとぅめえとおたん。

「あっさいよ、いぇえ、カマ、うさきなあ(んぶ)(むん)持っちん、行かりいみやひゃあ。うりやか(くぇえ)(いらな)持っち行ちゅしがるましえあらに」

「汝がる艦砲ん、弾ん(とでぃ)でぃ()ゅうる中、畑んかい行からんでぃ話そおたるむんぬ。あんやれえ持たりいるうっさあ、持たなんでぃ思てぃるやる」

「やみ、あんしえ、持たりいぬうっさや」

 御主前や、なあ思い流ちゃん。

ヨネやくぬ前、三年忌うちなちゃる全太郎ぬ元祖(ぐゎんす)うちゅくいんかい包どおるとぅくるやたん。カマがうり見ち、ひるまさそおたん。

「ヨネ、あんし(いち)大事(でえじ)なばすに、元祖持っちゅるゆちみんあんな。壕んじ暮らし方ないぬむんびけんどぅ持っちゅる。元祖おまあんかいやてぃん、かじみとおちゅしえましえあらに」

「我がる持ちゃびいるむんぬ、何ん重物ぬんあいびらなそおてぃ」

「あらんよ、いひやてぃん、役立つしどぅ持っちゅる。ただんちょおん、ありん持つな、くりん持つなんち、御主前とぅおおええ問答(むんどぅう)どぅそおるむんぬ」

「やいびいくとぅ、持っちびちいやしえ、諸持っちゃびいん。何が元祖てぃらむん(へえ)(がら)、何ん邪魔ないるむのおあいびらん」

傍んじ、(なあび)道具片付(かたぢ)きとおたる御主前や(とぅじ)ぬカマぬ方、()かやいあびたん。

「何がカマ、ヨネが持っち欲されえ持ったしいるする。だあなあ(いす)がんでえ。だらあくゎらあそおる(ひま)あ無えらんどお。(ゆう)ぬゆっくぃてぃからあ大道原んかいや行からんしが」

 御主前や全太郎が、けえ()あちゃるばす、ヨネがじまま泣ち暮らち、肝んとぅやあさらんたる事、()う覚いとおたん。

「あんしえ、全太郎元祖ぬ事お汝がる分かいる。ましやんねえしせえわ」

あん言ち、カマや自ぬ事さるばすやん。

「かふうしやいびいどなあ婆前(はあめえ)

ヨネや全太郎ぬ元祖、うちゅくいなかい包むる前なかい、手押合(てぃいうさあ)ちゃん。うぬばす何がな(うとぅ)ぬ事が(うび)い出じゃさったん。

「全太郎、男ぬ親ぬ事ん、子ん達ぬ事ん、又皆ぬ事ん見守(みいまん)どおってぃ(くぃ)りよや」

全太郎ぬ元祖ぬ事くじたるカマやいやすたしが、自ぬ親ぬ家から持っち来ぇえる(ちん)やでえじなあたらさるむんやたくとぅ、後ぬうじゅみ、いちゃっさきいある衣ぬうちから(ゆうち)五着(いちち)びけんや持っち行ちゅる事にさん。夫ぬ(たる)(らあ)御主前やカマがしこうゆし、傍んじ見ちょおたしが、おおええ問答すぬ肝ん無えらな、やすんじとおたん。カマや明治二十三年なかい勝連村平安名ぬ東浜(あがりばば)家んじ生まりたん。東浜家んでぃ言いねえ、代々(でえでえ)ヌウルそおたるゆかっちゅやたん。あんすくとぅ、彼女(うり)が衣のお諸そうらさるむんやたん。

「なあ、諸しこうたがや。暗くならんうちなかい壕んじん、すぬ事ぬあしがる」

御主前や自ぬ荷とぅまじゅん、きっさ門口(じょうぐち)んかい立っちょおたん。

ヨネやちゃっさん持っちゆうさんたん。二才ないぬ全三添うてぃ、童ぬ衣から長男(ちゃくし)ぬ元祖、うちゅくいんかい包でえし持っちょおるうぴどぅやたる。かさぎてぃから八ヵ月びけんなとおたくとぅやたん。

全六やカマがしこうてえる食む物ぬ(ふか)なかい(なあび)まかい道具物(どうぐむん)から鍬鎌そうな物までぃかしがあんかい入りやい(かた)みたん。全次や自ぬ衣とぅ水()りてえる(やあ)ちぬ水筒(しいとぅう)(ううび)んかい()ぎとおたん。やしが(たむ)ちぬ悪っさたくとぅ水筒やなあ前々が持っちゅる事んかいなたん。全次や(むしる)(いち)ちびけんどぅ持っちゃる。

小学校んかい上がたる直やたる信子やようやく自が持っちゅる荷しこうゆる事ぬなたん。教科()ん持っち行ちい()しゃあたしが、ぬらありがすらんでぃ思てぃ、うぬまま箪笥(たんし)ぬ中んかい置ちぇえたん。やしが、ヨネが「信子、教科書持っちん済むんど、早く、うぬうちゅくいんかい包めえ」んでぃ言ちゃくとぅ、いそうさそおたん。

「とお早く行かなや」

門口んじ待ちかんてぃいそおたる樽郎御主前やあぎまあちょおたん。

「あんちゃ、(わし)りとおたさ。全六、(いゃあ)みえ(ひさ)ぬぐるさくとぅ村屋までぃ行じ、区長んかい、『前比嘉しんかあ、大道原ぬ壕んかい非難さびいんど』でぃち語てぃ()わ。我ってえ(さち)なとおちゅくとぅ後から追うてぃ来わ」

 全六や自ぬ荷持っちょおるまま、村屋んかい走合(はあええ)なたん。

「くぬ家んかい当分(とうぶ)のお来ららんさや」

ヨネやくうてん小、涙落(なだう)とぅちゃん。門から出じいねえ、隣ぬ人ん達んかい、はっちゃかたん。目切(みっちり)我如古(がにく)ぬ家組やたん。

「あいヨネ、我ったあん今どぅやしが」

(ちら)洗ゆる(まどぅ)ん無んがあたら、我如古ぬ嫁ぬチルや(ちら)いっぺえ鍋ぬひんぐぶったあそおたん。やしが(はあ)びけんや(しる)さたん。

「我ってえなあ近くんかいどぅやんど、大道原んかいんちてえ。あんし、うんじゅなあ達やまあんかいやくとぅ」

「我ってえ、かまさ原ぬ大墓んかいちるやしが。大道原やれえ、まんぐらどぅやしえ」

「かまさ原ん()い所やんどや、窪小なてぃ。あんし、自なあ達墓んかいちるやんな」

「あらぬよ、畑ぬ側ひらんじ前予にてぃ掘てぃうちぇえたる壕んかいちるやんど」

「いぃえうりえ、ましやさ。又いってえ、うっさぬしんかなてぃや」

「うんじゅなあ達ん、ゆうし参りよや。とおあんしえや」

大道原お与那城ぬ西(いり)むてぃんかいあたん。道中(みちなか)やあまくま、艦砲弾ぬ落てぃたる(あとぅ)ぬあたん。(まあち)(きい)ん、(いく)ちがな(とお)りてぃ焼ち()がりとおたん。見じゅるうっぴしん、恐るしんむんやたん。

カマや兵隊(ひいたい)んかい(とぅ)らったる自ぬ子ん達ぬ事どぅ(うみ)とおたる。ヨネぬ夫やる長男全功(はじ)み四人ぬ男ん子ぬ事。次男ぬ全徳びけんや南洋ぬテニアンんかい出兵そおたん。

「あんまあ、(すう)や無事やがや」

信子やヨネがうっちんたあなてぃ、歩っちょし()ち、(くぃい)掛きたるばすやん。

「無事どぅやる、当たい前てえ」

ヨネや笑てぃ見しらんでぃそおたしが、夫ぬ話なたれえ(けえ)てえ、(なだ)ぬ落てぃらんでぃるそおたる。

(はる)道ぬ(ふぃざい)むてぃんかいや前比嘉家ぬ田ぶっくゎぬあたん。田ぶっくゎあ山なかい(かく)まってぃ、又田と山ぬ(ゑえだ)あ畑小なとおたん。うぬ畑小前なち、山ぬ斜面(しゃみん)んかい前比嘉家ぬ壕や掘らっとおたん。やしが田んかいん、艦砲弾ぬ跡ぬ幾ちんあたん。

「大道原ぬ壕や(うく)んかい深く掘てえくとぅ、何ん(ちけ)え無えらんさ」

夫ぬ声ぬ耳んかい残とおたん。皆畑道ぬ(ゆく)んかいあたるぐま道、()りてぃ行じゃん。うりから、又いふぃ小(ぬぶ)いねえ、ぐな畑ぬあやい、壕やうぬ()ぐ側んかいあたん。

全六や一時(いっとぅちゃ)ん早くんでぃ思やい、村屋んかい向かたん。戸ん窓ん未だ開きらっとおたん。

「区長、親泊主(ゑえどぅまいすう)、前比嘉しんかぬ全六どぅやいびいしが」

区長ぬ親泊主や()ちょおたる窓から首ねえてぃ面見したん。全六が荷持っちょおし見ち、()ぐに避難ぬ連絡(りんらく)どぅやるんでぃ(さとぅ)たん。

「前比嘉しんかあ、まあんかいちやが」

「我ってえ大道原んかいちやいびいしが」

「あは、あまんましやらはじや。いっ達(ゆみ)ぬヨネや大腹どぅそおい、あま()いくま走いんならんくとぅ、いいばすやさ」

言やがちい区長や区民避難簿()んかい書ち(とぅ)みとおるふうじやたん。

「あんしえなあ、ゆうし行きようや。御主前ん婆前やかなとおみせえさに」

「あっせ、あぬ二人(たい)やてぃから、我っ達やか頑丈(がんじゅう)やらりいんよ。あんし親泊主達や何時(いち)え避難しみせえんちやいびいがや」

「明日どぅないぬはじや。だあ、村屋ぬ事ん(かむ)らんでえならんあい、未だ連絡ぬ来うん家庭んあい、村(みぐ)らんでえならんはじやい」

(いちゅな)さみせえさや。我ってえ先ないびらい」

 大道原んかい向かとおる畑道んかいや避難すぬ(ちゅ)ん達ぬ姿(しがた)()ゆたしが、なんずかあ居らんたん。全六ぬ家組あきっさ、壕ぬ前んかい立っちょおたん。全六が坂から降りてぃ来ゅうる足音(あしとぅ)聞ち御主前がとぅん(けえ)えたん。

「全六、区長やいち()あらりいたんな」

「いち逢たんど」

「与那城ぬ人ん達や、いいくるまあんかい、避難そおがや、大道原んかい向かとおる人ん達や、あんすかあ居らんねえそおしが」

「うんな話すぬゆちみえ無えらんたんど。ただ連絡びけんどぅさる」

「やたみ。とおあんしえ全次、汝から入っち、うぬ莚()けえ」

御主前が壕ぬ中、見ちから言ちゃん。

壕ぬ中んかい入ゆる細穴(ふすあな)六尺(るくしゃく)びけえ長さたん。中あ十畳びけんやあいぎさたん。

「入り口ぬ前まんぐらぬ中じんかいや()らんきよ。艦砲ぬかきぬ飛でぃ来ゅうるばすんあるはじやくとぅ」

「良う(つく)らっとおっさや」

全次が莚敷ちゃれえ、()らしくなたん。ヨネや肝ひじょおたん。奥んかいや砂糖樽から道具物ぬあるっさ置ちきらったん。(ひい)ぬ長さくとぅんでぃち、樽郎とぅ全六お壕ぬ(ふた)造ゆるたみなかい近くぬげえみんかい、鎌とぅ鉈持っち行じゃん。木ぬ(ゆだ)とぅ(ぐしち)刈やい、壕ぬ前んかいかやあち来ゃん。

「枝とぅ枝、(たば)ゆる(ちな)持っち()れえ済むたるむんや、御主前」

「だあ、なあ今々(なまなまあ)なてぃる来ょおくとぅ、()(すく)ぬあらわん、仕方あ無えらん。何が枝ぬ(かあ)剥がちん使(ちか)あらりいしえ」

入り口え細穴小どぅやたくとぅ、なんずかあ手間(てぃま)あかからんたん。

砲弾ぬ(うとぅ)ん遠さんじるそおたくとぅ、ヨネとぅカマや畑んかい行じゃん。

「今ぬうちなかい、(とぅ)らりいるむのお諸採とおかなやんでぃ思てぃ。いいばす畑道具もっち来ぇえさ」

やしが、なあ夜やゆっくぃらんでぃそおたくとぅ、芋大根そうなむんやいふぃ小どぅ採らりいたる。壕うとおてぃぬ初みてぃぬ夜お家から持っち来ぇえる芋煮(んむにい)とぅ黒砂糖どぅ食だる。味噌汁(んすしる)()み欲しゃあたしが、(ひい)使ゆるくとお御主前が(おう)さんたん。

樽郎御主前や明治十二年ぬ生まり。若さるばすおハワイんかい(はたら)ちいが行じょおたん。安手間(やしでぃま)小どぅやいやすたしが、くめえきやあなてぃ、家んかいちゃっさきいなあぬ(じん)(うく)たるばすやん。二十才(なか)らんじ、ハワイから(むどぅ)てぃ来ゃるばす、樽郎や自が(もお)きてぃ送てえる銭や諸()みらっとおるはじんでぃ思とおたん。やしが(うり)が送たる銭や諸、(うっとぅ)ぬ兼輔ぬ(ぐゎく)()とぅなてぃ残てえ居らんたん。樽郎やちるだいそおたんでぃぬ事。弟お学校ぬ(しん)(しい)なてぃ後、西原ぬゆかっちゅ宮城家(なあぐしく)婿(むうく)とぅなてぃ(ゑえき)ん人なとおたん。樽郎や先妻(さちとぅじ)とお男ん子一人(ちゅい)()ちえたしが、短気(たんちゃあ)我強(があづう)うなてぃ、()かりゆる(みい)とぅなたん。カマとぅめえたるばすからあ又んはまやあなたるばすやたん。

壕ぬ中うとおてぃぬ初みぬ二、三日びけんや、近くんじ砲弾ぬ音んさんあい、食むしんあたくとぅ、やあやあとぅ暮らちょおたしが四日(ゆっか)目まんぐらからあ近くんかいん砲弾ぬ飛だい落てぃたいすぬ音ん大ぎくなてぃ、(ぢい)んゐいちゅんねえしなてぃちゃん。又銃弾ぬ音んまるひっちい聞かりんねえしなてぃちゃん。弾ぬ飛ぶる音おひゅうないひゅうないし、(じゅん)風吹(かじふ)ちぬぐとぅどぅあたる。

前比嘉ぬ家組あ、なあ壕から一足(ちゅひさ)ん出じゆる事んならんなとおたん。(ゆる)なてぃん、何時が艦砲弾ぬ飛でぃ来ゅうらんでぃ思いねえ、どぅく恐るさぬ()んじゅる事んならんたん。又食むしん黒砂糖びけんけえなてぃ、童ん達や、やあさ思いし泣か泣かそおたしが、「泣ちいねえ、(ふか)んかい出じゃすんど」んでぃ言しが御主前ぬ口癖(くちぐし)なとおたくとぅ、諸とぅるばてぃうっちんたあどぅそおたる。

やしが、全三びけんや時々(とぅちどぅち)(うふ)泣ちさん。うぬかじヨネが抱ち()い寝しんらんでぃさしが泣ち止むるくとお無えらんたん。

「口(つう)(づう)うとぅ覆らに」

強く覆いねえ全三やゆくんちじどぅないたる。御主前やくさみちょおたしが、如何(ちゃあ)んないるむのおあらんたん。

幾日が()じたら、黒砂糖びけん食みいねえ、水ぬ欲しくないくとぅ、たでえまなかい飲むる水ん無えらんなたん。夜んゆっくぃてぃ、諸、(ぬうでぃい)(かあ)きとおたん。誰んなあ、にじゆるくとおならんなとおたん。

「御主前、()のお水汲でぃ来ん済むがや」

全六があん言ちゃれえ、御主前や何でぃん言やんようい、諸が水筒(あち)みたん。

「今、外んかい出じいねえ、射りくじらりいんしが、一時あ待っちょおけえ」

やしが、御主前や諸が水筒、(んに)んかい抱ち外んかい出じてぃ()ちゃん。

「あいな御主前」

カマがあびたしが、きっさ夫ぬ姿あ見いらんなとおたん。うぬばす、あったに照明(しょうみい)弾ぬ(あか)がてぃ、まんぐらあ昼ぬ如なとおたん。

「一大事なとおっさあ」

全六お壕ぬ細穴から首出じゃちぬばがたん。照明弾なかい(てぃ)らさってぃ、(んじゅ)ちいねえ、射りくじらりいしが。樽郎や一時間びけんしから戻てぃ来ゃん。(はじ)てえる着物(ちん)なかいや芋大根ぬ包まっとおたん。諸ぬ水筒んかいや水ぬ満っちょおたん。樽郎や(われ)(ふく)とおたん。

「いいばす、明がとおたくとぅ、畑までえ行じ、田ぬ側ぬ(んず)んじえ、浴みてぃ来ゃさ」

「はっさいよ、汝みえ、なあ物ん思まあん」

カマや涙落とぅちょおたん。

うぬ後、まるけえてぃ、畑んかい行ちゅんねえしなたしが、二十日(はちか)びけえ経っちゃる頃、なあまんぐらぬ畑んかいや採いる物お無えらんなとおたん。やしが、全三やどぅくようがり(づう)さぬ(ふに)とぅ(かあ)とぅなやい、腹びけんや膨っくぃてぃ来ょおたん。あいゆかん、栄養(ええよう)失調なとおるふうじやたん。物食むる(てえ)ん無えらんなてぃ、時々大泣ちびけんどぅすたる。弾、砲弾ぬ音お、くぬ前やか遠さなとおたしが、止むる事お無えらんたん。やしが、いちゃさきいぬ弾ぬ壕ぬ前ぬ畑んかい射りくじらったるばすいや、とおなあ、近くまでぃアミリカ兵がる来ょおるんでぃ思まありいたん。

壕んかい入っちからやがてぃ一ヶ月びけん過じたるばすぬ事やたるはじ。外あ(あこ)(くろ)うなとおたん。全三や又ん大泣ちし、ヨネがちゃっさ口覆てぃん、なあふしがらんたん。樽郎や立ち上がい、ヨネが抱ちょおたる全三、ちゅうちゃん、取いあぎてぃ抱ちゃん。ヨネや肝ちい返らちゃん。樽郎が全三外んかい、出じゃする積合やるはじんでぃ思とおたくとぅやん。

「御主前、どうでぃん、許ち呉みそおれ」

「うり一人(ちゅい)ぬたみなかい、諸が(くる)さりいねえ、じゃへえやしが。なあ全三や腹ん膨っきとおい、死ぬしえ時間ぬ問題(むんでえ)どぅやくとぅ、我がまあがらんかい()ち来ゅうさ。諸ぬたみどぅやくとぅ、許しようや、ヨネ」

あん言いねえ、樽郎や全三、抱ちゃるまま、外んかい出じたん。ヨネやそう抜ぎてぃ外んかい出たん。あんし、御主前ぬ腕から全三くん取たん。ただんちょおん、よおがりとおたるヨネどぅやたしが、くぬ一ヶ月が間なかい、ゆくんけえようがりとおたん。男から赤ん子、取い返するあたいぬ根気(くんち)ぬ残とおたがやんでぃ思てぃ樽郎や(うどぅる)ちゃん。

「許ち呉ぃみそおり御主前。我ねえ、うぬ子が肝苦(ちむぐり)さぬないびらん。肝ん(しぬ)ばりやびらん。自し、まんがらんかい置ち来ゃあびいくとぅ、どうでぃんうぬ子我ぬんかい」

 あんし、壕とぅん返えたん。

「信子、全次、いっ達や、くまんかい居とおきよや。あんまあや一時(いっとぅちゃ)()()ゅうくとぅ」

あん言しとぅまじゅん、ヨネや前ぬ畑道、走合なたん。大腹どぅそおたしが、足あぐるさるあたる。暗さんあい、御主前や(ゐい)()ちゅる事んならんたん。

やがてぃ、砲弾ぬばんない落てぃ来ゃん。弾ん嵐ぬ如、飛ばあ飛ばあそおたん。直ぐ側んかい砲弾ぬ落てぃてぃ、炸裂さるばすお、ヨネやなあうりまでぃどぅやるんでぃ(かく)()さん。田ぬ側ぬ土手(あむとぅ)んかい(なが)(ぼう)いし、(なし)(ぐゎ)抱ち、腹苦(わたぐり)さぬ涙ぬ止まらんたん。うぬ目どぅやてぃから仕方んないみ。

「我とぅまじゅんやくとぅ何ぬしわんねえらんどおや全三、父ん一目(ちゅみ)()じ欲しゃたんや。やしが信子ん全次ん如何がないら」

何ちがやら、全三やうぬばす泣ち止だん。

「あんまあ」

「今、『あんまあ』んでぃる言ちゃるい全三。あんまあがる抱ちょおんど」

うぬばす直ぐ近さんかい砲弾ぬ落てぃやい、(たまし)()ぎるか大ぎ音ぬさん。「あようい」、ちゅてえや耳ぬ(くじ)りとおいぎさたん。全三や又ん大泣ちさん。ヨネや全三まん抱ちゃん。

「うやふじん達ぬ前んかい行ちゅる、何ぬしわん無えらんどおや、全三」

童ぬばすからぬ事ぬ思い出じゃさったん。

 

まあふっくゎどぅやたる。トミあんまあや、我ぬんかい子守やあしみゆんでぃち、(みい)やとぅざなてぃ、とぅめえてぃ歩っちょおたん。

「ひるましむんや、まあんかいが()ちゃら。今先(なまさち)までぃ、前ぬ大道(うふみち)んじる(あし)どおたぬはじやしが、姿(しがた)ぬ見いらんなてぃ。くぬヨネよ」

今ん、あぬばすぬあんまあ声ぬ耳ぬ側んじ聞かりいる如どぅあたる。トミやどぅく、うふあびいんならな、うぬまま、我が学校んかい行ちゅし(ぬが)あらする(ふか)あ無えらんたん。又(くう)さいにいぬある日、男ん達とぅまじゅん草刈いが行かさったるばす、隣ぬ男ぬ鎌刃(いらんば)がヨネぬ目んかい当たたるばすんあたん。うにいから片目(かたみい)や見いらんなとおたん。ちりみぬ全功から()うらってぃ、にいびちさしん()(ぬう)ぬ如どぅある。全功やいへえ、肝(よう)さぬとぅくるんあたしが、我事お、でえじなかなさそおたん。全太郎ぬ生まりたるばすいや、あいゆかんいそうさぬならんたん。うぬ時分から夫お(もう)きいんがんでぃち、大阪(ううさか)鉄工所(てぃっくうじゅ)んかい、働ちいが行ちゅる事んかいなたん。まるけえてぃ、夫んかい手紙(てぃがみ)書ち送たいさしが、大和口え、なんぞおならんたくとぅ、手紙書ちゅるかじ、『オゲンキデスカ、コチラモミンナゲンキデス』んでぃち、同ぬ事びけん書ちゃるむぬやたん。家仕事(やあしくち)ぬ暇々お、子ん達添うてぃ親ぬ家んかい、いいくる遊びいが()しりたるむぬやん。

 

暗くなやい、砲弾ぬ音ん遠くなてぃ、まんぐらあ(しじ)かになてぃ来ゃん。ゆうしいねえ、(たし)かいがすらんでぃヨネや思たん。やしが、うんな事ん一時小どぅやたる。何がなぬ音ぬ聞かりゆん。ヨネやくうてのお面うちゃぎたん。音お、くうてん小なあどぅやしが、次第(しでえ)に大ぎくなてぃ来ゅうん。足音(あしとぅ)やいぎさん。ひるましむん、人がやら、生物(いちむし)がやら。ヨネや目し確かみゆるたみなかい(どぅう)(よう)がち、なあひん面うち()ぎたん。暗さああたしが、土手(あむとぅ)()(がた)から人やいぎさるむんぬ向かてぃ来ゃあぎいん。ヨネや肝だくみちし、全三まん抱ちゃん。むしかアミリカ兵やれえ、(ちゃ)()すが。足くんぱてぃ逃ぎてぃん、射りくじらりいるびけんどぅやるはじ。ヨネやしぐ側ぬげえみぬ中んかい隠たん。   

うぬばす、全三が又ん泣ち始みたん。ヨネや片手(かたでぃい)し思ん子ぬ口覆たん。

足音ぬ(ぬし)え、きっさ近くまでぃ来ちょおいぎさたん。立ち止まやい、くまぬ様子(ようし)(うかが)とおるふうじやたん。違たる事んかいなたるむんでぃヨネや思たん。

「友軍どぅやしが」

声ぬ主えぐな物言い小さん。アミリカ兵やあらんむん。ヨネやいへえ肝(づう)くなたん。

「まあぬ誰がやみせえら」

声ぬ主え、なあひん近ゆてぃ来ゃあぎいん。うぬばす又ん全三ぬ泣ちゃん。

「いぃえ、うぬ声やヨネやあらに」

聞ちゃる覚いぬあぬ声やたん。

「全功、全功どぅやるい」

全功や走合なてぃヨネぬ傍んかい来、あんし足まんちいし、ヨネぬ面抱ちゃん。

「あきさい、うん如おる事んちん、あがや、全功。無事やたんなあ、まあん怪我(きが)しえ居らに、まあん()まちぇえ居らに。あんし、生ちち、いち逢ゆる事んなてぃ、でえじな、いそうさぬならんむん」

ヨネや夫ぬ面んでえ腕んでえ(さあ)やあ触やあさがなあ、涙ぬ落てぃてぃふしがらんたん。

「何がなあ全三とぅ、くまんかい居る」

「全三が壕ぬ中んじ、どぅく泣ち強さぬる出じてぃ来ゃる」

 ヨネや、御主前ぬ肝障(ちむざわ)いぬたみなかい壕から出じゃさったんでえ言やんたん。うんなばす、夫わじらちん、ゆうちらん無えらん。

「あんどぅんやれえ、でぃか、あぬギンザヤ洞窟(がま)んかい一時あ行じょおかな」

あい言る洞窟あ壕ぬ近くんかいあたん。()(じん)洞窟(がま)なてぃ、三、四人ぐれえどぅ入らりいたる。岩壁(しいかび)なてぃ掘てぃ大ぎくすぬ事お、ならんたん。ひっちい(ばる)すぬばすお、ゆくい所とさあい(へえ)こお、使とおたしが、(ちゅ)けんハブぬ出じてぃからあ使らんなとおたん。

「あまあハブ所どぅやしが」

「支え無えん、うっさ艦砲ぬ落とぅさっとおてぃ、まあがらんかいやてぃん、逃ぎてぃ居らんはじど」

三人やギンザヤ洞窟んかい行じゃん。全功や上着ぬポケットから缶詰取てぃ見したん。アミリカ(むん)やたん。

「道んかい落てぃとおしる(ふぃる)てぃ来ゃる」

全功やあん語たるむぬやしが、本当(ふんとう)や死じ倒りとおたるアミリカ兵ぬリュックから取たるむんどぅやたる。全三や缶詰食でぃ、泣ち止どおたん。

「やしが全功、汝みえ如何し、くままでぃ、来ゃくとぅ」

全功や自ぬ部隊が全滅(じんみつ)さあい、与那原(ゆなばる)から()うやあ這うやあし来ゃる事言ちゃん。

平生(ふぃいじい)やれえ、一日し来らりいしが、這うてぃるやくとぅ四日かかたんてえ」

「あんし、全栄、全一や如何なたが」

「弟ん達とお部隊ぬ違いくとぅ、分からんさあ。あぬ二人が事お我ぬんしわやさ。うりえ、済むしが、でぃか全三や泣ち止どおい、大道原んかい戻らな。食むしんあい」

歩っちがちい、全功や島尻んじぬ事語たん。

「いいばす、いが家組あ島尻んかい行かんてえさ、あまんじえ、あいゆかぬ戦場なてぃ、亡あちょおる人ぬまんどおたっさあ」

「やんな、やしが、いがろう家や如何がなたらや。ぬばがいるゆちみえ無えらんたんな」

「じょうい、うんなゆちみぬあみ」

ひるましむん、夜中どぅやしが、壕ぬ(ゐい)薄原(ぐしちもう)んかいや、まあからが逃ぎてぃ来ゃらあ、(んま)ぬ立っち草(くゎ)とおたん。全功や壕ぬ入り口んじ、ぐま物言いさん。

「御主前、我どぅやしが、全功どぅ。ヨネん全三んまんなどな」

あんされえ、御主前が入り口まで這うてぃ来ゃあい、ぐま物言いさん。

「あきさい、確か全功どぅやるい。何ん支え無えらに」

 樽郎や何がやら、(うとぅる)るさそおいぎさたん。

「何ん支え無えらんしが、何がなあ」

「いぇえ、今先(なまさち)、壕ぬ上辺(うわあび)んかいアミリカーぬ居たしが、如何なとおが」

全功や、いへえ驚ちゃしが、ゆうさんでえ、馬ぬ事どぅやるはじんでぃ思やい笑たん。

「いいゆいなあ、上辺んかい居しえ馬どぅやしがる」

「馬、あっし、やな馬小ひゃあ、人驚かち」

樽郎ん笑たん。ヨネ達三人や壕ぬ中んかい入っちゃん。全功や自が如何し、与那原ぬ前戦から逃ぎてぃ来ゃがんでぃ言る事、又道中んじ全三抱ちょおたるヨネとぅはっちゃかたる事語たん。ヨネとぅ全三ぬ事、しわそおたる壕ぬ家組あ、諸うみなあくなたる思いそおたん。子ん達ん諸いそうさし、じまま泣ちょおたん。樽郎んヨネんかい謝たん。

「とおなあ、静かにさんでえ」

今度お全功があん言ちゃん。

「やしが、全功、あぬ馬、如何がな殺ち食むる事おならに」

「あっさ、如何(いか)な、やあさあらわん、物ん言んねえしる言る、御主前。くんな戦場(いくさば)んじ、馬殺ちゃい、()ちゃいんないてぃから」

あん言ちから、全功んかい缶詰入りてえたる事、覚い出じゃち、皆んかい()じゃん。

「アミリカ兵達や、あんすかまあさむん()どおるばあな」

皆ゐいりきさいぎさたん。

「やくとぅよ」、全功や語い始みたん。「食み物ん違ゆい、日本軍とお、じょうい、(くな)びららんど。あっさ、いぃえ、うひぬ海いっぺえ、諸アミリカぬ艦隊どぅやんど。なあ、日本が負きゆしえ、時間ぬ問題どぅやる」

「うりえなあ、初みから分かとおる事」

 ハワイんじ六年が間、暮らちょおたる樽郎やアミリカが物資豊かやる事、良う知っちょおたん。

「日本がんでえ、アミリカなかい、じょういかねえみ」

うぬ日から又幾日が過じたら分からん。起きいねえ、壕ぬ傍ひらあ、何がやら、むさげえとおたん。

外んじえ幾十人がやらアミリカ兵達が何がな、あびとおたん。壕ぬ中あ、ちゅうちゃん、わさみちゃん。樽郎や立ち上がやい、あんし壕ぬ入り口んかい行じ這うたん。

「如何すが御主前」

友軍なかい何ぬ事ぬあらわん、降参しえならんでぃち習あさっとおたる全功や色青(いるおお)じゃあなとおたん。樽郎や落てぃ着ちょおたん。

「とお、今ぬ暇お、何しいびちやがんでぃ言る事お、我が良う分かとおん。皆我がすんねえしるすんどおや」

樽郎や壕から出じてぃ、二ち手高々とぅ上ぎやい、アミリカ兵んかいあびたん。

「ヘルプアス、プリーズ」

あんし、前比謝家ぬ人ん達や南風原(ふぇえばる)ぬ収容所まで添うらってぃ行じゃん。やしが、全功びけんや、兵隊すがいそおたるくとぅなかい、別ぬ所んかい添うらってぃ行ちゅる事んかいなたん。

「我事おしわさんてぃん済むんど」

全功とぅヨネや又ん別りいる事んかいなたるばすやん。ヨネ達前比嘉家ぬ家組が南風原ぬ収容所んかい着ちゃしえ、きっさ夕さんでぃなとおたん。うぬ収容所お(まあ)いや金網(かなあみ)なかい囲らってぃ、中んかいやテント小屋ぬ幾ちん並どおたん。一番大ぎテントぬ側んかいや、ちゃっさきいなあぬ荷まじでえるアミリカ軍用トラックぬ(とぅ)まてぃ、幾人がなぬアミリカ兵ぬ立っちょおたん。あんし一人が何がなあび始みたん。大和口やいぎさたん。

「何んでぃ言ちょおくとぅ」

ヨネとぅカマや大和口え、受き取いゆうさんたん。

「食む物()じゅくとぅ並びんでぃ」

トラックぬ前や、ちゅうちゃん、わさみはん。うぬ夜からまあさ物食むる事ぬなやい、収容所ぬ人ん達や、でえじな、いそうさそおたん。昨日迄ぬ戦がる夢がやたら、今やあやあとぅそおる事がる夢やら。誰んでぃん無えらん、うぬばすお収容所ぬ人ん達や皆、アミリカ軍、()みてぃる居たる。

収容所んかい入りらってぃ三日目ぬ夜ぬ事やたん。中ぬ人ん達や、いっそうから、歯ぎしまあするかくさみちゅる事んかいなたん。

夕飯(ゆうばん)ぬん済まち、大概ぬ人が寝んだでぃそおたるばす、幾人がなぬアミリカ兵がテント小屋ぬ中巡てぃ歩ちょおたん。手んかいや小銃持っち、目やとぅざなてぃ、女とぅめえとおたん。一人ぬアミリカ兵が、ヨネぬ隣んかん居たるみやらび、手し手招(てぃまね)ちそおいぎさたん。うぬみやらびや何がら悟たるふうじなてぃ、大あびいさるむぬやん。

「我ねえ(んば)やしが、あんまあ」

やしが、うぬみやらびやアミリカ兵なかい、手引かってぃ添うらってぃ行じゃん。

なあ一人ぬ兵隊が、今度おヨネ見ち同ぬぐとぅ手招ちさん。ヨネやどぅく恐るさぬ(うび)らじに、手し全三ぬ口覆とおたん。恐るさぬ事ぬあるばすいや、童ぬ口覆ゆる慣りいがなとおたらあ分からん。うぬアメリカ兵や大あびいさあい、ヨネぬ手引ち、ひっ立てぃらんでぃさるむぬやしが、樽郎がうぬアミリカ兵んかい何がなあびたん。うぬ兵隊やヨネが大腹そおる事ぬ分かやい、手けえ離ちゃん。やてぃ、ヨネやけえどぅ返りたん。「あよいな」、(ぢち)んかい(くし)強う強うとぅ打っち、ヨネや、ちゅてえや、立っちいさんなとおたん。

うぬ日やテントぬ中から八人ぬ女が添うらってぃ行じゃん。男ん達や初めえ、わさみちょおたしが、アミリカ兵達や小銃どぅ持っちょおくとぅ、てえんたたりいみ。腸苦しゃ思いさがなあん、ただとぅばてぃる()ちょおたる。ニ日後ん、又別ぬアミリカ兵達がテント巡いしいが来ゃん。

今度お、樽郎がにじゆる事んならな、又ん英語し何がなあびたっ加あちょおいぎたん。やしが、樽郎や一人ぬアミリカ兵なかい()(くる)ばさったん。やてぃ、かあま奥ぬ方んかい居たる別ぬアミリカ兵が気に付ち走合なてぃ来ゃん。あんし、うちなあぬ女添ういが来ょおたるアミリカ兵達やうぬ夜お、やな口さがちい、(けえ)てぃ()いたん。

 

「ヨネ、今、アミリカーが三人、家ぬ(くし)から門口んかい向かとおるとぅくまやさ」

外すう目そおたるチルがぐま物言い小さん。

「あねとお、()いたん。やしが、ちゅてえや、うぬままそおきよ」

「あっさ、チル、童ぬ口覆いねえ、戦ぬばすぬ事どぅ思い出じゃすっさあ。なあ今からあ平和(ひいわ)世んかいがなてぃ行ちゅらんでぃ思とおたしが、今ん戦世ぬ如るあるむんな。沖縄(うちなあ)や如何がなてぃ行ちゅら。やあ全清」

全清や涙くるくるうなとおたるあんまあ見ち、(てぃい)(じくん)突ち上ぎやい()(まあ)ちゃん。

                  終