アリババとぅ４０人ぬふぇいれい  「実践うちなあぐち教本」より 文 吉屋松金 |
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４ アリババとぅ四十人ぬふぇえれえ 昔々、ペルシャんでぃ言る国ぬある町んかい、カシムとぅアリババんでぃ言る兄弟ぬ居たん。兄ぬカシムお、でえじなぬ金持やたん。やしが、弟ぬアリババあくりえまた、変てぃ貧相なてぃ、毎日、山うとおてぃ薪採やあどぅそをたる。 今日んアリババあようがりロバ、三匹添うてぃ、いっそうまあやか、かあま遠さ迄、薪採いが行ぢゃん。うまあ、人ぬ誰ん来うん岩山ぬ崖ぬ下やたん。 「とお、とお、くすぶゆうロバん達、今日やうっさまでぃやさ。あい、ありえ、何やが」 埃ぶうぶうしみてぃ、くまんかい来ゅうしえ、馬んかい乗とをるちゃっさきいぬ男ん達やたん。あっはあ、とう、うっ達がる話なかい開ちんちゃるふぇえれえやる筈んでぃアリババあ、思いてぃ、慌てぃてぃロバん達、林ぬ後方んかい隠ちゃん。あんし、自や急じ、葉ぬんずらさ、付ちょをるまぎ木ぬ上かい登てぃ、隠たん。 下見ちょをたれえ、腰んかい太刀、差ち、色ん黒ってん小し、目やとぅざなとをる男ん達あぬ、一人なあ一人なあ、馬から降りてぃ、革袋、かたみてぃ崖下ぬ岩ぬ前んかい揃たん。諸し、四〇人びけえ。 前なとをる程まぎい男ぬ崖ぬ岩んかい向かてぃ、片手前んかいぬさきてぃ言ちゃん。 「開けえ、ゴマ」 あきさみよ、岩ぬガーラない、ガーラないさあに動ちゃん。 岩ぬ彼方あがまなとをぬふうじ。ふぇえれえ達や、またん、一人なあ一人なあ、皮袋、かたみてぃ、がまんかい入っちゃん。ちゅてえしいや、諸、また、空胴さあに、出てぃ来ゃん。あぬ程まぎい男ぬ、またん、岩んかい面、向きたん。あんしから、先程ねえし、手ぬさきてぃ、雷ぬ如、うふあびいしゃん。 「閉れえ、ゴマ」 あんされえ、また、岩ぬはしるぬ動ち、がま、閉うたん。ふぇえれえ達が諸、馬んかい乗てぃ、去ちから、アリババあ木から降りてぃ来ゃあに、恐るさん忘りてぃ、うぬ岩ぬ前んかいちゃあ立っちいそをたん。 「何んでぃ言たがあ、やさ、開けえゴマやたさ」 がまぬ中んかい入っち、見じいねえ、ひるましむん、中あ銀金びけえやあらん、色んな宝ぬちゃっさきい、まじまっとをたん。ロバあようがりてぃどぅ居くとぅ、いふぃどぅ持ったりいる。 アリババあ袋ぬ三ちびけえやロバんかい乗してぃ家んかい持っち帰たん。 「いぇえたい、アリババ、くぬ銭金え諸、いがろう物どぅやんなあ」。あん言ち、彼が妻えいっぺえ、うむさあくぁったあそをるふうじやたん。 「誰んかい言なよ。急じ、庭んかい穴、掘てぃ埋みらんでえならんしが。あぬふぇえれえ達なかいけえ分からりいや、じゃあへえすんどお。でぃちゃ、早く、かじみら」 「やてぃん、埋みゆる前なかい銭金、さんみんそをかんでえならんさに。一ち、二ち、三ち」 「ええ、あんし、一ちなあ、一ちなあ、さんみんしいねえ、明日けえないしが」 「やんどおふう。やれえ、我にんかい良い考えぬあん。義兄ぬカシムぬ方から京判、借てぃ来ゅうさ、ふう」 アリババぬ妻えカシムから京板、借てぃ銭金、量てぃから庭ぬ穴、掘てぃ、埋みたん。やしが、カシムから借てえたる京板ぬふぎとをたる所んかい金貨ぬ一ちたっ加っあとをたん。うり、見ち、ひるまさそをたる兄ぬカシムお弟ぬ家、ゆしりやい、「貧相者ぬ汝が、金貨、持っちょをしえ、合点お、ならん。まあからやてぃん盗でぃる来ゃるい」んでぃ訊ちゃん。 うぬような事、言やってぃえ仕方あならん。アリババあ本当ぬ事 、けえ言ちゃん。 「やしが、あぬ洞窟んかいや、行ぢぇえとぅらすな。むし、ふぇえれえ達なかい見だりいねえ、殺さりいん。命どぅ宝やしが」 「分かとをさ、分かとをさ、銭持ちぬ我が盗人から盗むる訳えねえらんさに」。あん言ゃがちい、カシムお生面笑えさん。 うぬなあ明日、 カシムお自一人、弟ぬ習あちゃる崖んかい行ぢゃん。やしが、岩、開きゆる言葉、むさっとぅ、けえ忘りとをたん。岩んかい向かてぃ、覚い出ゃするうっさあびやああびやあさん。「開けれえゴマ」。ようやく岩ぬ開ちゃん。やしがうぬばすお、きっさ、後んかいやふぇえれえ達ぬ戻てぃ来ゃあに、カシム、囲どをたん。 「汝やさやあ、我等宝物、盗だしえ」、ふぇえれえぬ頭ぬ雷ねえそをる声ぬ響ちゃん。「斬ち、ひん投ぎれえ」 昨日から夫ぬ失らんなとをんでぃ言ち、カシムぬ妻ぬ心配し、アリババ、とぅめえてぃ来ゃん。 アリババあ、「あまやさ」んでぃ言ち、崖んかいロバとぅまじゅん向かたん。がまぬ中んかいや兄ぬ胴いっぺえ、斬り刻まってぃ血ぬ塊ぬ上んかい倒をりてぃ死じょをたん。「あいええや、ふんぬう。ふうん無えん人お、じかじん聴かんむんがやら」。やしが、ふぇえれえん達が何時がはっ来ゅうらあんでぃ思いや、アリババあ泣ちゅるひまん無えらんたん。急じ、カシムぬ亡骸、ロバんかい乗してぃ、家迄、戻てぃ来ゃん。「うぬまま葬式しいねえ、あぬふぇえれえん達んかい、兄ぬ他なかい我が、あぬがまんかい行ぢゃる事ぬ分からりいん。如何しえ済むが」。アリババあどぅく恐さぬ物考えんならんたん。 「ちけえ無えやびらんさ、御旦那たり。我にんかい良い考えぬあいびいん」。あん言ちゃしえ、じょうひちゃあぬモルギアナやたん。彼女え着物仕立てぃ屋御主前、賺ちアリババぬ家迄、手巾なかい目、隠ちゃあに、添そうてぃ来ゃん。手巾、外んさったる着物仕立てぃ屋ぬ御主前や死じょをる人、見ち、でえじな、とぅんもをたん。 「銭やちゃっさやてぃん取らすくとぅ、くりが死体ぬ斬り傷、だってぃい縫てぃくぃみそうれえ」 カシムお病なかいまあちゃる事にし、葬式んかい出ゃさったん。 がまぬ中から死体、持っち行ぢぇえる者、とぅめえとをたるふぇえれえぬ臣下ん達やあまないくまない、聞ち歩っちょをたん。とお、一人ぬふぇえれえぬ臣下ぬ着物仕立てぃ屋ぬとぅくる、訪にてぃ来ゃん。「はいさい、御主前、今日拝なびら。儲きらっとをんなあ。儲話やれえまんどおしが」 ふぇえれえや金貨、手ぬいっぺえ、見しやあ見しやあさがちい言ちゃん。「近頃、まんぐらぬ人が太刀なかい斬らってぃ殺さったんでぃ言る話、聞ちゃしが」 「我が語かたゆたんでえ誰んかい言なよおや。だあ、銭、てえれえ」。仕立てぃ屋御主前や銭、懐んかい入ったん。「案内すくとぅ、後なありい、離りてぃ追うてぃ来わ」 アリババぬ家ぬ前、通たるばす、御主前や石畳、くらみとをる足なかい勘取たん。あんし、あびたん。「くまやさ」御主前や足、止みたん。「目、閉うらってぃどぅ居たしが、くまぬ窪どをる所んかい、きっちゃきさくとぅ、良う覚いとをん」 「本当やらやあ」。ふぇえれえぬ臣下あ生面笑えさあに、アリババぬ家ぬ壁んかいチョークなかい丸印、付きたん。 うりから、ちゅてえぐゎあしから、じょいひちゃあぬモルギアナぬ用事から戻てぃ来ゃん。彼女え家ぬ壁んかいある丸印、見ち、「ひるましいむん」んでぃ思いてぃ、うりから、如何ぬような訳なかい、あんそをる印ぬ付きらってぃ居が、んでぃぬ事、勘取たん。 「あんどぅんやれえ」。モルギアナあ、うったてぃ、チョークなかいまんぐらぬ家ぬあるっさんかい、いぬ印、付きてぃ歩っちゃん。 うぬ後、町んかい来ゃるふぇえれえぬ頭あ、諸ぬ家んかい、いぬ印、付きらっとをし、見ちゃれえ、胴いっぺえ、ふとぅふとぅうするか、わじたん。がまんかい戻てぃ来ちゅうしとぅまじゅん、頭あ臣下、ぬれえ懲くるちゃん。 「やな、とっとろう達ひゃあ。いっ達や、むさっとぅ頼がきららん。なあ、自し、すん」 頭あ仕立てぃ屋御主前からなあ一けん習てぃ、アリババぬ家、かめえたん。うぬ夜、ふぇえれえぬ頭あ旅の油商えさあんかい化きてぃ、アリババぬ家んかい来ゃあに、「一夜、泊みてぃくぃみせえいびり」んでぃ言ち頼だん。自一人し、ロバ二〇匹、油甕四〇ん、かやあちょをる商さあ見ち、人ぬ良たさるアリババあ、「くたんでぃてぃえ居みせえいびらに」んでぃ言ち、ふぇえれえぬ頭、泊みたん。 「あっしゃっ、我ったあ御旦那あ、何ぬ肝合がやら、あんし夜中から、まあぬ誰がやらん分からん人、泊みてぃ」。良い塩梅し、寝んとをたるモルギアナあ胆んひがんふうじやたん。ごお愚痴さがちい、ランプぬ灯、点きら、んでぃしゃしが、油ぬ無えらんし、思い出ゃちゃん。 「やさ、あぬ旅ん人ぬ油、くうてんぐゎあ得いとをか、何、彼が座んかい点きいしどうやる」 庭んかいあたる甕え諸、蓋さっとをたん。モルギアナが一ちぬ甕ぬ傍んかい近ゆたれえ、中から声ぬすたん。 「親分、なあだやいびいみ、くぬ甕ぬ中あでえじな、いいばさぬふしがりゆるむのおあいびらん。早く出てぃ、くまぬ家にんじゅ、打ち殺ち、山んかい戻やびらな」 世にぬ女やれえ、きっさ、魂、抜ぎてぃ、不気くんそをるとぅくるやたしが、モルギアナや驚ち、胆ふとぅふとぅさがちいん、魂、頑丈らち、考えたん。「さてぃ甕ぬ中あ諸、ふぇえれえぬ臣下どぅやしが、如何すが」彼女え声、低みてぃ言ちゃん。 「今とぅいやあらんどお、なあ、ちゅてえや待っちょをけえ」 あん言ち、家ぬ中んかい戻ら、んでぃしゃるばす、モルギアナあ、台所ぬ近くんかいある甕びけえんかいや、本当ぬ油ぬ入っちょをる事ぬ分かたん。彼女えうぬ甕、持っち台所んかい入っちゃん。あんし、うぬ油、しんめえ鍋んかい入りてぃ、むげえらちゃん。じまま、むげりとをる油、別ぬ甕んかい容りてぃ、うり、庭ぬ甕ぬ一ちなあ、一いちなあんかい注じゃん。 「あがあ、あがあ」。甕ぬ中んかい入っちょをたるふぇえれえ達や、ちんちりもおかあさあに、諸、けえ死じゃん。 外うとおてぃ異風な声ぬするむんでぃ思いがちいん、頭あ臣下、呼びいが、起きてぃ庭んかい出たん。 「ええ、とお、諸、出れえ」 やしが、一人ん出てぃえ来うんたん。「起きらにっさ」。頭あ甕、蹴り飛ばちゃん。倒りたる甕ぬ中から、油なかい焼かっとをる臣下ぬ首ぬ出てぃ来ゃん。 「あぎじゃびよ」。頭あ甕、一いちなあ一いちなあ確かみたしが、一人ん残らん、けえ死じどぅ居たる。自ん殺さりいがすらあんでぃ思たる頭あ、添うてぃちぇえるロバん、うっちゃん投ぎてぃ、いっさん走ええさあに、逃んぎてぃ去ちゃん。 モルギアナぬじんぶんなかい助きらったるアリババあ、彼女んかいがまから持ち来ぇえる宝物、使えゆさんあたい、ちゃっさきいなあ、分きてぃ取らちゃんでぃぬ事やん。 |
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