2018年12月03日

第209講「前なすん、家しいちゅん、ねえぬ揺ゆん」他に関する慣用句・言い回し

うちなあぐち

@ 子(くゎ)ん達(ちゃあ)や、前(めえ)なちょおかんでえ、何(ぬう)がすら分(わ)からん。
A 地(じい)ぬ境(さあけえ)ぬ事(くとぅ)なかい、隣(とぅない)ぬ人(ちゅ)なかい家(やあ)しいかったん。
B 孫(んまが)あ、物(むん)に凭(むた)っとおねえし、とぅるばとおん。
C うぬ芝居(しばい)やれえ、見(ん)ちんちゃる如(ぐとぅ)どぅある
D ねえぬ揺(ゆ)いねえ、瀬(し)上がり波(なみ)ぬ寄(ゆ)しゆる事(くとぅ)んあん。
E 今(なま)あ医者技(いしゃわざ)ぬ正(しょう)じてぃ若(わか)じいら入(い)ゆる事(くと)おいきらさん。
F 昔(んかし)え片膝(かたちんし)取(とぅ)てぃどぅ座(い)ゆたしが、今(なま)あ風儀(ふうじ)ん無(ね)えん。
G うぬ机(しゅく)お幅取(はばとぅ)てぃ、くぬ座(ざあ)んかいや置(う)からん。

日本語

@ 子供達は見張っておかないと、何をするか分らない。
A 土地の境界の事で揉めて隣人に家に押しかけられた。
B 孫は魔物に取り憑れたように、ぽかんとしている。
C その芝居なら、幾度となく見物している
D 地震が起きると、津波が来る事もある。
E 現代は医療が発達して、産後を病む事は少ない。
F 昔は片膝立てして、座ったものだが今はみっともない。
G この机は幅が大きいのでこの部屋には置けない。

【解説】
例文@「前なすん」は「(見える範囲に居て)見張る」、「守る」、「監視する」の意味です。
例文A「家しいちゅん」は「苦情や揉め事があって相手の家に押しかける」の意味です。
例文B「物に凭りゆん」は「魔物や悪霊に取り憑かれる」の意味です。
例文C「見ちんちゃる如どぅある」は「(幾度となく見た事があるので、改めて見るまでもない)という意味合いにあるます。類語句に「食(か)でぃんちゃる如どぅある」、「読(ゆ)でぃんちゃる如どぅある」があります。
例文D「ねえぬ揺ゆん」は「地震が起きる」。「ねえ」は日本古語「ない」で、元々は土地の意味ですが、転じて「地震」の意味なったされます。参考:『広辞苑』。
例文E「若じいらは入ゆん」は「産後を病む」の意味。「若じいら」は「産後間もない産婦」。「しいら」は「難儀、苦しみ、災難」等の意味。「しいら入ゆん」は「苦しむ」、「苦労する」等の意味です。
例文F「片膝取ゆん」は「片膝を立てて座る」。この例文は「取ゆん」の慣用句の追加です。
例文G「幅取ゆん」は単に「幅が大きい」と言う意味で、日本語の「場所を占領する」、「はばをきかす」の意味はありません。
 
【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(若じいらあ、物に凭ってぃん、家しいちいが行じゃん、飲でぃんちゃる如どぅある、前なすん)

@ わじやあに、人(ちゅ)ぬ家(やあ)んかい、ごうぐちしいが行(ん)じゃん。
A ビールお、ちゃっさが飲(ぬ)だらあ分(わ)からんあたい飲(ぬ)だん。
B 悪(や)な物(むん)なかいうっちゃからってぃん、如何(ちゃあ)ん無(ね)えん。
C 子産(くゎな)ち直(ちゃあき)ぬ女(ゐなぐ)お、いいくる庫下(くちゃ)んじ、憩(ゆく)とおん。
D 童(わらん)ん達(ちゃあ)、見(ん)じゅんでぃち、仕口(しくち)んならん。
答え:
@ 家しいちいが行じゃん。
A 飲でぃんちゃる如どぅある。
B 物に凭ってぃん。
C 若じいらあ。
D 前なすん。

日本語意訳
@怒って苦言を呈しに他人に家に押しかけた。
Aビールは幾らでも飲んだ。
B魔物に憑かれても大丈夫。
C産後間もない女性は大抵、裏座で休んでいる。
D子供たちを見守ろうとして、仕事にならない。

2018年10月31日


第208講「取ゆん」に関する慣用句・言い回しW

うちなあぐち

@ 人(ちゅ)から物取(むぬとぅ)いるばす(そ)お、扱(す)ぐい取(とぅ)ゆるむぬ(の)おあらんどう。
A 彼(あり)え手間(てぃま)あ取(とぅ)い尽(ずく)びけんどぅやる、銭(じん)ぬ使(ちけ)え道(みち)え知(し)らん。
B 父(すう)や台風(てえふう)なかい、家(やあ)壊(くう)さってぃ、じゃま取(どぅ)とおたん
C ネット商(あちね)えや、見取(みとぅい)いんならんくとぅ、うけえゆん。
D 汝前(やあめえ)え妻(とぅじ)ぬ親(うや)とお取(とぅ)り交(け)えや、ちゃんとぅなとおみ。
E あっ達(たあ)二人(たい)が仲(なあか)、取(とぅ)や合(あ)ち、夫婦(みいとぅ)んだんかいなちゃん。
F 今(なま)あ諸(むる)、すがてぃ歩(あ)っちゅくとぅ、取(とぅ)らん官人(かんにん)どぅやる。
G 犬猫(いんまやあ)や、ちゃっさ、やあさてぃん、取(とぅ)い食(か)みいやさん。

日本語

@ 人から物を受け取る場合はぶんどるものではないよ。
A 彼は賃金を取る事に熱心で、金を使う事を知らない。
B 父や台風で家を壊され、うろたえていた
C ネット販売は見て決められないから不安である。
D お前は妻の両親との付き合いはうまくできているかい。
E あの二人の仲を取り合わせて夫婦にした。
F 現代は誰でも着飾るから「取らぬ官人」である。
G 犬猫はどんなに、腹を空かしていても貪り喰いはしない。
 
【解説】
 他に「取(とぅ)っ付(ち)きゆん(取り押さえる、とっちめる)等がありますが例文は略します。
例文@「すぐい取ゆん」は「ぶん取る」、「引っ手繰る」。「すぐい」は「すぐゆん(殴る、扱く等)」からの派生語。
例文A「取い尽」は「取るだけに集中していること、取る事に掛かりきっていること」の意味です。
例文B「じゃま取ゆん」は「うろたえる」、「戸惑う」の意味。派生語(名詞)に「じゃまどぅ過(かあ)(大いにうろたえる)」、「じゃまどぅいかあどぅい(「じゃまどぅい」)に同じ」があります。この場合の「どぅゆん」は「取ゆん」ではないとの考えもあります。
例文C「見取いんならん」は「(実際に)見て決める事ができない」の意味。
例文D「取り交え」は「(贈答品の)取り交わし」、転じて「交際」、「付き合い」等の意味になります。
例文E「取や合すん」は「取り合わせ」、「取り纏める」、「揃える」、「寄せ集める」等の意味。ちなみに、「肝取や合すん」は「心を落ち着ける」、「髪取や合すん」は「髪を整える」の意味です。
例文F「取らん官人」は時代的に殆ど使いませんが、「官人でもないのに着飾っている事」の意味。
例文G「取い食むん」は「貪り喰う」の意味。「取い食みい」はその名詞形。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(取い交えすし、くん取いんでえ、じゃま取いかあどぅい、取や合すし(え)、取い食だん、取い付きらりん)

@ どぅく、やあさぬ、あるうっさ、うちゅ食(くゎ)たん
A まあとぅん、ふぃれえ事(ぐとぅ)そおちゅし(せ)えましやさ。
B 髪(からじ)え、洗(あら)てぃ直(ちゃあき)、さばちゅし(せ)えましどう。
C 初(はじ)みてぃぬ他所(ゆす)国(ぐに)歩(あ)っち(ちぇ)え、とぅぬうまぬうびけえさびたん。
D 人(ちゅ)ぬ物(むん)、徒(いちゃんだ)ん、くん取(とぅ)いねえ搦(から)みらりいんどう。
答え:
@ 取い食だん。
A 取り交えそおちゅし。
B 取や合すし(せ)。
C じゃま取いかあどぅい。
D すぐい取いんねえ、取い付きらりん。

日本語意訳
@あまり、腹が減っていたので貪り喰った。
Aどことも付き合っておく事は良い事だ。
B髪は洗って直ぐ、整えた方が良いよ。
C初めての外国旅行は戸惑うばかりでした。
D他人の物を勝手に取ると、取り押さえられるぞ。

2018年09月25日


第207講「取ゆん」に関する慣用句・言い回しV

うちなあぐち

@ 言(ゆ)し聞(ち)かすんでぃち、取(とぅ)い回(まあ)し回し、言(い)い入(い)りとおん。
A くり(れ)え後々(あとぅあとぅ)ぬ為(たみ)に、今(なま)ぬ内(うち)なかい、取(とぅ)い回(まあ)ちょうか
B 何(ぬう)んでぃちが、あん成(な)とおらあ、取(とぅ)い覚(うび)ららん事(くとぅ)やん。
C 書(か)ちい様(よう)、取(とぅ)い破(やん)じいねえ、何時(いち)迄(までぃ)ん直(のお)さらんなゆん。
D 人(ちゅ)おどぅまんぐぃいねえ、取(とぅ)い外(はん)する事(くとぅ)んあら筈(はじ)やん。
E 思事(うむくとぅ)、取(とぅ)い違(ちが)らってえ済(し)まんくとぅ、みしく語(かた)りよう。
F 貧相(ふぃんすう)、たきちきとおたるむぬ、今(なま)あ取(とぅ)い返(けえ)ちょおん
G 工(くう)ぬ分(わ)かいねえ、沖縄語(うちなあぐち)ん取(とぅ)い詰(ち)みんならん物(むぬ)おあらん。

日本語

@ 言う事を聞かそうと、手を変え品を変え、説得している。
A これは後々の為に、今の内に取っておこう
B 何故そうなったのか、戸惑う程、意外な事である
C 表記法を誤ると、何時までも修正できなくなる
D 人間は狼狽すると、失禁する事もあるだろう。
E 意見を誤解されてはいけないので、丁重に話してよ。
F 貧乏も極限状態だったのに、今は持ち直している
G 要領が分れば、沖縄語も手に負えないものではない。

【解説】
例文@「取い回し回し」は「あの手この手で」、「手を変え品を変え」の意味。「思事」は「願い事」、「悩み事」等の意味。
例文A「取い回すん」は「(後々の為に)取っておく」の意味です。
例文B「取い覚ららん」は「意外・想定外の事でどうしていいか分らない」等の意味です。
例文C「取い破じゅん」は「しくじる」、「失敗する」、「治療を誤る」、「評価を間違える」等の意味です。
例文D「取い外すん」は「誤って落とす」、「取り損ねる」、転じて「失禁する」等の意味です。
例文E「取い違ゆん」は「誤解する、「曲解する」等の意味。
例文F「取い返すん」は「健康を回復する」、「貧乏等から立ち直る」、「悪い状態から持ち直す」等の意味です。
例文G「取い詰みんならん」は「手に負えない」、「手に余る」、「どうしようもない」等の意味です。

【応用問題】
 例文や説明文を参考に次文中の太字の語句に相応しい語句を左の()内から選びなさい。答えは下欄です。
(取い破じゅる事、取い回ちょおすしえ、取い覚ららん事、取い違ゆん、取り返ちょおん)

@ 銭(じ)のお、ちゃあ、大切(てえしち)に引(ふぃ)ちなちょおすし(せ)えましどう。
A 婆前(はあめえ)や柔(やふぁ)らちょおたしが、なあ'強(ちゅう)とおん
B 誰(たあ)にん見(み)ちき違(ちげ)えやあしが、肝要(かんぬう)やし(せ)え、うり、正(ただ)する事(くとぅ)やん。
C あんすかぬ座(ざあ)ふぇえ事(ぐと)お、今(なあ)だ如(ぐとぅ)やいびいん。
D 物言(むぬいい)い様(よう)ぬ悪(わく)っされえ、勘(かん)違(ちげ)えさりいる事(くとぅ)んあん。
答え:
@ 取い回ちょおすし(せ)え。
A 取い返ちょおん。
B 取い破じゅる事。
C 取い覚ららん事。
D 取い違らりいる。

日本語意訳
@お金はいつでも大切に取ってのが良いよ。
Aお婆さんは体が弱っていたけど、もう回復している。
B誰にも間違いはあるが、大事なのはそれを正す事である。
Cこれだけ始末に負えない出来事は今だ嘗てない事です。
D言い方が悪ければ、誤解される事もある。




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